出典:eMAXIS イーマクシス シリーズ(ロゴ)
- 三菱UFJアセットマネジメント株式会社は7月12日、新しい投資信託「eMAXIS 日経半導体株インデックス」を設定した。
- このファンドは、「日経半導体株指数」をベンチマークとして運用されるテーマ型投信となる。
- 新NISAの「成長投資枠」で購入可能な、この商品の特徴およびメリット&デメリットを解説する。
三菱UFJアセットマネジメント株式会社は7月12日、新しい投資信託「eMAXIS 日経半導体株インデックス」を設定した。同ファンドは日本の大型半導体銘柄30社に集中投資するものであり、「日経半導体株指数」をベンチマークとして運用される、テーマ型投信のひとつである。
なお、このファンドは、新NISAの「成長投資枠」で購入可能だ。どのような商品であり、どう運用すべきか。その詳細についてまとめてみた。
「日経半導体株指数」がベンチマーク
「日経半導体株指数」とは、日本経済新聞社が今年3月25日から公表を始めた指数である。国内の半導体企業の中で時価総額の大きい30銘柄を基に算出され、東京エレクトロンやルネサスエレクトロニクスなどが組み入れられている。業種でいえば半導体や半導体製造装置、そして半導体材料の企業が含まれる。
日経新聞社によると、2011年11月末から今年3月末の間に日経平均株価は4.8倍上昇したのに対し、日経半導体株指数は11.5倍も膨らんだという。この間で特に世界経済を牽引した業種は半導体・ITであり、それが数字に現れた形といえる。
そして、その「日経半導体株指数」をベンチマークとして運用される投資信託が、今回の「eMAXIS 日経半導体株インデックス」だ。このファンドを通じて、国内の大型半導体株30社に分散投資できる。
国内の半導体企業30社に分散投資
6月末時点で公表された日経半導体株指数の上位構成銘柄は次のとおりである。
出典:日経平均プロファイルのデータを元に編集部にて作成
ツートップの東京エレクトロンとディスコはいずれも日本のお家芸である半導体製造装置のメーカーである。ルネサスエレクトロニクスは日立製作所や三菱電機、NECの旧半導体部門が統合してできた半導体メーカーであり、4位のアドバンテストは半導体検査装置の大手だ。信越化学工業はシリコンウエハー、眼鏡用レンズで知られるHOYAは半導体製造に欠かせないフォトマスクを生産する。
なお、eMAXIS 日経半導体株インデックスはベビーファンドとして位置づけられ、マザーファンドである「日経半導体株インデックスマザーファンド」を通じて運用される。
メリット&デメリット
さっそくメリット&デメリットから見ていこう。私見ではあるが一覧にすると、以下のようになる。
メリット | デメリット |
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メリット:何といっても、国内の先端分野に集中投資できる点が、eMAXIS 日経半導体株インデックスの大きなメリットだ。なにしろ、自動車産業や製造業全般、そして銀行と、国内の大型銘柄は高成長が期待できる分野は少ない。
日経平均はバブル超えの4万円台前後を推移していたが、そうした旧来の産業が足を引っ張っているのも事実だ。そのため、今後も好調を維持できるかは未知数である。日経平均は、アメリカのS&P500のように上昇し続けてきたわけではない。
その一方、このファンドは2011年以降を参照する限り、日経平均株価以上のパフォーマンスを示してきた。半導体分野は今後も高成長が見込まれ、その期待値は大きい。そのうえ30銘柄に分散したファンドのため、半導体関連の個別株に投資をするよりもリスクを抑えることができる。
デメリット:反面、半導体分野に集中している点が仇となる可能性もある点がデメリットだ。半導体分野の市況が4年周期で上下することを「シリコンサイクル」と呼ぶ。直近では2023年に底入れし、今年は回復基調にあるものの、次の下落局面で同ファンドの価格が下落する可能性は大きい。
実際、昨年の下落局面において半導体株指数は、日経平均全体よりも大きく下落した。このようなボラティリティの大きさはネックのひとつといえる。
半導体市場は長期で伸び続ける見込みのため、いずれは回復する可能性が高い。しかし次の下落サイクルで底入れを待てずに売ってしまった場合、大きな損失を出してしまいかねない。
信託報酬はやや高め
さて、コストについても見ていこう。eMAXIS 日経半導体株インデックスの主な指標を見ると手数料は無料だが、実質信託報酬は0.44%である。日経平均株価をベンチマークとした投資信託の報酬が最大でも概ね0.15%台であることから、同ファンドの手数料はかなり高めだ。
報酬の高さはテーマ型投信のネックである。とはいえアクティブファンドの中には1%を超えるものもあるため、突出して高いわけではない。
直近ではトランプ相場で急落
なお、基準価額は1万円から始まり、現在では9000円台を推移している。まだ、ファンドの設定から2週間しかたっていないため、純資産総額は執筆時点で28.4億円と少ない。
特に直近の1週間ではトランプ前大統領が次期大統領として就任する見通しが高まったことで、米国のインフラ、銀行株が買われた一方、日本の半導体株が売られ、同投信の価格も下落した。
トランプ氏の政策関連株が買われる現象を「トランプトレード」と呼ぶ。このトランプトレードは、今後も短期で価格に影響を与える可能性が高いだろう。
まとめ
eMAXIS 日経半導体株インデックスはテーマ型投信であるため、投資先のメインとはしない方がいいだろう。あくまでも副次的な商品として持っておくといい。
主軸とすべきは、やはりオルカン型や先進国型のインデックスファンドだ。それを踏まえて同ファンドを購入する場合、2通りの運用方法が考えられる。
- シリコンサイクルの下落局面を前に売る
- 長期で持ち続ける
1. は次の下落局面の前に利確してしまう方法だ。しかし、次の底入れが必ずしも2027年に来るとは限らないし、前倒しになる可能性もある。そのため早々と売る必要がある。例えば来年、1年半後というように短期で売却日を決めておき、価格を問わず売る方法が考えられる。少しでも利益が出ていれば正解としておきたい。
2. は次のサイクルで下落したとしても、次の回復を期待して長期で持ち続ける方法である。下落幅が大きくなったとしても焦らない姿勢が必要になる。この方法では塩漬けになる危険性もあるため、自分のポートフォリオの中で同ファンドの比率を少なくするか、15%、20%と損切りラインを設定する必要がある。