使用者側の労働事件に特化「解決の道は必ずある。一筋の希望の光になりたい」
使用者・労働者の双方にとってベストな解決を
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
小学4年生の時の社会の授業で職業について調べる宿題が出され、弁護士である父に、仕事のことを聞いてみました。父の話の中で感銘を受けた言葉が2つあります。「弁護士は社会の弱い人を守る仕事である」「弁護士は正義のために戦う」という言葉です。
言葉の具体的な意味はまだよくわかりませんでしたが、とても印象に残り、弁護士になりたいと思うようになりました。
ーー弁護士になられてからの注力分野を教えてください。
使用者側の労働事件や人事労務に注力しています。労働基準法は労働者を守る法律ですが、実務上は会社の方が立場の強いところがあります。
私の根本には、「弱い人を助けたい」という思いがあります。その思いに基づいて、労働者側の立場も考慮しつつ使用者側を弁護することで、労働者と使用者双方にとってベストな解決ができるよう心がけています。
会社は労働者あってのものです。紛争解決や予防法務を通して、労働者が気持ちよく働ける職場づくりと、会社の成長をサポートできることにやりがいを感じ、この分野に注力しています。
ーー労働者側ではなく使用者側に特化されている理由を教えてください。
私は使用者側の弁護を多く手がけてきたので、使用者側の弱点もよく理解しています。労働者側の代理人になり、使用者側の弱点をつくことは、私にとって信義に反することです。そのため、使用者側の弁護しか手がけないというポリシーを貫いています。
ーーコロナ禍になってから相談の件数や内容に変化はありましたか?
コロナ特有の相談は増えたと思います。最も多かったのは休業に関する相談で、雇用調整助成金の相談もあり、現に助成金の申請を行っている案件もあります。業界によっては大打撃を受けたところもあり、リストラや賃金減額、破産等の相談も受けました。
中小企業診断士の資格も取得
ーー中小企業診断士の資格を取ろうと思った理由を教えてください。
使用者側の相談を受ける中で、経営者の方のことをもっと知りたいと思ったことと、経営的な勉強をすることで、サポートできる範囲を広げられると考えたからです。
ーー実務ではどのように役立っていると感じられていますか?
決算書類などの数字を細かく読めるようになったので、たとえば、リストラの案件で、数字を綿密に見て、より説得力がある主張を展開できるようになりました。診断士として、人事評価制度の仕組みづくりに携わるなど、業務の幅も広がりました。
ーー弁護士として心掛けていることをお聞かせください。
聞く姿勢がとても大事だと思っています。私の感覚では、弁護士が答えを出すというより、現場を一番把握されている依頼者の話をよく聞いて、依頼者と一緒に解決策を作り出していくべきだと思っています。会社ごとに全く特性が違うので、弁護士だけで考えても、その会社にとってベストな答えを導くことはできないと思います。
バランス感覚も大事にしています。会社の利益だけを図るのではなく、労働者も含めた、会社全体の利益は何かという観点を常に持つことを心掛けています。
ーー弁護士として活動される中で、特に印象に残っているエピソードをお聞かせください。
2018年の西日本豪雨の後にボランティアで現地に行って、体育館や公民館などで法律相談を受けました。川の氾濫で家が流された方々を目の当たりにし、法律家として無力さを感じました。弁護士が現地に行ったからといって家が建つわけでも食事が出てくるわけでもなく、生死が関わってくる場面で法律家はすごく無力だなと痛感したんです。
一方で、法律相談を通して、喜んでいただけたり安心してもらえたりする場面もありました。極限の状況で、自分が少しでも役に立てた体験は「弱い人を助けたい」という弁護士としての原点を思い出させてくれました。改めて、弁護士として頑張らなくてはいけないと思いました。
「労働事件に注力し、人・会社・地域を元気にしたい」
ーー休日の過ごし方を教えてください。
勉強したり趣味に打ち込んだりしていることが多いです。
人事労務をもっと極めたいと思い、最新の裁判例や法律・制度内容等、欠かさず勉強をしています。
趣味は大きく2つあります。一つは馬。乗馬も競馬も好きです。以前は乗馬クラブに所属していました。また、旅行先で馬と砂浜を走ったり、泳いだり、山を登ったりしています。
もう一つは野球です。今はコロナの影響で球場には行けませんが、テレビで観戦して楽しんでいます。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
過去20年弱の人事労務分野の経験や日々勉強している内容に加え、中小企業診断士の資格を活かして、人事労務の分野に横断的に携わりたいと思っています。引き続き使用者側の労働事件に注力する中で、人、会社、地域を元気にしていきたいです。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
使用者側は厳しい状況で相談に来られる方が多く、他の弁護士さんのところに行って断られた方も多く来られます。私は、解決の道は必ずあると思っています。自分が一筋の希望の光になって、依頼者を元気づけ、前向きに人生を歩んでもらう一助になれればと思います。
ーー個人の方だと弁護士に相談するハードルが高くてなかなか相談に行けないという話も多く聞きますが、企業の方もそういった傾向はありますか?
企業によって様々です。例えば、社長が法律だ、という会社からすると逆に弁護士はいらないということはあるかもしれませんし、費用的にハードルが高いということもあるでしょう。今までトラブルがなく弁護士に頼む必要がないと思われている会社もあると思います。
ただ、予防法務的な観点からすると、トラブルが起こらないようにするにはどうしたらいいのかをレクチャーしたり、いざ問題が起こったときに会社が不利にならないような条項を契約書に盛り込んだりするなど、弁護士にできることはあると思っています。ぜひ、活用してもらえたらありがたいです。