SOGIとは?意味やLGBTとの違い、SOGIハラへの対策を解説
LGBTなどの性的マイノリティー当事者だけではなく、あらゆる人を含む「SOGI」という概念が人権の観点から注目されています。歴史や政府・企業の取り組みを含め、私たちがどのように向き合うべきか、性的マイノリティー当事者の支援をおこなう社労士が解説します。
社会保険労務士・キャリアコンサルタント。福島県出身。家業の総合士業事務所にて実務経験を積み、2014年愛知県豊橋市にて開業。LGBTQアライ。キャリアパスを生かした人事評価制度構築を得意とする。セミナー講師、コラム執筆にも取り組んでおり、現在労務顧問など160社以上の関与先を持つ。
目次
1.SOGIとは
SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの略で、ソジ・ソギと読み、「性的指向と性自認」という意味です。性別表現(Gender Expression)、身体の性的特徴(Sex Characteristics)を含めて「SOGIESC」という言葉もあります。
性的指向とは、性的な魅力をどのような相手に感じるか、感じないかという概念のことです。性的「嗜好(しこう)」とよく誤解されるのですが、こちらは「〇〇フェチ」というような、その人固有の特徴のある方向性や様式を意味します。
性自認とは、自分が自分の性別をどのように認識しているかという認識のことです。生まれ持った生物学的な身体の性とは異なり、どちらの性に属している、あるいは属していないという認識を自分がどのように考えているかに焦点を当てた考え方を指しています。
2.SOGIとLGBTの違い
SOGIとLGBTの最大の違いは、その範囲にあります。
LGBTがセクシュアル・マイノリティー当事者、特にレズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシュアル(男女両性愛者)、トランスジェンダー当事者のことのみを指すのに対し、SOGIはすべての人をその対象にしています。
人間は誰もが生物学的な身体の性、性的指向、性自認の組み合わせで自分のジェンダーを既定しています。
多数派であるのは生物学的な身体の性と性自認が同じで、かつ性的指向が異性であるパターンでしょう。このような人々をシスジェンダーのヘテロセクシュアルと呼びます。
同様に、生物学的な身体の性と性自認が同じで性的指向が同性であれば、そのような人はシスジェンダーのホモセクシュアルということになります。
なお、性的指向が「ない」という人も存在します。そのような人はアセクシュアルとよばれますので、生物学的な身体の性と性自認が異なり、性的指向がない場合はトランスジェンダーのアセクシュアルに該当します。
しかし、レズビアンであるというのは性的指向ですので、シスジェンダーのレズビアンもいればトランスジェンダーのレズビアンも存在します。
また、そもそも自分のセクシュアリティーについて疑問を持っているクエスチョニングという人もいます。
このように、性自認・性的指向には多種多様な組み合わせのバリエーションがあります。さらには性表現のあり方もジェンダーには影響します。
性表現は社会に対して表現したい性のあり方のことをいいます。シスジェンダー男性でも「女性らしい」とされるような装いをしたいと思ったり、シスジェンダー女性でも「女性らしく」振る舞うことに違和感を覚えたりする状況も、このSOGIの概念には含まれます。
このように、自分が自分の性をどう規定するかということは本当に幅広い選択肢と組み合わせからなるため、「性のあり方はグラデーション」と表現されることもあります。
SOGIはこうした性の要素の組み合わせのすべてを含むため、LGBTだけではなくあらゆる人を包括する概念として注目されています。
3.SOGIが注目されている背景
今、SOGIという概念が注目されている背景には、性的マイノリティー当事者を巡る歴史の積み重ねがあります。以下で詳しくご紹介しましょう。
(1)性的マイノリティー当事者への擁護の機運が高まる
①ストーンウォールの反乱と抵抗運動ムーブメントの起こり
