ウォルマート、食品管理に「ブロックチェーン」を導入

ブロックチェーンが「金融以外」の分野に応用され始めている。米スーパーマーケットチェーンのウォールマートはIBMと組んで、中国から輸入する食品の管理にブロックチェーン技術を導入する。
ウォルマート、食品管理に「ブロックチェーン」を導入
IMAGE: Mariya Olkova / 123RF

ブロックチェーン技術の可能性が金融分野を超えて議論されるなかで、米スーパーマーケットチェーンのウォールマートもこの技術の導入に動き出した。サプライチェーン全体を通して食品を追跡し、問題があったらすぐに特定・対応できるようにするためだ。

ブロックチェーン技術は、本質的には、検証コードを使ってひとつにリンクさせたデータの塊(ブロック)の台帳だ。それぞれのブロックのコードが、ひとつ前のコードを参照して、途切れることのない連続したチェーンをつくる。すべてのブロックは、追加された順に従って永久に保存され、ある種のビルトイン型検証システムを提供する。改ざん防止機能がついた「高性能化した監査証跡」ともいえるだろう。しかも、チェーンはマスターロケーションに保存される必要はない。互いにリンクした記録を作成しながら、複数のコンピューター間で分散させる。

この技術はもともと、ビットコインを安全に取引するために使われていた。だが最近ではほかの業界もその利用を始めている。IBMは2016年2月、特にフードサプライなどのロジスティックス向けに、「サーヴィスとしてのブロックチェーン」の提供を始めた。その背景にあるのは、食料品が農場から工場、そして小売店の陳列棚へと移動する間の追跡が可能になるというアイデアだ。タグやセンサーを利用すれば、製品の現在地や気温、そのほかの統計的数字を、移動の各段階でブロックチェーン台帳に保存できるわけだ。

そして当然の流れとして、ウォールマートはIBMの提案を受けることにした。ウォールマートは2016年10月、IBMおよび北京・清華大学と提携し、中国から米国に輸送される豚肉を、農場から店頭まで追跡すると発表した。

ウォールマートではさらに、ブロックチェーンを使って米国内でパッケージされた製品の追跡も行っている。途中で何か不都合なこと、例えば出荷の際に肉が汚染される、あるいは配送中に傷んでしまうということが起きれば、影響を受けている出荷物をすぐに特定。消費者の手にわたる前に対応できるとウォルマートは考えている。

1週間に2億6,000万人もの顧客に品物を売るウォルマートのような小売業者にとって、効率的な追跡システムは重要だ。影響を受けた積み荷を特定してそれだけ抜き去ることができれば、用心のために数百の店舗からすべての製品を不必要に廃棄しなくて済む。

試験導入が成功すれば、ウォルマートは米国と中国の複数の食材にブロックチェーン台帳を拡大する計画だ。


プリント版VOL.25「ブロックチェーン」特集

[2016年10月11日発売の『WIRED』VOL.25は、「ブロックチェーン」特集。未来学者ドン・タプスコットによるメッセージから、スペインのアナキストであるルイス・アイヴァン・クエンデの肖像、岩井克人のビットコイン論、斉藤賢爾が語る5つの可能性、そして漫画家・西島大介による世界初(?)のブロックチェーン漫画まで、インターネット登場以来の、もしくはそれ以上の衝撃とも囁かれるブロックチェーンの未知なるポテンシャルを読み解く。さらに米国サイバー犯罪史上最も大がかりな捜査の果てに、ビットコインの存在を世に知らしめた闇サイト「Silk Road」事件の全貌を綴ったルポルタージュを20ページにわたって掲載する。特集の詳細はこちらから。](https://www.amazon.co.jp/dp/B01KHBZ4XY/condenast-22/)


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TEXT BY BETH MOLE

TRANSLATION BY SATOMI FUJIWARA/GALILEO