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9月のアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利下げが行われた。これは借り手にとっては朗報だ。
しかし、その一方で、これまで5%以上の利回りの現金を保有していた人々は、その資金の新たな運用先を見つけなければならなくなった。
シティ・プライベート・バンク(Citi Private Bank)による最新のグローバル・ファミリー・オフィス調査によると、中央銀行が利下げに踏み切るはるか以前から、ファミリー・オフィスはすでにリスク資産への投資に乗り出していたことが明らかになった。6月に338人の回答者を対象に実施されたこの調査では、富裕層の投資家が新たに投資した資産クラスとして、上位2位を占めたのは債券と株式だった。回答者の半数は5億ドル(約725億円、1ドル=145円換算)以上の資産を運用している。
全体的な傾向として、運用に資金を投じる顧客が増えている一方で、手持ちの現金を増やす顧客の割合は減少しています。
シティ・プライベート・バンクの米州地域ファミリー・オフィス・グループの責任者、リチャード・ワイントラウブ(Richard Weintraub)氏はそう話す。
以下は、調査回答者の資産配分変更を示すグラフだ。
シティ・プライベート・バンクの最新グローバル・ファミリー・オフィス調査。
Citi Private Bank's latest Global Family Office survey.
今後6〜9カ月がトレンド確立の鍵を握ると同氏は指摘した。中央銀行の利下げのスピード、今年と2025年を比較して利下げ幅が大きいか小さいか次第で、この投資家グループが現金から他の資産クラスへの移行をどれほど積極的に継続するかが決まる。
これまでのところ、株式への動きは大手テクノロジー企業のAI需要とつながっており、AIはファミリーオフィスの人気を集めている。調査によると、
半数以上の53%がAIに投資しており、そのうち33%は公開株式だ。AIの流行に飛び乗っていないファミリーオフィスのうち、26%はAI関連の投資を検討している。
しかし、多様性を維持することへの支持は、ヘルスケア、工業、公益事業、不動産などのセクターへのエクスポージャーへの関心があることも意味しているとワイントラウブ氏は指摘した。
不動産に関しては、ファミリーオフィスはプライベート投資を好む傾向があるが、エクスポージャーにはREITも含まれており、特に倉庫やデータセンターなどの商業用不動産への関心が最も高いという。
国際的なエクスポージャーに関しては、北米のファミリーオフィスの大半は新興市場よりも先進市場に傾倒している。これは、資産配分を決定する際に役立つリサーチに投入できるデータが、先進国の市場ではより広く入手できるためだと彼は述べた。
暗号資産(仮想通貨)も関心の高い分野だ。ファミリーオフィスは取り残されたくないと考えている。調査では、回答者の4分の1がすでにこの分野に投資しているか、投資を計画していることが示された。しかし、ワイントラウブ氏は、その配分は最近承認されたビットコインとイーサリアムを保有するETF(上場投資信託)の形をとっていると指摘した。
デリバティブ
金利引き下げが続けば、最終的にボラティリティ(価格変動)は上昇すると予想される。 そこで、デリバティブを活用して価格変動から利益を得たり、下落リスクをヘッジしたりすることが可能だと同氏は述べている。これは、特定の株式に大きなエクスポージャーを持つ顧客にとって重要な戦略だ。調査によると、ポジションを集中させていると回答した70%のうちの3分の1が、リスク管理戦略を検討しており、そのうち4分の3がデリバティブを検討していることがわかった。
ポートフォリオの大部分を占めるような大きなポジションに資金を集中させることには常にリスクが伴います。そのため、当社の顧客は、保有資産を特定の範囲内に確実に抑えるために、変動前払い先渡契約やカラー取引を利用しています。
変動前払い先渡契約(Variable prepaid forwards contract :VPFC)は、投資家は株式の支払いを、満期時の株価に応じて決まる将来の株式または現金の約束と引き換えに受け取ることができる。これにより、投資家は株式を売却してキャピタルゲイン税を支払うことなく、株式を現金化することができる。
一方、カラー取引は、投資家が株式の変動リスクをヘッジするために、株式のオプションを賭けることを可能にする。これにより、潜在的な利益は制限されるが、同時に下落リスクも制限される。
金利が低下を続ける中、リスクをほとんど負わずに5%の利回りを確保することは難しくなっている。そのため、ファミリーオフィスには、さまざまな資産にわたる債券とデリバティブを1つの金融商品に組み合わせることができる仕組債も検討するようアドバイスしているとワイントラウブ氏は付け加えた。仕組債は利益と固定収益のバランスを取るものだ。優先事項やリスク許容度、期間要件、または特定のセクターへのエクスポージャーの倍増などに合わせてカスタマイズすることができる。
確定利付き証券
ファミリーオフィスにとっての第一の目標は資産の保全だ。確定利付き証券は、その目標を達成するための一つの方法といえる。 現在、より低リスクで変動の少ない政府および企業の投資適格債券に資金が流れている。 その傾向は、預金口座から4%以上の利回りが得られる限り続くだろう。
7年前に目を向ければ、国債には利回りがないため、どこか別の場所で利回りを見つけなければなりませんでした。そのため、人々は新興市場の現地債券の高利回りにリスクを取ることを厭いませんでした。現在は投資適格債券に安心感があり、普通預金の4%台に対して、6%、7%、8%の利回りが期待できます。