歴史的なトピックとして、ストーンウォールの反乱(ストーンウォール事件)というものがあります。これは1969年、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」が警察による踏み込み捜査を受けた際に、居合わせた性的マイノリティー当事者らが初めて警官に真っ向から立ち向かって暴動となった事件を指します。
当時のアメリカには、同性愛者であることをそれだけで罪とする「ソドミー法」という法律があり、警官によるゲイバーへの抜き打ち調査がたびたびおこなわれていました。しかしこの日、「ストーンウォール・イン」では人気歌手の追悼式をしていました。そこに踏み込まれて当事者らは大きな反感を抱いていたところに、連行しようとした警官が当事者を殴りつけるという事件が発生。店が半壊するほどの暴動にまで発展したのです。
この事件をきっかけに、性的マイノリティー当事者らが迫害に立ち向かう抵抗運動を始め、大きなムーブメントになったと言われています(参照:ストーンウォール事件|PRIDE JAPAN)。
②人種差別の禁止とウーマン・リブ
ストーンウォールの反乱が起きた1960年代は、アメリカで公民権運動が高まった時期でもありました。1963年には「ワシントン大行進」という、すべての人の平等を求めたデモ行進がおこなわれ、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが、黒人が白人と平等な権利を得ることを求めて演説をおこないました(参照:「米国の歴史の概要 – 変動の時代:1960~1980年」|AmericancenterJapan)。
1964年には公民権法が改正され、アメリカ国内での人種差別が禁止に。また、こうした平等や人権といった考え方を背景に、フェミニズムの文脈ではウーマン・リブの動きが盛んになりました。
ウーマン・リブとは、女性のために、女性が男性と平等な権利を求め、男性と対等の地位や自分自身で職業や生き方を選べる自由を獲得しようとする社会運動のことです。女性たちが、性差に起因する差別的扱いすべてを対象とし、中絶する権利や避妊の自由など性に関する自己決定権を主張し始めたことは、性的マイノリティー当事者にとっても大きな影響を与えました。
③性的マイノリティー当事者への理解が拡大
1979年には、性的マイノリティー当事者が初めて国家規模のデモを首都ワシントンでおこないました。このデモ(プライドマーチ)は大きな反響を呼びました。アメリカ全土にこうした当事者がいることが知られるとともに、その当事者に対する権利擁護の機運が高まるきっかけになったのです。
1990年代には映画やエンターテインメントの領域で性的マイノリティーがテーマとして扱われることが増えました。この頃から、影響力の大きな歌手や俳優たちが自身の性的指向や性自認についてカミングアウトする動きが広がってきました。こうしたムーブメントの高まりもあり、1989年にデンマークで初めて同性カップルに適用されるシビル・ユニオン(登録パートナーシップ法)が導入されます。その後、2001年にオランダで世界初の同性婚が実現しました。
また、性自認に関しては、1972年にスウェーデンが初めて、法的に性別を変更することを認めています。
(2)ジョグジャカルタ原則で性的指向・性自認への措置が決められる
こうした動きに後押しされ、2006年の国際会議における「モントリオール宣言」のなかで「LGBT」という言葉が初めて公的文書に用いられました。この宣言は世界人権宣言の「万人は生まれながらに尊厳と権利において自由にして平等である」という原則がいまだに性的マイノリティー当事者において実現されていないことを突きつけ、こうした当事者たちの人権擁護、尊厳の獲得を訴えるものでした。
これを受けて同年、有識者らによって「ジョグジャカルタ原則」が作られました。これは性的指向および性自認に関して、国際人権法がどのように適用されるかをまとめた国際文書です。この原則自体には法的拘束力はありませんでしたが、国家が性自認と性的指向を扱うにあたりとるべき措置を29の原則にまとめあげたものです。
(3)SDGsとの関係からさらに注目度が高まる
