こんにちは。ジモコロライターの田中です。
突然ですがみなさんが好きなアニメやゲームのキャラってどんな人ですか? 先日、編集長のギャラクシーと話している時にそんな話になりまして。

左=田中、右=ギャラクシー
ちなみに僕が好きなキャラは暗器使い一択です。
暗器(あんき)とは、いわゆる“隠し武器”のこと。『NARUTO』ならテンテン、『らんま1/2』ならムース、ヴァンパイアシリーズならレイレイのように、隠し武器を駆使して戦うキャラクターにゾッコンです。
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「暗器使いねぇ。マンガだと仕込み杖とか、鉄の爪を隠し持ってるやつとかいるけど……現実的じゃなくない? あんなに武器を隠し持ってるなんて無理じゃないかなぁ」
「現実的ではない……? 本当にそうなんですかね?」
「というと?」
「まぁまぁ、ちょっとついてきてください」

というわけで、ギャラクシーを連れてやって来たのは、群馬県吾妻郡にある岩櫃(いわびつ)真田忍者ミュージアム「にんぱく」です
岩櫃真田 忍者ミュージアム: にんぱく
住所|〒377-0801 群馬県吾妻郡東吾妻町大字原町624-4
休館日|火・水・木曜日(祝日の場合は営業)
開場時間|10時〜16時
入館料|小学生以上550円
・公式サイト
「ははぁ、忍者ね。なるほど」
「手裏剣やマキビシなどで戦う忍者ってまさに暗器使いじゃないですか。にんぱくには隠し武器の展示もあるそうなので、いろいろ見せてもらい……」

スゥッ……
「……ようこそ」
「誰!!!?いつの間に!?」
「ご足労いただき、ありがとうございます。にんぱく代表の齋藤貴史です。隠し武器について知りたいとのこと……さっそくご案内しましょう」
手裏剣だけじゃない! 忍者が操る武器の数々

展示スペースに一歩踏み入れると、まるで武器庫

壁一面に武器が並べてあります

定番の手裏剣系から―

見たことのない大小さまざまな武器までびっしりと展示されてる!

「うわ、すげぇ! わくわくするーー!!!」
「約300点ほどあります。忍者の道具・武器の常設展示としては日本最大級です」
「忍者の歴史と日本における隠し武器の歴史は、重なる部分があるのでしょうか?」
「その質問にお答えする前に、ひとつだけお聞きします。忍者が生活をするうえで最も大切だったのは何だと思いますか?」
「大切なこと? えーっと、多重影分身?」
「違います。普通の人であり続けることだったと言われています」
「なるほど! 忍者は現代でいうところのスパイだから、怪しいやつと思われたらだめってことですか」
「おっしゃる通り。絶対に目立ってはいけません。忍者というと黒装束というイメージですが、真夜中でもない限りあんなもの着てたら怪しすぎるので普段は普通の服を着てました」
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「そうだったのか……」
「でも、いざというときは戦わなければいけないので、武器を隠し持つ必要があったわけですね」
「日常に溶け込んで隠密行動をするために、隠し持てる武器が重要だったんですね」
「展示されているものの中で一番危険な武器はどれですか?」
「それでいうと……」

「このあたりですかね」
「なにこれ。鎖の両端に鉄の玉がつながれていますね。 持った感覚としては随分ずっしりとはしているけど……」
「これらは分銅鎖とか微塵(みじん)といわれる武器なのですが、非常に携行性に優れていて、しかも強力な威力を秘めています。談笑して油断させた隙にコイツで……」

「こめかみをドンです」
「……ゾクゾクっ!!」
「その威力は骨を砕いて粉微塵にしたといわれています」
「名前の由来こわ~」

「ん? ちょっと待ってくださいよ。武器の展示のはずなのにキセルが置いてありますよ? 忍者も煙草を吸ってましたっていう、生活に関する展示なのかな?」

「一見するとただのキセルですが、ここをこうすると……」

スチャッ
「わ! 隠し刀だ!」
「ってことは、キセルとしては使えないんですか?」
「一応、吸えますよ。お茶でも飲みながらしゃべっていて、相手が油断したスキに……」

「サクッとね」
「ホゲー」

こっちはよりキセルっぽいですね

スッ……
「今後、喫煙所でキセルを吸っている人がいたら距離を取ろう……」
「何者かに命を狙われる心当たりがあるんかい」
「『無限の住人』でも主人公が刃のついたキセルを使ってたし、キセル吸ってる人は油断ならないな」


「こちらはちょっとユニークな道具です」
「これは……本物の刀じゃないですね。木刀?」
「そう、木刀です。当時、刀を持てるのは身分が高い人だけなので、忍者は木刀を持ち歩いていたんですが……」

「鞘(さや)にこんなものが仕込まれています」

「のこぎりのような工作道具です」
「隠さなきゃいけないのは、武器だけじゃなかったんですね。こういう工具なんかも……」
「そうなんです。忍者は門を破るような工作も大事な仕事ですからね。木刀は持ち歩いても怪しまれないけど、工作道具を持ち歩いていると『これで何をするつもりだ?』となるので」
「キセルと見せかけて刀を仕込んでいたり、木刀と見せかけて工作道具を仕込んでいたり……本来の機能をうまいこと隠れ蓑にしている道具が多いですね」

