法務省は12月16日、無期懲役判決を受けた受刑者の仮釈放について最新の運用状況をまとめた資料をホームページで公表した。社会復帰する無期懲役囚よりも獄死する数の方が3倍以上多く、引き続き「終身刑化」している傾向が表れた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●獄死の無期囚30人、過去10年で2番目の多さ
新たに更新されたのは2023年分で、23年末時点で刑事施設に収容されている無期懲役囚は1669人(前年から19人減少)、23年に新たに収容された無期懲役囚は14人だった。
23年に仮釈放された無期懲役囚は8人で、そのうち初めての仮釈放となった4人の平均在所期間は37年4月だった。
一方、服役中に死亡した無期懲役囚は30人で、2022年の41人から減少したものの、2014年以降の10年間で2017年に並んで2番目に多かった。
2023年分を更新した無期懲役囚の仮釈放に関する資料(法務省が12月16日にHPで公表した資料より)
●仮釈放された無期囚には死者3人以上の事件を起こした者も
2023年に仮釈放が許可された無期受刑者の詳細を見ると、主な罪名は「強盗致死傷」が多く、中には死亡した被害者が3人以上にのぼる事件を起こしていた者もいた。
初めて仮釈放された無期受刑者の平均在所期間については、45年3月だった2022年よりも短くなったものの、22年に仮釈放を許可された無期受刑者の中には服役期間が60年以上が3人いたことで平均が伸びた可能性があり、一概に比較することはできない。
2023年末時点で収容されていた無期受刑者1669人の在所期間の内訳は、▽10年未満が195人▽10〜20年が703人▽20〜30年が462人▽30〜40年が223人▽40〜50年が75人▽50年以上が11人ーーだった。
2022年に仮釈放された無期懲役囚の男性。刑務所での服役期間は64年に上った(弁護士ドットコムニュース撮影)
●近年は30年以上経過しないと仮釈放されない運用が常態化
無期懲役をめぐって刑法28条は、刑の執行が始まってから10年が経過し本人に改悛(かいしゅん)の状があれば、仮釈放することができると規定している。
だが、2005年の刑法改正で有期刑の上限が20年から30年に引き上げられたことなどから、近年は30年を超えないと仮釈放が認められない運用が常態化しており、無期受刑者の多くが塀の中で人生を終えている。
最近のケースを例に挙げると、「ルフィ」や「キム」などと名乗る指示役のグループによる一連の広域強盗事件で、実行犯とされる20代の若者たちに無期懲役の判決が言い渡されている。
もしこのまま無期懲役刑が確定した場合、現在の運用が続けば、彼らは少なくとも50代以降にならないと仮釈放の機会を得られないことになる。
服役中の無期懲役囚たちから記者に送られてきた手紙
●不透明な判断基準に批判、受刑者「死刑よりきつい」
また、無期懲役囚の仮釈放に関しては、その判断基準が不透明であることから、「法律に基づかずに内部通達の運用によって密かに終身刑とされている」などといった批判の声もある。
こうした「無期懲役刑の終身刑化」は、実際に服役している受刑者に心理的な影響を与えているようだ。
西日本の刑務所で服役する無期懲役囚の男性は、これまでの記者の取材に「一般的な死刑と違い、無期懲役は時間をかけて行われる死刑であり、終身刑と同じだと感じています」として、「無期懲役刑は死刑よりきつい」と打ち明けた。
最近、無期懲役刑を言い渡されたある男性は、記者への手紙に「わずかな希望がこれからの長い受刑生活を耐えていく糧の一つになる」と吐露し、無期刑に仮釈放の可能性が残されていることが受刑者に与える影響の大きさを訴えた。