「憎悪教育」に批判も 深圳の日本人男児殺害、ナショナリズム巡る内省広がる

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通学途中に刺されて死亡した10歳の日本人少年を悼み献花する住民ら=中国南部・深圳/Ichiro Ohara/AP

通学途中に刺されて死亡した10歳の日本人少年を悼み献花する住民ら=中国南部・深圳/Ichiro Ohara/AP

香港(CNN) 中国では日本人学校に通う男児(10)の殺害事件を受け、怒りの声や過激なナショナリズムの高まりを巡る内省の動きが広がっている。一部では反日感情や「憎悪教育」をあおったとして、政府を批判する向きもある。

幼い命が失われた痛ましい事件は、アジアの2大経済大国である日中の複雑な関係に改めてスポットライトを当てた。現在の日中関係を形作っているのは、戦時中の歴史や中国の台頭で変化する力関係だ。

日本人の父親、中国人の母親のもとに生まれた男児は18日、中国南部深圳の学校に登校する途中、刺されて亡くなった。日本人の子どもへの刃物による襲撃はここ数カ月で2度目、外国人に対する襲撃は3度目だった。

中国当局はそれぞれの事件の動機を公表することを控え、どの国でも起こりうる「個別の事案」だとしている。

だが一部の深圳市民やネットユーザーの間では、中国有数の国際色豊かな都市で白昼起きた事件を受け、国家主義的なプロパガンダや外国人嫌悪がこうした襲撃をあおる要因になったのではないかとの内省が広がっている。

19日の男児の死後、日本人学校の前で献花した深圳市民の一人は、「中国人として心が張り裂けそうな思い。憤りと恥ずかしさを覚える」と吐露。

「このような暴力な長年に及ぶ憎悪教育の結果だ。子どもの頃から憎しみを植え付けても良いことはない」とも語った。この住民は報復を恐れて匿名での掲載を求めた。

この住民のコメントと呼応するように、反日感情と向き合うことを求める論評やネット上の投稿が増加している。その多くは中国のSNSプラットフォームによって検閲された。

ある中国人ブロガーはSNS微信(ウィーチャット)で拡散した削除済みの記事の中で、「国家主義的な言説に基づく『反日論法』が増え、インターネットに氾濫(はんらん)している」と指摘。「こうしたネット上の発言がスクリーンからあふれ、『現実世界』に影響を与えるのは避けられない」と記した。

男児の殺害は中国の日本人コミュニティーに衝撃を与え、一部の日系大手企業が従業員や家族の帰国を促す事態になっている。低迷する中国経済が記録的な海外資本の流出に見舞われる中、中国政府はこのところ日本企業の対中投資拡大を呼び込む取り組みを進めているが、今回の事件が水を差す恐れもある。

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