「刃渡り4cmくらいの小さな折り畳みナイフを持っていたら職質されて没収された」。ネット上の掲示板に、こんな書き込みが投稿された。
投稿者によると、持っていたナイフは刃渡り約4センチの小さなもので、「キーホルダーみたいなレベル」だそうだ。職務質問を受け、持ち物検査をされた際に警察に没収された。使う目的はない「ただのファッション」なのに没収されたことは、納得がいかないという。
今回のようなケースで没収されるのは、仕方ないことなのだろうか。刑事手続に詳しい徳永博久弁護士に聞いた。
●「正当な理由」がないと、「刃渡り4センチ」でもアウト
「刃体の長さが6センチを超える刃物を所持した場合は、銃刀法22条により処罰対象となり、6センチ未満の刃物を所持した場合は、軽犯罪法1条2号により処罰対象となります」
徳永弁護士はこのように述べる。ただ持っているだけで、アウトなのだろうか。
「どちらの場合も、『正当な理由』がある場合は犯罪にあたりません。
ただ、『正当な理由』といえるためには、研磨・修理・鑑定・売買の目的など、刃物を携帯・運搬することについて、職務上または日常生活上の必要性があり、社会通念上相当と認められる場合に限定されます」
今回のケースはどうだろう。
「刃渡り約4センチのナイフをアクセサリー感覚で持ち歩いた場合は、持ち歩く必要性があったとはいえませんから、社会通念上相当であったとはいえず、『正当な理由』は認められないでしょう。
軽犯罪法1条2号に該当し、1日以上30日未満の拘留、または1000円以上1万円未満の科料の処罰を受けることになります」
●ナイフは返してもらえるのか?
没収された点についてはどうだろう。
「ナイフ所持について軽犯罪法1条2号違反で処罰される場合、そのナイフが『没収』されることはありません(刑法20条)。
今回、ナイフの所持者は捜査機関に『没収された』と思っているようですが、法的には『領置(被疑者が任意提出した物を受け取ること)』または『(現行犯逮捕に伴う)差し押さえ』を受けたのだと思われます」
投稿者は、ナイフを警察から返してもらうことはできるだろうか。
「刑事訴訟法121条2項・3項には、『危険を生ずる虞(おそれ)がある押収物は、これを廃棄することができる』と定められています。おそらく今回のケースも、この条項にしたがって捜査機関の担当者が、ナイフを廃棄していると思われます。
したがって、『領置』または『差し押さえ』を受けた上で適法に『廃棄処分』された場合、ナイフを返してもらうことはできないでしょう」