英外相、シリア暫定政権側との「外交的接触」認める 米長官も「直接の接触」を説明

イギリスのデイヴィッド・ラミー外相

画像提供, UK Pool

画像説明, イギリスのデイヴィッド・ラミー外相

イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は15日、政府がシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒した反体制派グループと「外交的接触」をしていると述べた。前日には、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、同グループに米政府が「直接の接触」をしたと話していた。

ラミー氏は、シリアの前政権を崩壊させた「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」について、英政府が非合法テロ組織に指定したままだと説明。そのうえで、「外交的接触は可能であり、期待されているとおり、外交的接触をしている」と話した。

また、「国民を代表する政府、包括性のある政府を望む。保管されている化学兵器の安全が確保され、使用されないことを望む。そして、暴力が続かないことを望む」とした。

そして、「これらすべての理由から、外交的手段や、もちろん情報機関主導の手段も含め、利用できるすべての手段を使って、HTSと必要に応じて対話を図っていく」と述べた。

「外交的接触」という言葉は、ラミー氏が直接、HTSと接触したことを示すものではない。

政府関係者らによると、ラミー氏の言う「接触」は、既存のテロ関連法で認められているものを指す。例たとば、人道支援を目的としたNGOによる接触などが含まれる。

英政府は、HTSのテロ組織指定を解除していない。しかし、HTSを行動に基づいて判断する作業を開始したことがうかがえる。

ラミー氏は、指定解除の可能性について問われると、HTSの源流はイスラム武装組織アルカイダだと説明。「アルカイダは英国内で非常に多くの人命を奪った」、「(HTSについては)行動で判断していく。将来の指定についてはコメントしないが、シリアがいま重要な瞬間にあることはもちろん認識している」と述べた。

アメリカも初めて直接の接触認める

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官

画像提供, Reuters

画像説明, アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官

シリアで次に何が起こるかは、イギリス同様、アメリカにとっても、既得権益に関わる問題だ。

アメリカのブリンケン国務長官は14日、訪問先のヨルダンで、HTSと「直接の接触」をしたと記者団に明らかにした。直接の交流を認めたのは初めて。

ブリンケン氏はまた、行方不明になっている米ジャーナリストのオースティン・タイス氏のことを、特に取り上げていると語った。

ヨルダンではこの日、ブリンケン氏や、アラブ諸国とトルコ、ヨーロッパの代表らが、シリアの将来について話し合った。シリアからの出席者はなく、アサド政権を支援していたイランとロシアの代表もいなかった。

会合で代表らは、シリアの平和的な政権移行を支援することで合意。ヨルダンの外相は、シリアが「混乱に陥る」のを周辺各国は望んでいないとした。共同声明では、少数派の権利を尊重し、「テロ集団」に拠点を提供しない、多様な人々で構成するシリア政府を求めるとした。

米国務省によると、ブリンケン氏は15日、ラミー氏と協議し、「シリア国民によって選ばれ」、「説明責任を果たし、国民を代表する」ようなシリア政府をアメリカは支持していくと伝えたという。

英政府は同日、シリア国内の食料、シェルター、緊急医療の支援のために3000万ポンド(約58億円)を提供すると発表した。また、レバノンの世界食糧計画(WFP)に1000万ポンドを、ヨルダンのWFPと国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)にも同額を、それぞれ拠出するとした。

さらに、「シリアから化学兵器を取り除く」活動への支援と、シリアの暫定政府への支援として、12万ポンド(約2300万円)を国際機関の化学兵器禁止機関(OPCW)に提供すると発表した。

イギリスは2013年にシリアの大使館を閉鎖している。民主化運動「アラブの春」の抗議行動が同国にも波及し、アサド政権が残虐に国民を弾圧し始めて2年後のことだった。