内田貴 『民法Ⅲ』 p.231-2 設例 〔Ⅷ-15〕 の実際の事案。
最判昭和61年4月11日
民法478条は 「債権ノ準占有者ニ為シタル弁済ハ弁済者ノ
善意ナリシトキニ限リ其効力ヲ有ス」 と規定するが、判例・通説は
無過失をも要する、としている。
この点につき、本件判例は、
「債務者において、劣後譲受人が真正の債権者であると信じてした弁済につき
過失がなかつたというためには、優先譲受人の債権譲受行為又は対抗要件に瑕疵があるためその効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情があるなど劣後譲受人を真の債権者であると信ずるにつき
相当な理由があることが必要である」
と、判示している。
本件において、判旨は「相当な理由」がなかった、とするが、実際の事案においては、内田が前掲書で述べるように、たしかに弁済者に酷であったとも思える。
判断に困る場合は、照会や供託をすべし、というのが判例のメッセージなのだろうか。