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「時間外労働の上限規制」で、建設業の36協定はどう変わる?

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リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

建設業界は、従来から慢性的な長時間労働や休日不足に悩まされているようです。

そこには、短い納期に追われがちなことや、災害などの緊急時に対応する必要が生じることがあるといった、業界特有の事情も影響していると考えられます。

そうした業界特有の事情もあって、建設事業は、働き方改革によって導入された「時間外労働の上限規制」の適用が5年間猶予される事業のひとつとされてきました。

しかし、5年間の猶予が終了する2024年4月1日からは、建設事業も「時間外労働の上限規制」の適用対象になります。

これまでになかった上限規制の導入により、建設業界における時間外労働はどう変わっていくのでしょうか。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 「時間外労働の上限規制」が建設業の36協定に及ぼす影響
  • 建設業における労働環境の現状
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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2024年4月から、建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用される

2019年4月に、働き方改革関連法が施行されました。

この「働き方改革」における具体的な目標のひとつに、「長時間労働の是正」があります。
そこで、長時間労働の是正という目的を達成するため、「時間外労働の上限規制」というルールが、従来よりも厳格化される形で導入されました。

もっとも、建設業は、業界特性等の理由から「時間外労働の上限規制」の適用が5年間猶予されています。

したがって、5年間の猶予が終了する2024年4月からは、建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用されることになります。

【適用猶予・除外の事業・業務】

自動車運転の業務改正法施行5年後に、上限規制を適用します。
(ただし、適用後の上限時間は、年960時間とし、将来的な一般則の適用については引き続き検討します)
建設事業改正法施行5年後に、上限規制を適用します。
(ただし、災害時における復旧・復興の事業については、複数月平均80時間以内・1ヶ月100時間未満の要件は適用しません。この点についても、将来的な一般則の適用について引き続き検討します)
医師改正法施行5年後に、上限規制を適用します。
(ただし、具体的な上限時間等については、医療界の参加による検討の場において、規制の具体的あり方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることとしています)
鹿児島県及び沖縄県
における砂糖製造業
改正法施行5年後に、上限規制を適用します。
新技術・新商品等の研究開発業務医師の面接指導(※)、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は適用しません。
※時間外労働が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととします。
参考:働き方改革 ~一億総活躍社会の実現に向けて~|厚生労働省

「時間外労働の上限規制」が建設業の36協定に及ぼす影響とは?

ここでは、「時間外労働の上限規制」が適用されることで、36協定がどのように変わるのかについて説明していきます。

(1)36協定で設定できる時間外労働の限度に関する規制が「罰則付き」になる

使用者が労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合には、労働基準法36条に基づく労使協定(「時間外・休日労働に関する協定届」いわゆる36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

ただし、36協定を締結していても、時間外労働には上限が設けられています。
労働基準法によると、時間外労働は原則「月45時間・年360時間」が上限とされています。

かつては、この上限規制は厚生労働大臣の告示という形式にとどまっており、違反した場合にも行政指導が行われる程度で、法律上の罰則はありませんでした。
それが、改正労働基準法の施行(2019年4月)に伴い、罰則付きの法律として、厳格化された形での適用がスタートしました。

建設業ではこの適用が猶予されていましたが、猶予期間が終了する2024年4月以降は、他の業種と同様、この上限規制が罰則付きの法律として適用されることになります。

36協定について詳しくはこちらをご覧ください。

36協定をわかりやすく解説!締結における時間外労働の上限は何時間?

(2)特別条項付き36協定でも、一定のラインまでしか時間外労働ができない

先述のとおり、時間外労働は原則「月45時間・年360時間」までとされていますが、36協定に『特別条項』を付ければ、原則を超える時間外労働をさせることが可能になります。

これは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合に限って、「月45時間・年360時間」という原則を超える時間外労働を定めることができるという例外的な措置です(労働基準法36条5項)。

ただし、このように36協定に特別条項を付けた場合においても、超えることができない時間外労働の上限規制があります。
具体的には、労働基準法において次のように定められています。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働及び休日労働の合計が、複数月(2~6ヶ月のすべて)平均で80時間以内
  • 時間外労働及び休日労働の合計が、1ヶ月当たり100時間未満
  • 原則である1ヶ月当たり45時間を超えられるのは1年につき6ヶ月以内

参考:時間外労働の上限規制|厚生労働省

【コラム~災害時における復旧・復興の事業~】
2024年4月以降も、災害時における復旧・復興の事業については、例外的に「時間外労働の上限規制」の一部が適用されないことになっています。
具体的には、時間外労働と休日労働の合計について、「複数月平均で80時間以内」「1ヶ月当たり100時間未満」とする規制については、適用対象外となります。
ただし、ここでいう「災害時」とは、「事前に予測できない災害」等に限定されるため、復旧・復興の事業であっても例外的な適用除外の対象とならない可能性もあります。

建設業の長時間労働の是正に向けて、国が推進している施策

国は、労働時間の規制を厳格化するだけでなく、民間と協力して働き方改革を行っていこうとしています。

(1)建設業における労働環境の現状

  • 年間の労働時間・労働日数

国土交通省の発表によると、建設業における年間実労働時間は、2016年度において2056時間となっています。
これは、調査の対象となった産業全体の平均(1720時間)を大きく上回っています。
また、年間出勤日数については、2016年度において251日となっています。
これも、調査の対象となった産業全体の平均(222日)を上回っています。

  • 4週あたりの休暇日数

同じ国土交通省の発表において、建築工事・土木工事の両方を含めた建設工事全体では、64%の労働者が「4週4休」以下で就業している状況となっています。
労働基準法35条は、使用者に対し、「1週間当たり1日以上」または「4週間当たり4日以上」の休日を労働者に付与することを義務付けていますから、建設業において十分に休日が与えられているとはいえない状況がうかがわれます。

(2)国が推進する建設業の「働き方改革実行計画」

将来的には、災害からの復旧・復興事業についても、「時間外労働の上限規制」を例外なく一般的に適用することを検討するとしています。

また、民間と協力しながら、次のような施策をはじめとするさまざまな対応を進めていくものとしています。

  • 「時間外労働の上限規制」の適用に向けた環境の整備、建設業界に対する支援措置
  • 技術者・技能労働者の確保・育成の制度構築
  • 生産性向上施策(施工時期の平準化、全面的なICTの活用、書類の簡素化、中小建設企業への支援等)

参考:建設業における働き方改革|国土交通省

【まとめ】2024年4月から建設業も「時間外労働の上限規制」の適用対象に!36協定による時間外労働の上限規制が厳格化

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 建設業では、労働基準法で定められた「時間外労働の上限規制」の適用が施行後5年間猶予されている(2024年4月から適用対象となる)
  • 時間外労働をさせるためには36協定の締結が必要であり、36協定を締結していても、時間外労働は原則「月45時間・年360時間」が上限
  • 36協定に特別条項を付けると、例外的に「月45時間・年360時間」の原則を超える時間外労働が認められる場合もあるが、その場合でも無制限に労働させて良いわけではなく、上限規制が存在する
  • 国は、建設業における長時間労働の是正のためにさまざまな施策を講じている

建設業において時間外労働の上限規制が適用されるようになると、実際には残業をしているのに異なる労働時間の記録がされたりして、目に見えない形でのサービス残業が増えてしまうといった弊害も生じ得ます。
未払いになっている残業代があるかもしれないと感じている方は、残業代を請求できるかどうか、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。

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そして、原則として、この報酬は獲得した金銭(例:残業代、示談金)からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年11月時点

建設業で働いており、未払いの残業代があるなどでお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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