NTTドコモに勤務していた30代男性が12月3日、上司からセクハラとパワハラを受けたとして、同社と上司らに慰謝料など約463万円の支払いを求めて東京地裁に提訴した。
男性が被害を会社に申告したところ、逆に男性のありもしない事実を「コンプライアンス違反」と認定され、さらに全く畑違いの部署に異動させられたと主張している。
訴えを起こした渡邉哲也さん(36)は「モラルのないハラスメント行為を何年もおこない、専門性をある人間を搾取して上司の立場を利用し不当な利益を得ようとする。一般企業ではありえないような特権を乱用している」と訴えた。
●「ドコモの飲み会はいつもこうだから」
訴状などによると、渡邉さんは音楽活動の経験を買われ2014年12月に入社。音楽聴き放題サービス「dヒッツ」の営業管理などの担当になった。
入社直後にあった飲み会の二次会で、40代の女性上司に連れられゲイバーを訪れた。そこで渡邉さんは店長に顔を舐めまわされ、下着の中に手を入れられ触られ続けたという。
同僚も下着を降ろされ下半身を触られていたが、上司は全く止めることもなく爆笑していたという。渡邉さんが帰り際に店長に抗議すると「ドコモの飲み会はいつもこうだから、ごめんなさい」と言われたそうだ。
2017年8月ごろに新人発掘事業を担当した際には、40代の男性部長から、渡邉さんが自腹で楽曲制作し、ドコモが手がけていた音楽コミュニティに知り合いのアーティストを登録させるよう命令されたという。渡邉さんは土日を返上し、徹夜で無償の楽曲制作をおこなった。
さらに、部長は隠れて副業をしており、渡邉さんの自宅スタジオで勉強会を開催させていた。渡邉さんが断ると「皆から信用されなくなってしまう」とメッセージが届いたという。
●「ノリでやってた」
渡邉さんは2018年に入り、社内のコンプライアンス推進委員会にセクハラとパワハラ被害を申告した。
会社側は、セクハラについては口頭で「確かにそういうのはありましたけれども、ノリでやってたっていうことなんで」、パワハラについては楽曲制作をさせたことなどは「コンプライアンス違反」と書面で回答した。
その後、渡邉さんは2018年9月に突然、食品ビジネス担当に異動させられたという。それから適応障害などの症状が生じ、2019年4月から休職し6月に退職した。
代理人の明石順平弁護士は「全く関係ない渡邉さんの行為を持ち出して、コンプライアンス違反とし、これまでの経験が全く生かせない畑違いの部署に異動させた。追い討ちをかけているところが特にひどい」と説明した。
●NTTドコモ「コメントできない」
NTTドコモは弁護士ドットコムニュースの取材に「まだ訴状が届いていないため、コメントできない」としている。