専任講師
鵜浦 恵
中国古典文学
自分の「好き」や「楽しい」「面白い」と真剣に向き合ってみよう
研究テーマとその出会い
私は主に明代の白話小説『三国志演義』について研究をしていますが、最初に三国志の世界に触れたのはいつだったか、あまり覚えていません。物心ついたときには既に家に三国志の漫画や小説があり、三人の兄は全員三国志好きで、会話の中にしょっちゅう孔明や曹操などの名前が出てくるような、そんな家庭で育ちました。したがって、兄妹の中から三国志の研究者が出るのはある意味必然だったかもしれません。ただ、「『三国志演義』を文学としてきちんと学びたい」という意欲を持ったのは、中学に入り漢文の授業を受けるようになってからです。授業を通して知った中国古典文学の世界の奥深さに魅了され、文学という枠組みから大好きな三国志を見つめ直してみたいと思ったのです。
大学に入り中国文学を専攻するようになってからも、『三国志演義』に対する思いは変わりませんでしたが、物語の内容ではなく、「どうして『三国志演義』は現代にいたるまで読まれ続けてきたのか」という点により関心を持つようになりました。そこで卒業論文・修士論文では、江戸時代に刊行された『三国志演義』の絵入り本の調査を通して、当時の人たちの受容のあり方を探りました。博士課程からは舞台を中国に移し、『三国志演義』の多くの版本のうち、最も普及した清代の「毛宗崗本」における人物描写の特徴について調査を行っています。この調査を通して、「毛宗崗本」がどうして通行本としての地位を築けたのか、また当時の人々はどのように『三国志演義』を読んでいたのかを明らかにしていきたいと考えています。
研究テーマの魅力、面白さ
『三国志演義』はすでに様々なアプローチで研究されてきた作品ではありますが、丁寧に読めば読むほど新たな疑問や発見が出てきて、その奥深さに驚かされます。また、何より子どもの頃から大好きだった物語でもあるので、少し行き詰まったときには、研究対象としてではなく普通の小説として読み直すことで「やっぱり面白い!」とモチベーションを高めることができるのも、研究テーマにしてよかった点かもしれません。
学生へのメッセージ
類は友を呼ぶというのか、私の周りには私以外にも好きなものをそのまま追い求めて仕事にしている友人が沢山いて、研究職だけでなく翻訳やマスコミ、美容、エンジニアなどなど様々な分野で活躍しています。或いは業種そのものではなくても、仕事の中で自分が好きだったり面白いと思えたりするものを見つけ出すのが上手な人が多く、大変な中でもやりがいを感じているようです。思えば皆、学生の間に自分がどういったものが好きで、何を面白いと感じるのか、とことん自分と向き合っていたようです。皆さんもぜひ、大学生活の様々な側面から自分の「好き」を突き詰めてみてください。その楽しさの中に、きっと今後の人生へのヒントがあるはずです。勿論、大学の授業も自分へのアプローチの一つです。私が担当している第二外国語では、言語を通して異文化への理解だけではなく、自国の文化や価値観を見つめ直すような、そんな機会を提供出来たらと思っています。
プロフィール
2014年 |
慶應義塾大学文学部卒業 |
2017年 |
慶應義塾大学大学院中国文学専攻修士課程修了 |
2020年 |
慶應義塾大学大学院中国文学専攻博士課程単位取得退学 |
慶應義塾大学、慈恵医科大学ほか非常勤講師を経て2022年より現職 |
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※プロフィール・職位は取材当時のものです |