性的マイノリティー当事者に関する権利擁護の動きは、このように人間としての権利(ヒューマン・ライツ)や尊厳の獲得と不可分に発展してきたのです。
こうした意識はSDGsとも密接な関係にあります。性的マイノリティー当事者は長い迫害の歴史があり、貧困に陥っていたり教育を受けることが困難な境遇におかれていたりすることが少なくありません。
それどころか、性的マイノリティー当事者であるだけで罪に問われるという場合すらあるのです。事実、宗教上の理由によって同性愛が犯罪とされ、死刑が適用されるサウジアラビアやイランなどの国もあります。ブルネイでは2019年に同性間による性行為に対して投石による死刑を科す法律を制定し、国際社会から強い非難を浴びています。
自分らしく生きるだけで生命を脅かされるような状況は、SDGsの達成にあたって大きな阻害要因になるでしょう。さらに、性的マイノリティー当事者は性的マジョリティーに比べて自殺念慮率が高いという調査結果もあります。SOGIに対する配慮が行き届いていない社会では、SDGsが目指す持続的でよりよい社会が達成できていないということになるのです。
こうしたことを背景としてSOGIに対する国際的な関心が高まるなか、新たな問題として「SOGIハラ」も認知されてきました。
SOGIハラとは「SOGIハラスメント」の略で、性的指向や性自認に関連した差別的な言動や精神的・肉体的な嫌がらせをおこなうことです。このなかには、本人の同意なしに本人の性的指向や性自認について第三者に公開する「アウティング」も含まれます。
こうした課題も知られてきたことにより、SOGIに対し世界的にさまざまな取り組みがなされてきました。
4.SOGIに関する世界の国々や日本の取り組み
上記のように、私たちを取り巻く環境に対する意識が変わるなか、政府や企業がどのような取り組みをしているのかご紹介します。
(1)世界の国々の取り組み
①海外政府における取り組み
アメリカでは2014年、オバマ大統領がLGBTの権利保護にかかる大統領令に署名しました。これは連邦政府機関と契約する請負企業が求職者や従業員について性的指向またはジェンダー・アイデンティティーに基づく差別をおこなうことを禁じるもので、性的マイノリティー当事者の権利擁護に政府が明確な態度を示すものとなりました。
さらには2022年12月、連邦議会が同性婚や異人種間の婚姻を立法で明確に合法化する結婚尊重法案を可決。これにより、婚姻は男女間の権利だと限定していた結婚防衛法は正式に廃止されることになり、性的マイノリティーのみならず多くの人々の権利獲得に弾みがつくこととなりました。
また、2020年にベルギーで発足した新政権では、トランスジェンダーであるペトラ・デゥスッテル氏が副首相に就任しています。これは欧州でも初めてのことです。素晴らしいことに、このニュースはベルギー国内ではあまり注目を浴びていません。ベルギーでは同性婚が2004年に合法化されており、性自認に関係なく優れた政治家であれば登用されるのが当たり前だ、という認識があるからです。この内閣は男女比率もほぼ半数であり、若手も多く登用されています。その陣容は同国の多様性に対する認識を諸外国に大きくアピールすることとなりました(参照:ベルギーでトランスジェンダーの副首相誕生 国内では誰も騒がない、素晴らしい理由とは|47ニュース)。
②海外の企業における取り組み
アメリカの非営利組織では毎年、従業員500人以上の大企業におけるLGBTの職場環境について、企業平等指数調査をおこなっています。この調査には年々多くの企業が参加するようになっており、2022年には満点評価を得た企業が840社に達しました。これは、アメリカ国内で性的マイノリティー当事者への支援に関する企業の取り組みが大きく進んでいることを示しています(参照:Corporate Equality Index 2022|Human Rights Campaign)。
