ハラスメント防止指針と対策委員会の設置についての提言
民主党男女共同参画推進本部
地方議会における「ハラスメント野次」が大きな問題となったことを契機として、議会、議員、政党の倫理観と品格が問われている。民主党の女性議員ネットワークのアンケート調査によっても、そうした議員のハラスメント言動が根強く存在している状況が明らかであり、議会の会議のみならず、国民・住民を代表する議員の間で、また議員による議会事務局や職員に対するセクハラやパワハラの存在も疑わざるを得ない。
民主党は綱領に掲げているように、共生社会の実現をめざし、互いの人権を尊重し、正義と公正を貫く価値を重んずる立場から、改めて議員のモラルの確立、人権の尊重を徹底させることの重要性を痛感する。とりわけ、男女共同参画社会の推進にとって女性の尊厳と人権の尊重は最も喫緊の課題であると考える。
従って民主党は、議会、議員のハラスメント防止への取り組みを集中的に行うことを宣言する。
もとより、他党の議員の言動ばかりを批判することが眼目ではなく、民主党議員が率先垂範することで社会全体でのハラスメント防止の確立をめざす。
以上の観点から、民主党は党内に設置されたワーキングチームで検討を重ねた結果、ハラスメント防止の指針を策定し、その徹底と対策委員会の設置を提言する。
【2015年2月24日 第635回常任幹事会決定・3月1日施行】
【2015年3月1日 2015年度定期大会配布】
民主党のハラスメント防止指針
1 ハラスメント防止及び対応の指針
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民主党は、民主党党籍を有する議員(及び候補者)による議会や議員(候補者)としての活動における発言や行為に関し、ハラスメントの未然防止、及び発生した場合の対処等の指針及び対策の概要を定め、もって議員および政党人としての倫理の確立、人権の擁護を図る。
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ハラスメントとは、セクシュアル・ハラスメント(婚姻・妊娠・出産に係る言動を含む)、パワー・ハラスメント、その他のあらゆるハラスメントを指し、他の者を不快にさせ、人格と尊厳を侵害し、または不利益をもたらす言動をいう。
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民主党は、議員(及び候補者)のハラスメントによって他の者の人権を侵害すること、ハラスメントによって党活動及び議会活動が害されること、ハラスメントを受けた者が不利益を受けることを排除する。
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民主党本部及び党支部の執行機関は、それぞれに所属する議員(及び候補者)のハラスメント防止及び発生した場合の対処について最大限の措置を講じる。 民主党本部は、ハラスメントを防止するために、所属議員(及び候補者)が認識すべき事項及びハラスメントに起因する問題が生じた場合において議員に望まれる対応等について、行動規範を示す。
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党幹事長及び各支部の幹事長は、所属議員(及び候補者)に対し、行動規範の周知徹底を図り、また党員及び党活動、議員・候補者活動の関係者の意識啓発を図らねばならない。
2 ハラスメント対策委員会の設置
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ハラスメント防止の徹底を図るために、民主党本部にハラスメント対策委員会(以下「委員会」という。)を置く。都道府県連は、党本部に準じて、常設あるいは臨時の対策委員会を設置する。
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委員会は、次に掲げる委員で構成することとし、幹事長が選任することとし、委員長は委員の内から幹事長が任命する。委員の選任に際しては男女の比率が偏らないように配慮する。
- 党役員の内から、幹事長が選任する役員 若干名
- 所属議員の内から、幹事長が選任する議員 若干名
- 党外の弁護士 若干名
- その他、幹事長が必要に応じて任命する者
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委員の任期は党規約に定める代表任期に準じるものとし、再任を妨げない。委員会の事務局は党職員の中から幹事長が任命する
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委員会は、次の事項を担う。
- 行動規範等、ハラスメント防止及び対策に係る必要な文書等の作成
- 議員を対象としたハラスメント防止や人権尊重のための教育啓発
- ハラスメントに関する相談及び被害救済に関する事項
- その他人権侵害の防止に関する事項
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委員会の招集、運営、成立及び議決については以下を基本とし、詳細は別に委員会で定める。
- 委員会は委員長が招集する。
- 委員会は、委員の過半数の出席により成立する。
- 委員会の議事は、出席者の過半数で決し、賛否同数のときは委員長の決するところによる。ただし、人権侵害行為を申し立てられた者(以下「被申立人」という。」に関する不利益処分を行うよう勧告するときは、出席者の3分の2以上の多数で決定する。
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人権侵害行為が行われたと考えられる場合には、被害者は、その旨を委員会に知らせ、救済を申立てることができる(以下救済を申立てた者を「申立人」という)。
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申立ては委員長宛に、委員長に直接ないし事務局を通じて文書をもって行うものとする。
