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途上国の「労働搾取」で成り立つ「ファストファッション」、消費者はどうすべきか議論
伊藤和子弁護士(左から2人目)ら登壇者たち

途上国の「労働搾取」で成り立つ「ファストファッション」、消費者はどうすべきか議論

安くて品質も良いことから支持されているファストファッション。しかし、人気の裏には発展途上国での「労働搾取」が隠されていた――。人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」の事務局長・伊藤和子弁護士がこの春、書籍「ファストファッションはなぜ安い?」を出版した。協力団体との共同調査や聞き取りを通して、現地の過酷な労働実態を報告している。

7月6日、東京・文京区での出版記念イベントで講演した伊藤弁護士は「誰かの犠牲の上に成り立っている商品を買うことで、私たちは幸せになれるのか。それが本当にいいファッションなのか」と聴衆に問いかけた。

●バングラディシュで起きた縫製工場ビル崩壊事故

伊藤弁護士が、この問題に取り組むきっかけは、2013年に起きたバングラデシュの縫製工場ビル崩壊事故だった。1000人以上の死者が出たこの事故は、全世界で報道され、「ベネトン」など複数の有名ブランドの製品が過酷な労働環境のもとで作られていたことが明らかになった。HRNは、2014年に現地を調査。事故から1年経っても、労働者が十分な補償を受けられていないことや、劣悪な環境で生活していることを知ったという。

途上国での「搾取」という点では、日本企業も例外ではない。HRNは同じく2014年、香港のNGOと協力し、中国のユニクロ下請け工場を調査。長時間労働や低賃金の問題を発表し、話題になった。翌2015年にはカンボジアを調査し、ユニクロや海外ブランドを扱う縫製工場で同様の問題を確認している。

伊藤弁護士は「一世を風靡しているファストファッション(のブランド企業)は、アジアの人たちを搾取する形で販売し、巨額の利益を得ている」と指摘。「たくさん買って、無駄にして、ゴミが増えるという悪のサイクルがある。製品を買わない、(あるいは)もっといいやり方でビジネスをしてほしいと声を上げることで、負の連鎖が変わっていくのではないでしょうか」と述べた。

●エシカル消費を浸透させる

イベントにはゲストとして、一般社団法人エシカル協会の末吉里花代表理事とジュエリーブランド「HASUNA」の白木夏子代表も出演した。

末吉代表理事は、TBS系「世界ふしぎ発見」のミステリーハンターとしても活躍した現役アナウンサーでもある。世界中の秘境を訪れる中で、「一部の権力、利益のために弱い立場の人が犠牲になっている」という共通点に気づいたといい、フェアトレードの推進や、世界的に広まっている「エシカル(倫理的な)消費」を国内に浸透させる活動に力を入れている。

末吉代表理事は、「エシカル」を「影響をしっかりと考える」と標語チックに紹介。消費者が安いものを追い求めすぎることで、搾取や環境破壊など負の連鎖が起きているとして、「人・社会・環境・未来に良い影響を与える消費行動を意識してほしい」と話した。

一方、白木代表は企業の側から語った。高額なイメージのある宝飾品だが、宝石の採掘者が劣悪な環境で働かされていることは珍しくない。白木代表自身、貧困問題を研究していた大学時代にインドの農村部に2カ月住み込み、鉱山労働者の貧しい生活を目の当たりにしたという。

HASUNAは、採掘者たちを「買い叩かない」よう、原料をフェアトレードで仕入れている。原価は高くなるが、2009年の創業以来、創意工夫を重ね、世界の注目を集めるブランドに成長した。白木代表は、「これ以上ないというジュエリーを作りたい。企業は最高のものを、正しいやり方で作っていくのが正しい姿なんだと思います」と語った。

2人の話を受けて、伊藤弁護士は「お金持ちはフェアトレードで買えるけど、消費者が完璧にするのは無理。『買ってしまったものは長く着ようね』とか、気づいたところからやっていくことが大切です。SNSを使って、社会や企業に向けて消費者のメッセージを発してほしい」とまとめた。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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