英俳優レッドメインさん、トランスジェンダー役を演じたのは間違いだったと

Eddie Redmayne

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画像説明, 2015年映画「リリーのすべて」でトランスジェンダーの女性役を演じたレッドメインさんは、2年連続してアカデミー賞主演男優賞候補になった

英俳優エディー・レッドメインさんは、2015年映画「The Danish Girl」(邦題「リリーのすべて」)でトランスジェンダーの役柄を演じたのは「間違い」だったと話した。21日掲載の英紙サンデー・タイムズのインタビューで発言した。

レッドメインさんは映画で、世界で最も早い時期に性転換手術を受けた1人、デンマーク人画家リリー・エルベを演じた。前年に「Theory of Everything」(邦題「博士と彼女のセオリー」)で科学者スティーヴン・ホーキングを演じて、米アカデミー賞主演男優賞を受けたのに続き、リリー・エルベの演技でも2年連続で同賞候補になった。

「The Danish Girl」は一部から高く評価される一方で、トランスジェンダーの主人公はトランスジェンダーの俳優が演じるべきだという声も当時から出ていた。

これについてレッドメインさんはサンデー・タイムズに対し、「今だったらやらない。当時は最善を尽くしてあの映画を作ったけれども、間違いだったと思う」と話した。

「キャスティングに関するいらだちについて、もっと全般的に議論が起きているのは、そもそも多くの人が最初から除外されているからだ」とレッドメインさんは述べ、「いったんすべてを平らに、公平に地ならししなくてはならない。でないと、いつまでたってもこういう議論が続いてしまう」と話した。

「The Danish Girl」が2015年11月にアメリカで公開された当時、レッドメインさんはインタビューで、「もう何年もトランスジェンダーの物語を、シスジェンダー(自分の性の自認と生まれたときに割り当てられた性別が一致している人)が扱い、成功を獲得してきた」と述べ、今後はトランスジェンダーの役をもっとトランスジェンダーの俳優が演じられるようになってほしいと話していた。

その一方で同時に、「(どの俳優も)責任感と誠意をもって演じるなら、どんな役も演じることができて良いはずだ」とも述べていた。

その翌年には、「The Danish Girl」を通じてトランスジェンダーについて世間が関心をもつようになったと評価するような発言をしたことが、一部の批判を呼んだ。レッドメインさんはその際には、「このやりとりに、小さな形でもかかわることができて、光栄だ」と言い、自分は「トランス・コミュニティーの味方」だと発言していた。

レッドメインさんの今回の発言を受けて、イギリスのトランスジェンダー支援団体「ジェンダード・インテリジェンス」の広報担当は、映像作品でのトランスジェンダーの描写は「The Danish Girl」の公開以来、「飛躍的に進歩」しており、「トランスの役はトランスの俳優が演じるべきだという共通認識となりつつある」と表明した。

「そうすることによって、私たち(トランスジェンダーの)物語を不要に侮辱的な形で語る可能性も減るばかりか、トランスの俳優がトランスの役を演じるという真実性を通じて、俳優にとっても観客にとっても、物語はもっと有意義な形で語られるようになる」と、同団体は述べた。

「トランスの人を語る物語、トランスの人のための物語が、これからはトランスの俳優によって語られるようになり、出演者にもスタッフにも、より多様な才能が集まるよう、期待を強めている」ともコメントした。

「ハリー・ポッター」シリーズの一部、映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」にも主演したレッドメインさんは、原作者J・K・ローリングさんによるトランスジェンダーをめぐる発言が物議をかもした際にも、トランスジェンダーの人たちを支持した。

ローリングさんは2020年6月、「月経のある人のためCOVID-19後にこれまでより平等な世界を作る」というタイトルの記事について、「月経のある人? そういう意味の言葉が、かつてあったんじゃない? 思い出すの、誰か助けて。ウンベンだっけ? ウインプン? ウーマド?」とツイート。これを機に、ローリング氏の発言がトランス差別だという批判が起きた。

これについてレッドメインさんは当時、「ジョー(ローリングさん)の発言には反対だ。トランス女性は女性、トランス男性は男性、ノンバイナリー(性自認が男性だけでも、女性だけでもない人)も存在する」とコメントを出していた。

一方、ローリングさんが当時、激しい非難と攻撃を浴びたことについてもレッドメインさんは批判し、さらに、オンラインでトランスジェンダーの人たちに向けられる罵倒(ばとう)や攻撃も「同じくらい醜悪だ」と述べていた。

レッドメインさんは現在、ロンドンのプレイハウス劇場でミュージカル「キャバレー」のリバイバル公演にMC役で出演している。この役は1966年のブロードウェイ初演以来、性的少数者(LGBTQ+)の俳優が演じることが多かっただけに、レッドメインさんのキャスティングには批判も出ている。

これについてレッドメインさんは、「自分が今まで戯曲を読んできたあらゆる役の中で、この役ほど何かの枠にはめこむような決めつけを、はねつける役はない。見る前に判断するのではなく、まず見に来てほしい」と、サンデー・タイムズに話した。