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申立人は、申立てを行う以前において、委員に相談することができる。相談を受けた委員は、申立人の相談に適切に応じ、必要と判断する場合は委員長に報告しなければならない。
委員会は申立、相談等について、以下に定める所管において、同一案件について一回のみ受け付ける。 -
申立、相談等は以下に基づき受け付ける。
- 国会議員(及び候補者)の言動に対しての申立については、党本部対策委員会
- 各級議員等(及び候補者)の言動に対しての申立については、都道府県連対策委員会
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都道府県連対策委員会が設置されるまでの間の申立及び相談の受け付けは都道府県連幹事長が代行し、対策委員会に引き継ぐ。
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委員会は、委員会が行う審議、調査等、及び、斡旋、勧告等について別に定めることとする。委員は審議の内容等に関し守秘義務を負う。
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委員会は、申立が特定の議員・候補者を貶めることを目的とした虚偽のものであるか否かを精査する。
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委員会は調査等について専門家に委嘱することができる。
3 党機関等の責務
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委員会から勧告を受けた党機関(幹事長、常任幹事会)は、速やかに勧告に従った措置をとるように努めなければならない。
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党機関が行う措置について、党倫理規則の適用が必要と判断した場合は、倫理規則の手続きに従う。
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勧告を受けた党機関の構成員は、申立人及び被申立人等のプライバシーの保護に留意し、党機関の審議において知りえた情報について守秘義務を負う。機関の構成員を退いた後も同様とする。
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その他、党機関の対応について必要な措置は対策委員会の定めに応じて別に定める。
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党諸機関及び議員は、人権救済に関する申立てを行ったこと、あるいは調査に応じたことにより、申立人ないし調査協力者にいかなる不利益も科してはならない。
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党幹事長は、ハラスメントの事実が確認された場合は、速やかに再発防止に取り組むこととする。
4 発効及び改廃等
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本指針は、2015年3月1日から施行する。
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本指針は施行後、その実施状況を踏まえて必要な見直しを行う。
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本指針の改廃は、党本部常任幹事会の決定による。
【2015年5月19日党本部ハラスメント対策委員会取りまとめ】
【6月9日常任幹事会報告・確認】
ハラスメント防止のための「行動規範」等について
民主党本部ハラスメント対策委員会
常任幹事会で決定し(2015年2月24日第635回)、2015年度党定期大会(2015年3月1日)で承認され、同日に施行された「民主党のハラスメント防止指針」(以下「指針」)で定めたとおり、党所属議員及び候補者が認識すべき事項及びハラスメントに起因する問題が生じた場合において望まれる対応等についての「行動規範」を以下とする。
【行動規範】
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「指針」においては、党籍を有する議員及び候補者は、綱領が掲げている共生社会の実現をめざし、互いの人権を尊重し、正義と公正を貫く価値を重んずる立場から、改めてモラルの確立、人権の尊重を徹底させることの重要性を強く認識し、とりわけ、男女共同参画社会の推進にとって女性の尊厳と人権の尊重は最も喫緊の課題であるとの認識を共有することとしている。
「指針」はハラスメントとして、- 他の者を不快にさせる言動
- 人格と人権を侵害する言動
- 他者に不利益をもたらす言動
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ハラスメントの防止とは、ハラスメントの事前防止に加え、万が一発生した場合の被害を受けた者の人権や不利益の回復をいう。すなわち、加害した者が誤った言動を自覚し、被害者に謝罪し、不利益を回復し、それをもって再発を戒めることが目的である。
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また、ハラスメントへの対応とは、被害を受けた者の立場に立つとともに、加害した者の自覚と謝罪を通じて、加害した者の人権意識改革を図ることでもある。
したがって、ハラスメントへの対応の目的は糾弾ではなく救済であるとともに、ハラスメントとされる言動、加害したとされる者の行為については事実を正確に把握する必要がある。 -
