韓国国会、大統領代行の首相についても弾劾案可決 大統領に続き職務停止

韓国の韓悳洙首相

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画像説明, 韓国の大統領代行を務めていた韓悳洙首相。弾劾訴追が可決された

韓国国会は27日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の権限を代行する韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾(だんがい)訴追案を可決した。韓国国会は14日に、尹大統領の弾劾訴追案を可決している。

弾劾案には議員192人が賛成した。可決には在籍議員(300人)の過半数が必要だった。

韓氏は職務停止になり、権限代行は崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政相が担う。

尹氏は今月3日夜に「非常戒厳を宣布する」と発表したものの、与野党議員がこれに反発したため、翌朝には非常戒厳を解除。14日に弾劾され、職務停止となった。

この事態で韓首相が大統領代行となったものの、尹氏の弾劾を審理する憲法裁判所の裁判官の欠員について、韓首相が補充の任命を阻止したことから、最大野党「共に民主党」が26日に韓氏への弾劾案を提出していた。

憲法裁の裁判官は定員9人で、少なくとも6人が大統領の罷免に賛成する必要がある。現在の憲法裁は3人欠員のため、裁判官が1人でも反対すれば、尹氏は罷免を免れることになる。

このため野党は、欠員3人を補充することで尹氏罷免の可能性を高めようとしていた。

韓国では民主化以降、大統領代行の首相まで弾劾訴追されるのは初めて。

尹氏の弾劾と同様、韓氏の弾劾も、憲法裁判所が180日以内に認める必要がある。

韓氏は27日、「国会の判断を尊重する」とした上で、「憲法裁判所の決定を待つ」とコメントした。さらに、「混乱が深まるのを避ける」ため職務停止に応じると述べた。

過半数か3分の2か

韓国国会では27日、韓氏の弾劾訴追可決に議員何人の賛成が必要かをめぐり、激しい対立が起きた。

国会の禹元植(ウ・ウォンシク)議長が、定数の過半数にあたる151人の賛成で足りると決定すると、尹氏や韓氏が属する与党「国民の力」の議員たちが強く反発。本会議場の中央で「無効!」「権力の乱用!」などと叫び、大半が議決をボイコットした。

尹氏の弾劾については、在籍議員の3分の2の賛成を必要としたため、2回目の採決で一部の与党議員の賛成を得て可決された。韓氏については過半数の賛成で十分としたため、野党議員だけで可決することができた。

ウォンが下落

尹氏は今月3日夜、「反国家勢力」から国を守る必要があるとして「非常戒厳を宣布する」と発表し、国民を驚かせた。

警官隊が国会議事堂内の入り口を封鎖するなどしたものの、多くの国会議員がフェンスを乗り越えるなどして議事堂に入り、非常戒厳の「解除要求決議案」を賛成190人で可決。これを受けて尹氏は戒厳令を解除した。

尹氏は後に謝罪したが、国の民主主義を守るためだったと述べた。

以来、尹氏が弾劾訴追されたほか、一部の政権幹部は反乱の疑いで逮捕・起訴されている。しかし、尹氏は出国禁止となっているものの、捜査当局による再三の出頭要請に応じていない。

27日には韓国ウォンが対ドルで、2008年の世界金融危機以来の最安値を記録。両党は混乱の責任を互いに押し付け合っている。

韓氏の弾劾によって、韓国が直面する政治的な行き詰まりと不透明感がさらに悪化する可能性が高い。

(英語記事 South Korea votes to impeach acting president Han Duck-soo )