准教授
佐藤 祐己
金融論、ファイナンス
金融市場の「人間臭さ」に注目して、非合理的に見えることを合理的に説明する
研究テーマとその出会い
金融市場の理論研究をしています。修士課程で金融の論文を何本か読むうちに、その緻密で面白いメカニズムに魅かれ、博士課程に残ることを決めました。その頃は、現実の金融市場よりも、理論モデルの面白さそのもの(つまり、パズルを作ったり解いたりするような感覚)が好きだったように思います。しかし、博士課程在籍中にサブプライム危機を目の当たりにし、理論と現実のバランスこそが重要でかつ面白いと思うようになりました。
研究テーマの魅力、面白さ
現実の金融市場では、金融のプロが一般人をカモにしようとしたり、プロ同士が互いを出し抜こうと駆け引きしたりします。こうした“人間臭さ”に着目することで、「一見、非合理的に見える現象」を合理的に説明できたりします。例えば、現実の市場では、投資家が理解できない複雑な金融資産が、異常な高値で取引されることがあります。一見、これは非合理的だと思いませんか?私ならば、そんな資産の購入を勧められたら、「理解できなくて嫌なので、もっと安くして下さい」と言います。しかし現実はその逆というわけです。この事実の背後では、ひょっとしたら、ヘッジファンドが投資家の印象を操作するために複雑な資産に過剰投資し、価格を高騰させているのかもしれません。更に、高値で売れることをいいことに、エンジニアが故意に資産を複雑化させている可能性すら透けて見えてきます。私はこういう意外性のある(かつ現実性もある)メカニズムが見えたとき、研究の楽しさを感じています。
学生へのメッセージ
大学時代は、バイトに遊びに、お金とよりリアルに向き合うようになるかと思います。そういう経験と、授業で得た知識を比べて、「経済学と現実は違う」と疑問を持つことがあるかもしれません(私はそうでした)。そういう時は、チャンスだと思ってください。大学は、高校とは違い、何かをただ受動的に学ぶ場ではなくて、自分で学ぶものを探し、新しい知見を生み出す場です。そのため、現実と学問の間に溝を見つけたら、それを自分で埋めるというエキサイティングな機会を得たということだと思うのです。そこで考え抜いて得た知見はもちろん、そこに到達するために友人や教員と議論したプロセスも含めて、皆さんの今後に大きなプラスになると思います。
(2017年12月取材)
※プロフィール・職位は取材当時のものです。
プロフィール
2001年 |
慶應義塾大学経済学部卒業 |
2003年 |
同修士 |
2005年 |
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン修士 (MSc in Economics) |
2009年 |
プリンストン大学訪問研究員 |
2011年 |
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス博士 (PhD in Economics) |
※プロフィール・職位は取材当時のものです |