さらに、ハラスメントへの対応においては、申請によって被害を受けたとする者、加害したとされる者双方の人権に十分な配慮が必要であると同時に、対応者が被害を受けたとする者あるいは加害したとされる者の意思に反して不当に情報を漏えいしたり、あるいは不当に情報を隠ぺいしたりしてはならない。
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各級の党議員及び候補者は選良たる立場にあり、公務員一般よりも高い倫理観と強い人権意識を有していることが前提となって存在している。 したがって、上記の認識を十分に踏まえ、共有したうえで、参考添付の「セクシャル・ハラスメント防止の留意点、言動例等」及び、「パワー・ハラスメント防止の留意点、言動例等」を一読確認し、同時に各級行政機関及び議会等で定め、発している禁止事項、留意点等がある場合はこれを積極的に把握して一読し、発生防止に特段の注意を払い、周辺にも徹底することを期待する。
また、ハラスメント対策委員会及び党各級執行機関は、ハラスメントへの対応において党議員及び候補者に重大な違反行為等があると判断される場合は、「民主党のハラスメント防止指針」および「党倫理規則」に基づいて対応することは言うまでもない。
※なお、「指針」は、「セクシュアル・ハラスメント(婚姻・妊娠・出産に係る言動を含む)、パワー・ハラスメント、その他のあらゆるハラスメント」を対象としているが、まずはセクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント防止を喫緊の課題として集中した取組みを進めることとする。
<参考添付>
セクシャル・ハラスメント防止の留意点、言動例等
1 留意すべき点- 性に関する言動に対する受け止め方には個人間や男女間で差が大きく、セクシュアル・ハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要であること。
- 相手が拒否し、または嫌がっていることが分かった場合には、同じ言動を決して繰り返さないこと。
- セクシュアル・ハラスメントであるか否かについて、相手からいつも意思表示があるとは限らないこと。 セクシュアル・ハラスメントを受けた者が、人間関係等を考え、拒否することができないなど、相手からいつも明確な意思表示があるとは限らないこと。
- 歓迎会の酒席の場のような、時間外におけるセクシュアル・ハラスメントについても十分注意する必要があること。
- 同様に、議員及び候補者が、その活動の一環として有権者をはじめ一般市民と接する場合においても十分に注意する必要があること。
セクシュアル・ハラスメントになり得る言動として、次のようなものがある。
<発言関係>- スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること。
- 卑猥な冗談を交わすこと。
- 体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」「更年期か」などと言うこと。
- 性的な経験や性生活について質問すること。
- 性的な噂をたてたり、性的なからかいの対象とすること。
- LGBT(性的少数者)に対する差別を行うこと。
- 「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」「女性は職場の花でありさえすればいい」などと発言すること。
- 「男の子、女の子」「僕、坊や、お嬢さん」「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること。
- ヌードポスター等を事務所等に貼ること。
- 雑誌等の卑猥な写真・記事等をわざと見せたり、読んだりすること。
- 身体を執拗に眺め回すこと。
- 食事やデートにしつこく誘うこと。
- 性的な内容の電話をかけたり、性的な内容の手紙・メールを送ること。
- 身体に不必要に接触すること。
- カラオケでのデュエットを強要すること。
- 酒席でお酌やチークダンス等を強要すること。
パワー・ハラスメント防止の留意点、言動例等
1.定義- 「パワー・ハラスメント」については、法令上の定義はないが、一般に「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、それを受けた就業者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用について不安を与えること」を指すとされる。
- なお、業務上の指導等ではあるが、その手段や態様等が適切でないものも、本来の業務の範疇を超えている場合に含まれると考えられる。
※ 実際に「パワー・ハラスメント」に該当するかどうかは、当該言動が継続して行われているものかどうか、言動が行われることとなった原因、言動が行われた状況等をも踏まえて判断する必要があり、ここにある言動のすべてが直ちに「パワー・ハラスメント」に該当するとは限らない。
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暴言=人格の否定になるような叱り方=
【事例】「こんな間違いをするやつは生きている資格が無い」、「給料泥棒だ」などと暴言を吐く。
=厳しく叱ることも部下を指導する上で時には必要だが、その場合も言葉を選んで、具体的かつ的確に指導することが必要である。 -
威圧的な行為=セルフコントロールの喪失=
【事例】部下等の意見が気に入らなかったりすると、椅子を蹴飛ばしたり、書類を激しく机に叩き付けたりする。
=業務に関する言動であっても、その内容や態様等が威圧的にならないよう注意する。仕事に対する姿勢や日常の振る舞いが「パワー・ハラスメント」の土壌となる。 -
実現不可能・無駄な業務の強要=明らかに合理性を欠く業務の指示=
【事例】正当な理由もなく、明らかに実現不可能な業務や、無駄な仕事の強要をする。
=部下等に対し、非常に大きな負担をかける業務などを命じる場合には、必要に応じ、その理由を説明するなどフォローが必要である。