会社が従業員の退職時に雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出しないと、退職した従業員が失業保険の受給をしようと思っても、離職票が会社から送付されません。
その結果、そのままでは退職した従業員が失業保険を受給することができない状態に置かれてしまいます。
また、退職した従業員が転職をしても、前職の会社が雇用保険被保険者資格喪失届を提出していないと、転職先で雇用保険の加入手続きを進めることができません。
このように雇用保険被保管者資格喪失届の提出は、労働者にとっても重要なものです。
しかし、労働者側からすると、「いかなる場合に雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要とされているのか」や「会社で雇用保険被保険者資格喪失届についてどのような手続きをすすめているのか」を分かっている労働者の方は多くないでしょう。
これから会社を退職し、失業保険を受け取りたいと考えている方や転職を考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
また、雇用保険被保険者資格喪失届の記入や提出にお困りの会社担当者の方も、この記事を参考にしてください。
この記事では、雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要なケースから具体的な書き方、提出方法、そして添付書類までを解説しています。
この記事を読んでわかること
- 雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要なケース
- 雇用保険被保険者資格喪失届に記入すべきこと
- 雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限・提出方法・添付書類
ここを押さえればOK!
提出が必要なケース: 従業員が退職したとき、週の所定労働時間が20時間未満となったとき、従業員が死亡したとき、法人の役員になったとき、他社に出向したときが挙げられます。
記入方法: 個人番号(マイナンバー)、被保険者番号、事業所番号、資格取得年月日、離職等年月日、喪失原因、離職票交付希望、1週間の所定労働時間、補充採用予定の有無、新氏名、外国人労働者の場合の記入欄などを正確に記載します。
提出期限: 資格喪失日の翌日から10日以内で、守らない場合には罰則があります。
提出方法: ハローワークの窓口、郵送、電子申請があり、それぞれの方法に応じた注意点があります。
添付書類: 雇用保険被保険者離職証明書、労働者名簿、出勤簿またはタイムカード、賃金台帳または給与明細、辞令および他の社会保険の届出、離職理由を確認できる書類が必要です。
適切な手続きを行い、トラブルを未然に防ぐためには、正確な記入と期限内の提出が重要です。手続きに不安がある場合は、ハローワークへの相談を推奨します。
東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。アディーレ入所後は未払残業代請求事件をメインに担当し、2022年より労働部門の統括者。「自身も同じ労働者だからこそ、労働者の方々に寄り添える」との信念のもと、より多くのご依頼者様を、より良い解決へ導くことを目標に尽力している。東京弁護士会所属。
雇用保険被保険者資格喪失届とは
雇用保険被保険者資格喪失届とは、労働者が雇用保険の被保険者資格を喪失した際に提出する届出書です。
この書類は、企業が従業員の雇用保険を正確に管理するために必要で、法律により提出が義務付けられています。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出が必要なケース
雇用保険被保険者資格喪失届は退職したとき以外にも提出が必要です。
次に、雇用保険被保険者喪失届の提出が必要なケースについて紹介します。
(1)退職したとき
従業員が退職した場合、企業は雇用保険被保険者資格喪失届を提出する必要があります。
この場合、離職票の発行も合わせて行うことが一般的です。
(2)週の所定労働時間が20時間未満となったとき
従業員の所定労働時間が20時間未満になった場合も届出が必要です(臨時的・一時的な場合を除く)。具体的な例として、パートタイム勤務への変更などが挙げられます。
(3)従業員が死亡したとき
従業員が死亡した場合も、資格喪失届の提出が必要です。
この場合、家族が離職票を受け取ることになります。
(4)従業員が法人の役員になったとき
従業員が法人の役員に就任した場合も、雇用保険の被保険者資格を喪失します。
この場合、役員報酬が給与に該当しないため、雇用保険の適用外となります。
(5)従業員が他社に出向したとき
従業員が他社に出向する場合も、資格喪失届の提出が必要です。
出向先で雇用保険に加入するため、元の勤務先での被保険者資格を喪失します。
雇用保険被保険者資格喪失届の記入方法
次に、雇用保険被保険者資格喪失届の記入方法について紹介します。
(1)個人番号
個人番号は従業員のマイナンバーを記入します。
記入時には、利用目的を伝えた上で番号が正確であることを確認し、不正確な情報がないように注意してください。
(2)被保険者番号