他にも笛に見せかけた武器や巻物に見せかけた武器などがありました。忍者の持ち物ぜんぶ油断できないな
みんな大好き手裏剣のコーナー

「こっちは手裏剣のコーナーですか」

「色々種類があるでしょう? 皆さんご存知の十字手裏剣の中には、折り畳んで隠しやすくなっているものもあります」
「少しでも隠しやすく、持ち運びやすくなっているわけですね。昔ってポケットがたくさんついた服とかリュックとかなかっただろうから、携帯するのが大変だったんだろうなぁ」
「手裏剣というと十字形のやつだけじゃなくて、なんか鉄の棒みたいなやつありませんか?」
「棒手裏剣ですね」

棒手裏剣のラインナップも豊富
「あぁ~! これこれ! 忍者のマンガによく出てきますけど、棒手裏剣って投げるの難しすぎませんか??」
「確かに真っ直ぐ飛ばすのは難しそうですね」
「そうでしょ? 十字手裏剣だったら四方に刃があるから、当たりさえすればダメージを与えられそうですけど……棒手裏剣って先端が刺さらないとだめですよね?」
「そうですね。それなりに訓練は必要だと思いますよ」

「“投げる”というよりも“撃つ”というイメージですね」
「田中くん、やってみてよ」

“投げる”というより……

“撃つ”……?
「運動神経のなさが垣間見える」
「いやこれ難しいんですって!」
「確かに真っ直ぐ飛ばすのは難しいですが、十字手裏剣と比べると、棒手裏剣の方が深く刺さるから致死力が高いらしいですよ」
「棒手裏剣と似た感じの武器で、クナイっていうのもありますよね?」

「こちらですね。棒手裏剣よりはちょっと大きくて重いものが多いかも。苦無(クナイ)は投擲武器としてだけではなく、小刀として接近戦に使ったり、縄を通して高いところに登ったり、土を掘ったりといった万能の道具ですね」
「『NARUTO』だと単なる武器の一つ(しかも役立たない)て感じでしたが、道具としても万能だったんだ」
「実際に起爆札を貼って投げつけたりしてたのかな」

ちなみに『にんぱく』には手裏剣を投げられるコーナーもあるよ!

スターン!
※十字手裏剣だと素人でも簡単に的に当てられます
その他いろいろな隠し武器
「では、ここからはその他の武器をできる限り紹介しましょう」

「こちらは角出(つので)という武器です」
「これが武器~? ただの指輪じゃないんですか?」
「そう思います? これを指にはめて……」

スッ……

ドーーーン!!!!
「殴れば大ダメージを与えられます」
「ギャー!!!」
「他にも尖っている方を内側にして平手打ちをしたら……ほっぺたに大きな穴が開きます」
「おぉ、尖ってる方が内側になってたら、外から見たら完全にただの指輪! 武器って気づけないな」

「指ではなく、単純に手にはめるものもありました。『鉄拳』といいます」
「メリケンサックみたいなやつ!」
「戦国の世にも『ヘイおっさん! メリケンサックを探しているのなら、あんたの上着のポケットにゃあ ないぜ!』って言うやついたのかもしれん」
「万が一のサブウェポンとしては、携行しやすくて優秀だったんでしょうね」

「あ、『バキ』で柳龍光が使ってたバグ・ナク(虎の爪を意味するインドの隠し武器)みたいなやつがある」
「手甲鉤(てっこうかぎ)ですね。手甲についた鉤爪で攻撃したり、敵の刀を受ける時に使ったようです。手の甲に装着するものと掌に隠して装着するものの2種類がありました」
「悪い忍者の武器といえばこれって感じする……」
「武器として以外にも、樹木や石垣に刺して上り下りする時の道具としても使ったみたいですよ」

「この渋い容器は……質のいい暮らししてる忍者の調味料入れ?」
「ちょっと惜しいですね。七味唐辛子などを入れて目潰しとして使われました。小さい口の方を加えて息を吹き込むと、大きい口から噴射されるっていう仕組みです」

その他の武器―こちらは鎖鎌(くさりがま)。『バガボンド』で宍戸梅軒が使ってましたね。カマは農具なので怪しまれにくかったのかな?

こちらは手裏剣と同じくらい定番の武器、撒菱(まきびし)。昔は藁で編んだような履物がほとんどだったろうから、踏み抜いて大ダメージくらったんだろうなぁ

隠し武器として銃もあったんかい! ただし一発しか撃てないし音や光が出ることから、威嚇用だったのではないかという説もあるようです
戦闘集団・真田忍者の文化を伝えていくために

では、最後ににんぱくについても話も聞いてみたいと思います。
「そもそも、なぜ群馬で忍者の博物館を? 忍者といえば、三重県の伊賀や滋賀県の甲賀のイメージが強いので……」
「でも、架空の話ではあるけど真田十勇士の中に『猿飛佐助』とか『霧隠才蔵』とかいたから、忍者が有名ではあったんじゃない?」
「そうですね、この辺りにも忍者は存在したと言われています。実際、真田忍軍の頭領らの名前が、真田家の武将として記録に残っているそうですよ」
「へ~! そうなんですね! わくわくするなぁ~!!!」
「大坂の陣や関ケ原の合戦へ行った忍者もいたそうです。かなり強力な戦闘集団だったと言われています」

おみやげに忍者グッズもたくさん売ってました
「真田忍者は最終的にどうなってしまったんですか? どこかに消えてしまった?」
「最終的に戦国の時代が終わって、徳川氏の土地になってからは表に出てこなくなりました。世の中が平和になって、戦闘集団としての役割が必要なくなったんでしょうね」
「そう考えると、ちょっと気の毒ですね……」
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