調査開始以来20年にわたって「満点」を取り続けている7社のうちの1社、ゼロックス社においては、自社の差別禁止ポリシーのなかに性的指向を加え、1997年からLGBT従業員のパートナーに対する福利厚生の適用を開始しています。同社のSOGIに対する取り組みは、組織のリーダーたちが参加するダイバーシティー委員会が中心となってなされており、その取り組みの一つにコーポレート・チャンピオンの選出があります。コーポレート・チャンピオンはLGBT、ヒスパニックなどのマイノリティー従業員のグループと組んでリーダーシップを発揮することが求められるため、その声が上層部に届き、従業員全体に影響させるための仕組みとして整備されているのです。
同社の主な取り組みの成果としては、先に述べたトランスジェンダーを含めた福利厚生の導入や社員向けLGBT教育研修の実施、役員をLGBTの理解者であるサポーターとしたことなどが挙げられます。こうした功績によって同社は2011年、LGBT支援組織のアウト&イコールから「職場における擁護者に対するチャンピオン・アワード」を受賞しています(参照:欧米諸国のLGBTの就労をめぐる状況:アメリカ|独立行政法人労働政策研究・研修機構)。
(2)日本の取り組み
①日本政府における取り組み
日本においては2004年、性同一性障害特例法が施行されました。これはトランスジェンダーの人が法的に性別を変更することを認めるものです。変更要件に生殖機能を永遠に失うことを設けているため、当事者にとっては大きな負担を強いるものではありますが、国内のトランスジェンダーにとっては性別変更について道を開く第一歩となりました。
2015年以降、文部科学省もこの分野においては指針を次々と発表しています。そのなかで性同一性障害や性的マイノリティーとされる児童生徒に対する理解を促すほか、細やかな対応の実施を求めました。さらに2017年にはいじめ防止対策推進法に基づき、「いじめの防止等のための基本方針」を改定。ここには性的指向・性自認を理由とするいじめの防止も盛り込まれています。
また、2019年、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が成立しました。この法律は企業が雇用管理上取るべき措置を明記したもので、パワハラ指針にはSOGIハラについても明記されました。このなかにはセクハラ、パワハラに加え、SOGIハラに関する相談窓口の設置を企業に義務付けており、相談に対して適切な対応を取ることを求めています。
一方、地方自治体の同性パートナーシップ制度も2022年10月時点で240自治体で導入が進み、人口カバー率では55.3%に達します(参照:渋谷区・虹色ダイバーシティ全国パートナーシップ共同調査|認定NPO法人虹色ダイバーシティ)。
日本ではまだ同性婚が認められておらず、性別変更にも大きな困難を伴いますが、それでも少しずつ状況は改善しています。しかし、国連人権理事会から、日本はLGBTに対する人権状況の改善勧告を複数回受けています。国際的には日本における性的マイノリティー当事者に対する支援は、まだまだ道半ばといえるでしょう。
②日本企業における取り組み
日本においては、任意団体「work with Pride」が2016年に日本初の職場における性的マイノリティーへの取り組みの評価指標「PRIDE指標」を策定しました。
これは行動宣言や啓発活動、人事制度や福利厚生における性的マイノリティーに関する取り組み状況を評価項目としたもので、PRIDE指標2022では5点満点のゴールド評価を得た企業は318社に上ります。また、ゴールド評価を得た企業のなかから選出されるレインボー企業には14社が選ばれました(参照:PRIDE指標2022レポート|work with Pride)。
この選定企業から、野村ホールディングスの取り組みを紹介します。
同社は「アライズ・イン・ノムラ(ALLIES)ネットワーク」という活動をおこなっています。これはダイバーシティー・エクイティー・インクルージョン(DEI)の一環として性的マイノリティーへの理解を呼びかけるものです。この活動は「アライ」と呼ばれるLGBTの理解者が中心となって進めているもので、アライを増やすことによりLGBT当事者にとって働きやすい職場作りを目指すとしています(参照:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)|野村ホールディングス)。
5.SOGIに関して私たちが意識したいことは?
