人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/サイレント・ナイト

アマプラで観たホラー映画です。
2021年制作、イギリスのクリスマスホラーコメディです。

 

 


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【あらすじ】
今日はクリスマス。ネルとサイモン夫婦の家ではパーティーが催された。
だが今年はいつもと違う。
人類は猛毒ガスによる滅亡の危機に瀕しており、イギリス政府は国民に『尊厳ある死』を奨励して毒のピルを配布し、誰もが従おうとしていた。
だが夫婦の息子、アートだけはこの状況に疑問を呈していた。

 

【ひとこと感想】
悲劇(ホラー)を突き抜けて喜劇(コメディ)な、別の意味でのラストクリスマス。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①ホラーにしては何も起こらず
②コメディにしてはギスギス
③ラストまで観ると

 

【①ホラーにしては何も起こらず】
冒頭は、楽しそうなクリスマスの準備。
料理したりニワトリ(?)を捕獲したり、陽気な音楽に乗って集まる人々。

再会を喜び、子どもたちはイザコザを起こし、
「このエルメスのコート、強奪してやったわ!」などジョークなのか本気なのか分からない会話がなされます。

 

ネル:「老けたわ。みんな年をとっていく」
友人ジェームズ:「これ以上は年を取らない」

 

騒がしさの中にある不穏さ。

 

「女王のスピーチ見た?」「見てない」
「どうせ今ごろシェルターの中だ」

 

晩餐が始まり、何げない会話でぬるっと本題に入るところ好(ハオ)。
登場する人々の生活を覗いている感があります。

しかしこれ以降、ギョッとすることは起こりません。

たとえば、政府から 『DIE WITH DIGNITY』 と毒のピルを配給されたことに絶望し、ヒャッハーと強奪する無法者は出てきません。
舞台が田舎だからか、平和なものでした。

人類が滅亡するなんて信じられないくらいに。

 

【②コメディにしてはギスギス】
かと言って安穏と話が進むわけでもなく。

最後の晩餐を楽しみ、酒も入り、やがて親たちの暴露大会が始まります。
本当は誰それに気があった、など。

特にダメ母親のサンドラがすごい。
娘・キティの学資金で買い物をしたり、夫と子の前で別の男に「未練があるの……」と言ったり。
プレゼントをもらっても、キティは父親にしかお礼を言わず。
サンドラが「ママにもハグちょうだいよ〜〜」と言うのが大変キッツイ。

そして女性同士のカップルの片割れが、「昔あんたと寝たわね」と告白したり。

( ・ω・)<このギスギス感リアル〜〜〜〜

年末年始、親戚が集まる場で目にして経験したビミョーーーーな空気の悪さ。
(これは友人同士ですが)
完全に再現されています。

それでも死への恐怖をごまかすために、パーティーは大盛り上がり。
その無理やり浮かれているような様、必死さは妙に怖かったです。

 

【③ラストまで観ると】
老いも若きも最後のクリスマスを過ごす中、たった一人、現在の状況に疑問を呈するのが幼い長男アートです。

アートは子ども特有のまっすぐな目で言います。

 

アート:「合法的に存在していないとされるホームレスは、服毒のためのピルをもらえない。助けないと!」
    「そもそも猛毒ガスは本当にあるのか?」
    「(猛毒ガスで苦しんで死ぬ前に)死ねって言ってるのはダメダメな科学者かもしれないだろ!」

 

猛毒ガスは国家ぐるみの陰謀……ではなく、そうと判断した大人たちが間違っている可能性を訴えます。
パーティーの参加者、ソフィーが 「私は妊娠しているからピルは飲まない。赤ちゃんを殺せない」 と言ったことも加えて、アートはますます『尊厳のある死』を拒絶します。

ですがそんな正論やif論は両親に通じず、対立します。

 

アート:「ぼくを殺したい?」
サイモン:「黙れクソが!」

 

クソクソ言い合う親子。
オイオイ英国は紳士淑女の国やなかったんかい。(人間だから仕方ないね)

これはなかなか難しい問題だ。
みんなどのみち死ぬ。
ならせめて、一人だけ残すようなことをして苦しませたくない。
だから「時間になったらピルを飲め」と命じる。

つまり、「自殺しろ」と言っているのです。親が子に。

( ・⌓・)<どっちの気持ちも分かる……

国あるいは地球規模の心中。あるいは自殺と殺人。

逃げ出したアートは、森の中に放置された車に、家族らしき死体があるのを見つけます。
(暗くてよく見えなかったですが)

パニックに陥り、さらに猛毒ガスの効果か鼻口から出血してぐったりするアート。
それを契機に、各々ピルを飲むことにします。
別れを惜しんだ後、それぞれは「家族のもとへ」戻り、寝室でいよいよ最後の時を迎えます――が。

ここから突然のコント。
一緒に飲むコーラが足りないだのぬるいだの文句が出て、しょうもないことで引っ張ります。

 

サイモン:「勘弁してくれよ……」

 

妻子にわがまま放題言われるサイモンが可哀想でした。がんばれお父さん。

「お人形を忘れた」「最後の挨拶をしていない」「死んだかと思ったら死んでない」と、まるで出かける前に用事を思い出すようなノリで、めっちゃ引っ張る。

それでもなんとか全員死んで(最期にキティが母親をハグしているのにプチ感動)、

クリスマス翌日の朝☀️


アートが普通に目覚めました。


( ・⌓・)<……?

そして流れる『きよしこの夜』。
いや沈黙したのはまさかの結末を目にした私なのだが。

結局、アートの言ったとおりでした。
猛毒ガスは別に死ぬほどのものじゃなかった――というオチです。(たぶん)

 

 

【まとめ:確かにホラーコメディだった】

世界中の時計が一斉に狂えば、人間は時刻すら分からない。


という格言が浮かびました。

最後まで観れば、真偽不明のものに振り回され、別にせんでいい争いや対立をした挙句、踊らされて命を落とした人々の話でした。

確かにこれはホラーコメディ。

 

しかしクリパでこれを観るのはオススメできないな〜と思った、クリスマスシーズンのある昼下がりでした。
(絶対盛り下がるので、素直に『ホームアローン』とか観よう!)

 

【余談:お気に入り】
①アートたちが遠方に住むおばあちゃんにオンライン通話をしたシーン。

 

アート:「まだ生きてる!」
祖母:「そうね☺️」

 

ブラックでシビれる。
ちなみにこの後、祖母はピルを飲みます。


②アートが血まみれになっていたシーン。

アートの弟の双子が、「猛毒ガスのせいだ!」と瞬時に判断し、とっさにピルを飲むのにウケました。
両親も子どもからコーラを奪ってあわてて服用。判断が早い!

 

🎄


さて、この記事をもって2024年のホラー映画感想記事はおしまいです。

今年は原稿に尽力していて、更新がなかった月曜日も多くて無念です。

来年も元気にホラー映画を鑑賞し、深読みしたり哲学や真理を見出したり盛り上がったり踊ったりして楽しみ、『なんだか様子がちょっとおかしい記事』にしていきたいと思います!

 

次回は12月31日火曜日、
今年の振り返りと来年の手帳の話をゆるっとします。


ホラー映画の感想記事は2025年1月6日月曜日、
1960年制作、アメリカのヒッチコックのサイコスリラー、
『サイコ』の話をします。

( ・ω・)<新年なので王道覇道金字塔で!

 

 

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推しがいる私による推しがいる人に向けた、推し活讃歌オカルトコメディです!
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鳥谷綾斗