今年の桜の開花は記録的な早さとなっている。日本気象協会によると、東京都心では3月下旬にはもう見頃を迎えてしまうという。例年より早い開花に、花見の日程に気をもむひとも多いだろうが、やはり、良い場所を確保できるかどうかというのも、花見の成功の鍵をにぎる大切な要素だ。
花見といえば、ブルーシートを敷いておくなどして、事前に良い場所を確保する「場所取り」が一種の風物詩。花見シーズンの休日には、早朝から、歩行者がとおるスペースもない状態になってしまう公園もあるようだ。だが、この場所取り、良く考えたら「不法占拠」と言えるのではないだろうか。
公園は公共の空間である。花見の真っ最中で実際にひとがいる状態ならまだしも、事前にブルーシートを敷いただけで「自分たちの場所だ」とするのは、法的には有効なのだろうか。たとえば誰かがそこに勝手に入って花見を始めていたとして、追い出すことはできるのだろうか。田沢剛弁護士に話を聞いた。
●管理者の許可を得ない「場所取り」は不法占有
「公園が公共の場である以上、これを所有・管理する自治体等(公園管理者)の許可を得ないで占有することは、当然に不法占有となります」
このように田沢弁護士は指摘する。そうなると、花見の場所取りはすべて違法なのだろうか?
「その許可には、明示的なもののみならず、黙示的なものも含まれます。したがって、いわゆる『場所取り』がある程度許されているのは、その範囲において、少なくとも黙示的に許可を与えているのだという解釈が可能です」
このように田沢弁護士は、花見の名所などで場所取りが許されている理由を説明する。
「このような場合は、場所取りそのものが管理者の許可を得られた適法な行為となりますから,第三者がこれに異議を唱えることはできないでしょう」
●「不法占有」になるのは、どんな場合?
では、どんな場合でも「場所取り」は認められるのか。「そうではない」と田沢弁護士は指摘する。
「節度を超えた場所取りは、公園管理者による黙示的な許可の範囲さえも超えてしまうことになるので、不法占有ということになります。
ただし、このような主張をすることができるのは、権利者である管理者であって、権利者ではない第三者が主張できるものではありません。
したがって、不満のある第三者としては、公園管理者に善処してもらうしかなく、自ら不法占有者のブルーシートを撤去するなどして追い出すことはできません」
このように述べたうえで、田沢弁護士は次のようにアドバイスしている。
「お花見の場所によっては、場所取りのルールなどをHPで公開しているところもあるようです。楽しいはずの花見を場所取りのトラブルで台無しにしないためにも、節度のある場所取りを心掛けていただきたいものです」