「ガラスの天井」という言葉があります。
職場や組織内で男性が優遇され、能力のある女性の昇進を阻む見えない壁。
そんな意味で使われることの多い言葉ですが、衆院選で大敗した希望の党の小池百合子代表は、今回の選挙で「ガラスの天井」よりも厚くて硬いであろう「鉄の天井」を見たと言います。
「都知事に当選して(女性の活躍を阻む)ガラスの天井を一つ破ったかな、都議選でもパーフェクトな戦いをしてガラスの天井を破ったかな、と思いましたけれども、今回の総選挙で鉄の天井があるということを改めて知りました」
(10月23日、パリでキャロライン・ケネディ前駐日アメリカ大使との対談で)
確かに希望の党は、初の女性都知事となった小池さんが立ち上げ、都議選で都民ファーストの会が自民党を圧倒した勢いそのままに、与党を脅かす勢力として国政へ乗り込むはずでした。
…が、235人の候補者を擁立して臨んだ選挙の結果、議席数は公示前の57から50に。野党第一党の座も立憲民主党にゆずり、各紙に「惨敗」「失速」などの言葉で報じられています。
でも、希望の党が負けたのは小池さんが女性で、「鉄の天井」にぶち当たったからなのでしょうか。Twitterなどでは疑問視する声が上がっています。
「まるで有権者が女性蔑視をしたかのよう」
「彼女が女性だからではない」
「極めて残念」
では、希望の党はどうして負けたのか。他の理由を考えてみました。
1. 民進党の合流希望者を一部「排除する」と言ったから
前原誠司代表率いる民進党が事実上解党し、希望の党へ合流する過程で、合流を希望する議員を全員受け入れるのではなく、いわゆる“リベラル派”の議員を「排除する」と発言したことも、失速の引き金になったのかもしれません。
この点については、小池さんも22日夜の会見で、「これまでの言動などで、皆さんに不快な思いを抱かせてしまったことについては申し訳ないと思っております」と謝罪しています。
2. しかも、政策協定書で「踏み絵」を踏ませると報じられたから
さらに、民進党からの合流希望者に「安保法制の適切な運用」などを条件とした「政策協定書」への署名を求めると報じられたことも、「踏み絵を踏ませているようだ」と反発に拍車をかけたかもしれません。
民進と希望の合流へ踏み切った前原さんも、この報道が「大きな要因だった」と言います。
3.「自民党批判」の受け皿になれなかったから
リベラル派の議員を排除した結果、枝野幸男さんが立憲民主党を結党。安倍政権に批判的な有権者の支持を受けて勝ち上がってきたとも言える小池さんでしたが、今回はその「受け皿」としての役割を立憲民主に取られる形になってしまいました。
さらに、憲法改正に賛成する政治姿勢や、選挙後に自公と大連立を組む可能性を否定しなかったことも、支持が離れる要因になったのかもしれません。
4. 都政と「二足のわらじ」の印象を拭えなかったから
5. 情報公開に対する姿勢が「不透明」
公約に「隠ぺいゼロ」を掲げ、「徹底した情報公開による透明性の高い政治を実現」を謳っていた反面、党本部や選対本部の連絡先が公開されていなかったり、会見に入れるメディアを限定したりと、情報公開のあり方に疑問がもたれていました。
小池さんが実質的に率いる「都民ファーストの会」の議員が、党内で十分に情報が共有されていないことを批判して選挙期間中に離党したことも、拍車をかけたかもしれません。
6. そもそも、自分が立候補しなかったから
小池さんが「主役」の希望の党だったのに、立候補しませんでした。だから、小池さんが見たという「鉄の天井」とは、何だったのかという疑問も湧いてきます。
希望の党が惨敗した理由を「鉄の天井」だと考える人は、ほとんどいないでしょう。でも、日本の国政に「ガラスの天井」があることは事実です。
今回の選挙で、女性議員の数は465議席のうち47人という結果になりました。割合でいうと10.1%です。
改選前の9.3%(475議席中44人)よりは増えたものの、「2020年までに指導的地位にある女性を30%にする」という政府の目標には、まだまだ達していません。
日本の国政には、小池さんが見たという“天井”も確かにあるのかもしれません。