被保険者番号は、雇用保険に加入している従業員に割り当てられる番号です。労働者が既に雇用保険に加入している場合、この番号を雇用保険被保険者証や過去の届出書類から確認して記入します。
ただし、1981年7月6日以前に発行された被保険番号は16桁あり、現在の交付番号とは違います。その場合には、被保険者証の下10桁の数字を記載して、残りの一枠は空欄にします。
(3)事業所番号
事業所番号は、事業所がハローワークに登録されている番号です。会社の総務部や人事部が保管していることが多いため、確認の上で正確に記入してください。事業所番号が不明な場合は、ハローワークに問い合わせることができます。
(4)資格取得年月日
資格取得年月日は、従業員が雇用保険の被保険者となった日を指します。通常、入社日が資格取得年月日となります。
(5)離職等年月日
離職等年月日は、従業員が雇用保険の被保険者資格を喪失する日です。これは、退職日や労働時間の変更日など、資格を失う具体的な日付を記入します。間違いがないように、正式な退職日や変更日を確認してから記入することが重要です。
(6)喪失原因
喪失原因は、被保険者資格を喪失した理由を番号で記入します。
具体的な理由としては、「退職」「労働時間の変更」「死亡」などがあります。
(7)離職票交付希望
離職票交付希望は、従業員が離職票の交付を希望するかどうかを記入します。
離職票は失業給付を受けるために必要な書類です。
(8)1週間の所定労働時間
1週間の所定労働時間は、従業員の週あたりの労働時間を記入します。
雇用契約書や勤務シフト表を基に確認します。
(9)補充採用予定の有無
補充採用予定の有無は、退職した従業員の代わりに新たな従業員を採用する予定があるかどうかを記入します。「有」または「無」で回答します。
(10)新氏名
雇用保険被保険者資格喪失届を提出する時点で、雇用保険被保険者証と氏名が異なる場合には、「新氏名」の欄に新しい氏名を記載する必要があります。
これに該当しない場合は、空欄にしておきます。
(11)外国人労働者の場合の記入欄
外国人労働者の場合の記入欄には、在留カード番号や在留資格を記入します。
外国人労働者の情報は、在留カードやパスポートを基に記入します。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限
雇用保険被保険者資格喪失届は、資格喪失日の翌日から10日以内に提出することが法律で義務付けられています。
この期限を守ることで、雇用保険の適用や給付に関するトラブルを未然に防ぐことができます。例えば、退職した従業員が失業手当を迅速に受け取れるようにするためには、期限内の提出が不可欠です。
これらの届出を行わなかった場合や虚偽の届出を行った場合には、6ヶ月以下の懲役または3ヶ月以下の罰金が科される可能性があります。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法
次に、雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法について紹介します。
雇用保険被保険者資格喪失届はハローワークインターネットサービスからダウンロードできます。書式は定期的に更新されていますので、最新のものを使用するようにしてください。
(1)ハローワークの窓口で提出
ハローワークの窓口での提出は最も一般的な方法です。この方法では、担当者が直接確認してくれるため、担当者の印鑑も持っていくと書類の不備や誤りをその場で修正できます。
事前にハローワークの受付時間を確認しておくとスムーズです。
即日で手続きを完了させることができます。
(2)郵送で提出
郵送での提出は、時間や場所に制約がある場合に便利な方法です。必要書類を封筒に入れ、ハローワークの担当部署宛に送付します。この際、簡易書留や特定記録郵便を利用すると、送付履歴を確認できるため安心です。
(3)電子申請で提出
電子申請は、インターネットを利用して手続きを行う方法です。
これは迅速で効率的な方法で、24時間いつでも申請が可能です。
雇用保険被保険者資格喪失届の添付書類
次に、雇用保険被保険者資格喪失届の提出に当たって添付すべき書類について紹介します。
- 雇用保険被保険者離職証明書
- 労働者名簿
- 出勤簿またはタイムカード
- 賃金台帳または給与明細
- 辞令および他の社会保険の届出(控)
- 離職理由を確認できる書類
これらの書類は、離職理由や労働状況を正確に証明するために必要です。
【まとめ】従業員の退職や労働条件の変更などで必要!提出期限に注意!
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員の退職や労働条件の変更などで必要な重要な書類です。提出期限(資格喪失日の翌日から10日以内)を守ることで、雇用保険の適用や給付に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
また、正確な記入と必要な添付書類の準備が求められます。具体的な提出方法には、ハローワークの窓口、郵送、電子申請があり、それぞれに応じた注意点とトラブル回避策を把握することが重要です。
手続きに不安がある場合や不明点がある場合、また雇用保険被保険者資格喪失届が会社から提出されないことで離職票が受けとれずお困りの労働者の方は、事業所のお近くにあるハローワークへの相談をおすすめします。