「里親マッチングサイト」という架空のサービスを題材に描かれたなっちゃんさん(@natsukoni81)の漫画があります。
「『里親マッチングサイト』を利用した家族のお話」と投稿された10ページの作品。架空のサービスが題材であるはずなのに、なんだか現実感があり、最後には心が温まります。
物語は、お医者さんが、夫婦に子どもの妊娠が難しいことを告げる場面から始まります。




猫が好きだと話す「みっきー」とマッチングした夫婦。ユリは、みっきーとのやりとりが楽しくて仕方ないみたい。すると...。






一目見た時から心が通じ合った2人。
「あの子はもうウチの子です」
ユリの言葉に感動する…。
BuzzFeedは投稿した、なっちゃんさんに話を聞きました。
実は「漫画を描き始めてまだ1年も経っていないぐらいの初心者」だと自己紹介するなっちゃんさん。これまでは1枚のイラストや4コマ漫画ばかりを描いていたんだとか。
Twitter上で行われる『「仕事探しはスタンバイ」マンガ大賞』というコンテストに応募するため、4ページ以上の作品を描こうと思い立ったそう。
「4ページ以上の作品であればその応募が可能だったため、このストーリーマンガに挑戦するのに良い機会だなと思って取り組みました」
「とはいえ、この作品は描きたいことを詰め込んだ結果10ページになってしまったので仕上げるのには苦労しました😂」
「1番描きたかったのは、『会えなくても心と心が通じ合うことはできるんじゃないか』ということです」
作品を完成させるにあたって、「里親」というテーマが先にあった訳ではありませんでした。
「会えなくても心と心が通じ合うことはできるんじゃないか」との仮説を形に落とし込もうと考え抜いたのです。
「コロナ禍で、会いたい人と会えずにしんどい思いをしている人はたくさんいます。私もその1人です」
「ですが、オンライン上や電話でのやりとりだけでも気持ちが通じ合う相手はいると思います。それに、そういう相手と実際に会えた瞬間に生まれるであろう感情を描きたいという思いが先にありました」
先述の漫画コンテストのお題は「2050年にあったらいいなと思う職業、やりたい仕事」でした。それを踏まえ、『里親マッチングサイト』を思いついたのだと振り返ります。
「恋愛のマッチングサイトは今でこそ多くの人が気軽に使っていますが、昔の人が聞いたら『何それ!?』とびっくりするでしょう。また、出始めた当初は『怪しい、危ないもの』として、一般的ではなかったと記憶しています」
「なので、里親マッチングサイトも今は『ありえない』と思われても、将来的にはあってもおかしくないのでは、と思ったんです」

「里親」という選択肢を最近聞いたこともこの発想につながったようです。
「私自身が37歳独身で子どももいないのですが、自分の人生に『産む』という選択肢があるのか、ずっと悩んでいるということもあります」
「同じような状況の友人も周りに多く、その中の1人が『自分が産むことにはこだわっていなくて、もし将来子どもが欲しくなったら里親になればいいと思ってる』と話していました。その内容が印象的で、この設定を思いついたというのもあります」
こだわったところ。
作品の中で最もこだわったのは「ユリとみっきーの公園での出会いのシーン」だと教えてくれました。
「出会った瞬間の感情を描きたいという思いが強かったので、ユリとみっきーの公園での出会いのシーンは大切に描きました」
「みっきーの一人称は『ぼく』であったことを理由に男の子だと思っていたみっきーが、実際には女の子の見た目でも、すぐに気づけるほどの何かがユリとみっきーの間に芽生えていたということを描きました」
「また、初めて会った幼いみっきーをびっくりさせないように、抱きしめるのを我慢するユリの優しさも表現しました」

ただ、描くにあたって難しい点もあったそう。
「不妊や里親制度はセンシティブなテーマでもあるので、未来の話とはいえ、あまりデタラメなことを描いてしまわないように気をつけました」
「このお話を描くにあたって、初めて里親制度について調べました。里親にも様々な種類があり、必ずしも養子縁組とイコールではないことや、里親がかなり足りていないということを知りました」
「また、不妊についても色々調べました。医師から『あなたは産めない身体です』と宣言されるのは、どのような状況で、どのような病気の場合なのかというのがなかなか分からず、最初のシーンのセリフは何度も書き直しました」
「里親マッチングサイト」について。
「こんなマンガを描いておきながら、私自身は心のどこかで『とはいえ、子どもを持つなら自分で産んでみたい…』という気持ちがあるのが本音です。おそらく、このような葛藤に悩んでいる女性は多いのではないでしょうか」
「でも、ユリのような状況に自分がなる可能性は十分ありますし、今回調べる中で知った里親制度によって親子になった方々を見ていると、やはり血だけが親子のつながりではないことは強く感じます」

「もし、将来自分に子どもがいない状態で、でも、やっぱり欲しいと思った時にまず気軽に始められる方法として『里親マッチングサイト』を試してみる価値はあるのではないかと思います」
読者へのメッセージ。
最後になっちゃんさんに漫画を読んでくれた人に対して、メッセージをお願いしました。
「きっかけや出会いがなんであれ、この親子は深い繋がりを持ちましたし、今後も幸せに暮らしていくはずです。この3人の物語を読んで温かい気持ちになってもらえるのが作者としては一番嬉しいです」
「また、コロナ禍で会いたい人になかなか会えない状況は続きますが、対面で会えなくても心がつながっていることを感じてもらえたり、いつか会えたときのことを楽しみにする気持ちになってもらえたりしたらいいなと思います」