【編集後記】Vol.468=「イチョウ並木」
春、イチョウの木の葉は明るい緑色になり、暑い日が続く夏は濃い緑色になる。
最近は短くなった秋が深まるにつれ、葉は黄色く色づく。寒い冬を迎えると葉は鮮やかな黄色に染まり、やがて散る。そして季節は巡りまた春がやってくる。
今年も関東大学リーグのメイン会場である東京・アミノバイタルフィールドに何度通っただろう。
京王線の飛田給駅からアミノバイタルフィールドまでの距離は、それなりに歩き応えがある。その道すがら、イチョウ並木を眺めながら季節を感じる。12月になると、そんな風に一年を振り返る。
12月1日。アミノバイタルフィールドで行われた関東大学医科歯科リーグの東大医学部と慶応大医学部の試合を取材した。
懇意にしている関学大OBが東大医学部を長年指導していることもあって、毎年最終戦を見に行くことにしている。
試合は29―2で東大医学部が勝った。前日、東京・江戸川区の競技場で歴史に残る激闘を演じた法大と関学大の全日本大学選手権準決勝とはプレーレベルは比べようもないが、アメリカンフットボールにかける熱い思いはトップリーグの学生に負けていない。
関学大OBのコーチは言う。「彼らが目指しているのは甲子園ボウルではないが、目標はあくまでリーグ優勝。努力を惜しまず、勝つためのフットボールを教えている。彼らは純粋で、競技に打ち込む姿にこちらが引き込まれる」
今季の東大医学部は、2勝1敗で7チーム中3位だった。
医科歯科リーグは6年生まで試合に出場できる。小学1年生が中学1年生になる。6年間とはそういう歳月だ。
医師になるための勉強とスポーツを両立させる難しさは、周囲の想像を超えるものがある。それでも6年間続けてきた彼らに話を聞くと、仲間との絆が何よりの財産だという。
小児科医希望のWR/DBの松田聖さんは、6年間を振り返り「自分が勧誘した後輩が、辞めずにアメフトを続けてくれたことがうれしい」と、涙を浮かべて話してくれた。
そんな言葉が聞きたくて、ロートル記者は毎年この時期、彼らに会いに来ているような気がする。
大詰めを迎えた大学のシーズンは、15日に立命大と法大が大学日本一を懸けて「甲子園ボウル」で対戦する。レベルの高い争いになりそうな今年の頂上決戦は楽しみだが、その一方で関東リーグでは残留、昇格を懸けた入れ替え戦が年末まで続く。
それぞれが思いを込めたプレーを見守る。それもまた、自分に与えられた使命だと思っている。(編集長・宍戸博昭)
宍戸 博昭( ししど・ひろあき)プロフィル