こうした国や企業の取り組みに関連して、私たちが意識すべき内容についてご紹介します。
(1)個人の場合
①性的マイノリティーに対する正しい知識を得る
LGBTに限らず、性的マイノリティーに対する正しい知識を得ることはSOGIの考えを理解するうえで非常に重要です。
電通の調査では、LGBTという言葉の認知度は2015年調査の37.6%から2020年調査では80.1%まで向上しました。しかし、クエスチョニングやアセクシュアルなどLGBT以外の性の多様性については、約8割の人が「言葉自体も聞いたことがない」と回答しています(参照:電通、「LGBTQ+調査2020」を実施|株式会社電通)。
こうした用語の難しさもあり、多様な性のあり方を知ることが難しいという状況が無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)につながる可能性もあります。
こうした知識を得るためには、当事者団体の開催するイベントへの参加や、性的マイノリティー当事者を扱った映画・書籍・ドキュメンタリーなどに触れることがおすすめです。近年はカンヌ、ベルリン、ヴェネツィアの各国際映画祭で、LGBT映画を対象にした特別賞が設けられており、優れた映像作品で当事者の感情を追体験することができます。
②SOGIハラの具体例を知る
どういった言動がSOGIハラにあたるのかを知っておくことも重要です。
例えば、何げなく「あの人って男性なの、女性なの?」といった性自認を問う内容を本人が望まないかたちで話題にすることもSOGIハラといえますし、同様に「彼氏いるの?」といった質問を女性にすることもSOGIハラの一類型にあたります。また、「女性なのだから化粧ぐらいするべきだ」「男性なのだからスーツの着用は当たり前」といった常識を押し付ける表現も、表現する性の侵害にあたるので注意が必要です。
「レズ」「ホモ」といった言葉を差別的に使うこと、偏見による言葉をぶつけることは論外ですが、このように意図しない形で相手を傷つけることを減らすためにも、SOGIハラの具体的事例を知ることは非常に大切なのです。
他方、交際相手の性別を故意に特定させることのないよう、「パートナー」「配偶者」といった言葉選びをすることもSOGIハラの防止につながります。
自分の身近にも性的マイノリティー当事者がいると意識しつつ、日ごろからこうした言い換え表現に気を付けることも大切なポイントです。
(2)企業の場合
①ダイバーシティー・エクイティー・インクルージョン(DEI)に取り組む
組織に多様性のある企業の収益や従業員満足度が高くなることは、よく知られています。しかし、こうした環境をつくることは一朝一夕では難しいものです。
近年、ダイバーシティー&インクルージョンに加えてエクイティー(公平)の観点が注目されています。多様性、公平性を包括的に実現することが企業の持続的な発展に寄与するといわれており、この公平性の観点が担保されることによって、多様な背景を持つ人材の活躍の場が広がるのです。
こうした取り組みが進むと、企業内に心理的安全性が醸成されます。心理的安全性とは自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態を指し、性的マイノリティー当事者にとってだけでなく社員全員の発言量の増加につながり、イノベーションを推し進める力になるでしょう。
経営トップは自らSOGIに関するメッセージを発信するなど、企業としてDEIに取り組む姿勢を見せることによって社員への意識浸透をはかり、またそれを実現するための施策をおこなうことが重要です。
②取り組み内容の明文化、周知を徹底する
DEIに関する取り組みとして相談窓口を設置したり、社内研修をおこなったりしている企業は、そうした内容を定期的に社内外に発信することが重要です。どのような内容をどの程度の頻度でおこなっているのかなどを発信することによって、社員への意識浸透だけではなく、社会に対する啓発につながります。
また、企業としてSOGIの問題にどのように取り組むかを明文化して周知することも大切です。例えば就業規則において性別による服装の差をなくしたり、制服を撤廃したりすることも取り組みの一つといえるでしょう。また、ハラスメントに関する内容を懲戒事項として入れるなど、企業がSOGIハラを認めない姿勢を示すことも重要です。
筆者の関与先の保険代理店では、就業規則の改正時に服装の規定を男女一律のものに変更し、その旨を全社員の前でトップメッセージとして発信したうえでホームページ上でも公開しました。顧客にも性的マイノリティー当事者がいるかもしれないという意識がこうした行動につながっており、非常に素晴らしい取り組みだと感じます。
また、食品加工業を営む企業では、入社用書類から性別と写真の欄を削除しました。導入までは社内でも議論があったそうですが、2023年度の就職説明会に参加した学生が全員応募するなど好反応があり、採用難の時代においてこうした取り組みの重要性を改めて感じたところです。
こうした取り組みの一つひとつは小さなものですが、着実に実行し社内体制を整えていくことも、SOGIに関して企業がおこなうべきことといえるでしょう。
6.SOGI=私たち一人ひとりの人権を守ること
SOGIは私たち一人ひとりの人権を守るための概念であり、その実現はきわめて重要な課題です。
いわれない偏見で人を傷つけたり、自分が傷つけられたりせずに済むように、SOGIの概念を理解し正しい知識を身につけましょう。そうすることにより、私たちは自分たちが自分たちらしく生きる社会を手に入れることができるようになるのです。
SOGIの実現のためにできる小さなアクションを、ぜひ実行してみてください。