尹大統領の拘束令状発付、「非常戒厳」めぐる内乱容疑 韓国裁判所

大統領府で国民に向けて演説する韓国の尹大統領(12日)

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韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣布をめぐり、ソウル西部地方裁判所は31日、内乱容疑で尹氏への拘束令状を発付した。韓国の現職大統領に拘束令状が発付されるのは、憲政史上初めて。

捜査当局は29日夜に、内乱と職権乱用の容疑で、尹大統領の拘束令状を請求した。尹氏の弁護人は、令状は違法だとして、効力停止を求める仮処分を申し立てる構えを示している。

尹大統領は今月3日夜に「非常戒厳を宣布する」と発表したものの、与野党議員がこれに反発したため、翌朝には非常戒厳を解除。14日に弾劾され、職務停止となっている。

尹氏はその後、内乱と反逆の疑いで捜査されているものの、この2週間、捜査当局による再三の出頭要請に応じていない。

尹氏による短時間の非常戒厳宣布以降、韓国は政治的危機に陥っている。尹氏の弾劾を受けて、大統領の職務を代行していた韓悳洙(ハン・ドクス)首相がに対しても27日、弾劾訴追案が可決された。

拘束令状の執行は

尹氏は韓国の現職大統領として初めて、拘束令状の対象になった。

捜査当局は来年1月6日までに拘束令状を執行することになる。有効期限の延長を請求することもできる。

大統領警護隊やデモ隊に妨害される可能性もあるため、捜査当局が実際に拘束令状を執行できるかは不透明だ。

裁判所の許可を受けて、捜査当局が大統領府と尹氏の私邸を家宅捜索しようとした際には、捜査官が敷地内に入るのを大統領警護隊が妨害した。

当局は過去にも、著名な政治家の側近や支持者らが警察を物理的に妨害したため、拘束を断念したことがある。

大統領側は非常戒厳の「正当性」主張

尹氏の弁護団は30日、非常戒厳の宣布は、憲法が定める大統領権限の範囲内だとし、捜査当局には尹氏を逮捕する権限はないと述べた。

尹氏は12日のテレビ演説で、非常戒厳を宣布したことの正当性を訴えた。民主主義の「崩壊を防ぎ」、野党による「国会の独裁」に対抗するための合法的な判断だったと主張し、「弾劾されようが、捜査されようが、私は断固として対抗する」、「最後まで闘う」とした。一方で、「法的および政治的な責任」を回避するつもりはないと述べた。

尹氏の弁護人、尹甲根(ユン・ガプグン)弁護士は、大統領が3度の出頭要請に応じなかったのは「正当な懸念」があるからだと述べた。

大統領は出国禁止となっており、所在は公表されていない。

14日の弾劾訴追案可決をもって、尹氏は大統領の職務を停止された。

尹氏を罷免するには、弾劾を審理する憲法裁判所の裁判官(定員9人)が少なくとも6人、罷免に賛成する必要がある。現在の憲法裁は3人欠員のため、裁判官が1人でも反対すれば、尹氏は罷免を免れることになる。

このため野党は、欠員3人を補充することで尹氏罷免の可能性を高めようとしていた。

しかし、大統領代行となった韓首相は、憲法裁の裁判官の補充の任命を阻止した。

このため最大野党「共に民主党」は26日に韓氏への弾劾案を提出し、韓国国会は27日、韓氏の弾劾訴追案を可決した。

韓氏は職務停止になり、現在は崔相穆(チェ・サンモク)氏が大統領権限代行と首相代行を兼任している。野党は、崔氏に対しても、同様の措置を取ると警告している。

(英語記事 Arrest warrant issued for impeached S Korea president Yoon)