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不祥事相次ぐも沈黙する検察 「組織として黙秘権を行使している」現職からも批判 求められる説明責任
検察庁が入る建物(Caito / PIXTA)

不祥事相次ぐも沈黙する検察 「組織として黙秘権を行使している」現職からも批判 求められる説明責任

能登半島地震と羽田空港での航空機衝突事故から始まった2024年。今年も様々な事件事故、災害があった。

中でも異様なほど目立ったのが検察の不祥事だ。強大な捜査権限を持つにもかかわらず、社会的な説明を避け続けるその姿に内部からも批判や不満の声が上がっている。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

画像タイトル ここ1年で明らかになった検察庁の不祥事(新聞報道をもとに作成)

●相次ぐ違法な取り調べ

今年、特によく報道された検察の不祥事が取り調べの問題だ。

「検察なめんなよ」「ガキ」「社会に貢献できていない」ーー。

いずれも、大阪地検特捜部や横浜地検、和歌山地検の検事が取り調べで被疑者に吐いた発言とされる。

ただでさえ日本では、被疑者や被告人が無罪を主張したり黙秘したりすると、身柄の拘束が長期間続くことが珍しくなく、「人質司法」と呼ばれて批判されてきた。

そんな中、2010年に大阪地検特捜部で発覚した証拠改ざん事件などを経て、一部の事件で取り調べの様子を録音、録画する取り組みが始まったが、今も違法な取り調べが次々と表面化している。

大阪地検特捜部の取り調べを受けた不動産会社の元社長が国を訴えた裁判で今年12月、取り調べの映像が法廷で流された。

そこには、被疑者の目の前で検事が机を叩いて「嘘だろ」と言ったり、「悪いと思っているのか」「検察なめんなよ」「なめんじゃないよ」などと怒鳴ったりする様子が記録されていた。

現場を知る検察関係者からは「今の時代にあんな取り調べをする検察官はほとんどいない」という声が聞かれるが、被疑者らの代理人として活動する弁護士の間では「録音、録画だけで違法な取り調べを防げない証拠だ」といった声が強まっている。

●組織の問題を個人に押し付け

内部では取り調べの適正化を図ろうとする取り組みが進んでいるようだが、上司によっては筋書き通りの供述調書を取れるまで何度もやり直しさせられることがあるという。

そうした強いプレッシャーに晒される状況下で強引な取り調べに及ぶ検察官が生まれ、それは独自に事件を捜査する特捜部でより顕著になる傾向があるようだ。

ただ、一旦問題が表面化すると個人の問題として責任を押し付けられ、若手〜中堅の検事が検察組織に不信感を強める一因になっているという見方もある。

画像タイトル 取り調べで検察官から「ガキだよね」などと言われたとして国に損害賠償を求めた裁判の控訴審について、記者会見で説明する控訴人ら(2024年12月17日/弁護士ドットコム撮影)

●検事正の性犯罪事件、会見さえ開かず

「未曾有(みぞう)の危機」

元検察官の弁護士がそう表現したのが、大阪地検の検事正だった北川健太郎氏が在任中に部下の女性検事に性的暴行を加えた疑いで逮捕された事件だ。

犯罪の成否は裁判で明らかにされることだが、不可解なのは、大阪地検トップの立場にあった人間が在職中に性犯罪事件を起こしていた疑いが持たれている状況で、大阪高検が記者会見を開かず、逮捕容疑の詳細さえ発表しなかったことだ。

10月に大阪地裁であった初公判と女性検事が開いた記者会見で事件の概要が明らかにされると、社会に衝撃が走った。

事件が表面化する前に北川氏は早期退職し弁護士として活動しており、検察庁として何らかの事情を把握していたのではないかとの疑念も拭えない。

●無罪が確定した袴田さんを犯人視する検事総長談話

再審(裁判のやり直し)をめぐる動きにも注目が集まった。

1966年に発生した静岡県一家4人殺害事件で、長い間死刑囚とされてきた袴田巌さんの無罪が確定した。

捜査機関のねつ造を認定した静岡地裁の無罪判決に対して検察庁は控訴断念を表明したが、検察トップの畝本直美・検事総長が袴田さんをいまだに犯人視していると受け取れる内容の談話を公表した。

これに対し、袴田さんの弁護団は「到底許し難い」「名誉毀損にもなりかねない由々しき問題」と強く抗議。

検察内部からも「なぜあのような談話を出したのか?」「ありえない」などと検事総長談話への疑問や批判の声が上がった。

1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件では、名古屋高裁金沢支部が10月、すでに服役を終えた男性に有利な証拠を検察が隠していたことなどを批判し、再審開始の決定を出した。

画像タイトル 検察内部からも批判が上がった検事総長談話

●民間では当然の説明責任から逃げる検察

以上のように、検察ではこの1年、不祥事が噴出した。

昨年も、取り調べでの供述誘導や起訴が取り消された「大川原化工機」事件の違法捜査などが判明し、組織的な問題を抱えていることが明らかな状態だ。

先日、三菱UFJ銀行で銀行員が貸金庫から金品を盗み取っていたことが発覚し、頭取ら会社幹部が記者会見を開いた。

民間企業でも不祥事が1件起きれば社会的な説明を求められる。

しかし検察庁は、短期間にこれだけ重大な問題が相次いでいるにもかかわらず、記者会見などで国民への説明責任を果たそうとする様子が見受けられない。

検察関係者からは「職員の多くは誠実に職務にあたっている」との声を聞くが、検察庁上層部の内向きな姿勢が外部の批判を増大させている面も否めない。

「検察庁は組織として黙秘権を行使している」

ある検事は、問題が起きても社会的な説明責任から逃れ続ける今の検察幹部を皮肉混じりにそう批判する。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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