(参考)STAP細胞論文まとめ−Nature Article論文

※既に撤回されたArticle論文ですが、先にUPした理研の調査報告書を理解する上での参考用に、STAP細胞の主論文であったこの論文内容をまとめたものをUPしておきます。
(EDと略しているのは、Extended Data Figure)

Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency
http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/full/nature12968.html

Haruko Obokata, Teruhiko Wakayama, Yoshiki Sasai, Koji Kojima, Martin P. Vacanti, Hitoshi Niwa, Masayuki Yamato & Charles A. Vacanti

Author Contributions
小保方晴子、 笹井芳樹 原稿を執筆.
小保方晴子、若山照彦、笹井芳樹 実験の実施
小島宏司は、小保方晴子の移植実験を補助
小保方晴子、若山照彦、笹井芳樹、丹羽仁史、チャールズ・バカンティ プロジェクトのデザイン
マーティン・バカンティ、大和雅之 プロジェクトのデザインと評価を補助

Received 10 March; accepted 20 December 2013. Retraction July, 2014.

※CD45=白血球に共通した抗原
※Oct4=多能性に関連したマーカー

Low pH triggers fate conversion in somatic cells

・Oct4-gfpを遺伝子導入した生後1週間のC57BL/6マウスのリンパ球フラクションからCD45+細胞をFACSでソートし、色々な、強く一時的な物理的・科学的刺激に晒した。
              ↓
・これらのCD45+細胞を白血病阻害因子(LIF)とB27を添加したDMEM/F12 培地(LIF+B27培地)に懸濁してから数日間後のOct4プロモーターの活性化を調べた。

・2つの理由から、低pHによる環境変動に特に興味をもった。
1.低pH処理がOct4の誘導に最も効果的であった。
2.古典的な実験的発生学では、「亜致死性」の条件下で一時的な低pH処理をすると、組織の分化状態を変えられる。pH6.0未満のクエン酸ベースの酸性培地に浸すことで、サラマンダーの動物極から偶発的に神経転換が起きることが以前から示されていた。

・刺激無しでは、LIF+B27培地での培養期間に関係なく、CD45でソートしたOct4-GFPを発現する細胞は無かった。

・対照的に、低pH培地で30分間処理(25分間インキュベートして5分間遠心。最も効果的なのはpH5.4〜5.8)すると、かなりの数の球状の集合体がLIF+B27培地に現れ、培養7日後にはOct4-GFPを発現した。Fig. 1a, ED. 1a / Fig. 1b

・新生仔の脾臓細胞で行った場合、全てのケースでかなりの数のGFP+細胞が現れた。(n=30)

・CD45+細胞からのOct4-GFP+細胞の出現は、フローサイトメトリーでも観察された。
Fig. 1c, ED. 1b, c

・CD45+細胞をCD90 (T細胞)・CD19 (B細胞)・CD34(造血前駆細胞)に対して陽性と陰性の集団にフラクション分けして、それらに低pH処理
             ↓
・CD34+の造血前駆細胞を除くT細胞とB細胞を含むフラクションの細胞は、CD45+細胞にフラクションされなかった細胞と比べて、Oct4-GFP+細胞を効率的に産生した。(7日後に生存している細胞の25〜50%)CD34+細胞は、Oct4-GFP+細胞をほとんど産生しなかった。(<2%)ED. 1d

・多能性細胞の維持培地の中では、LIF+B27培地が最もOct4-GFP+細胞の出現が高く、胚盤葉上層由来幹細胞(EpiSC)培地では出現しなかった。ED. 1e

・培養してから0〜2日でのLIFの存在の有無は7日後のOct4-GFP+細胞の産生にさほど影響しないが、4〜7日でのLIFの添加では不十分であることから、LIFへの依存は培養開始から2〜4日にスタートすることを示している。ED. 1f

・1日後での生存細胞のほとんどは、まだCD45+かつOct4-GFP−であった。
              ↓
・3日後には、細胞の総数が1/3から1/2に減り、比較的弱いシグナル強度ではあるが、かなりの生存細胞がOct4-GFP+となった。Fig. 1d, ED. 1g, h / Fig. 1d
              ↓
・7日後には、Oct4-GFP−CD45−細胞とは異なる、かなりの数のOct4-GFP+CD45−細胞(生存細胞の1/2〜2/3)が構成された。Fig. 1c, Fig. 1d

・同様に培養した低pH処理をしないCD45+ 細胞には、Oct4-GFP+CD45−の集団ははっきりと現れなかった。Fig. 1c

・未処理の細胞には観察されないが、低pH処理したCD45+ 細胞は、最初の数日間に次第にGFPシグナルが出てくる。その一方、Oct4-GFPを発現した細胞のCD45の免疫活性は次第に減っていった。Fig. 1e, ED. 2a / Fig. 1f, ED. 2b
              ↓
・5日後までに、Oct4-GFP+細胞は互いに付着し、癒着による集団を形成した。これらのGFP+集団は動きが活発で、動いている時に細胞突起を出すことが多い。

・Oct4-GFP+細胞は、細胞質が少なくてサイズが小さく、元のCD45+リンパ球と比べて明瞭な核構造を示した。Fig. 1g

・7日後のOct4-GFP+細胞は、一般的に小さいと見なされている未処理のCD45+細胞やES細胞よりも小さかった。Fig. 1g, h, ED. 2c

・低pH処理CD45+細胞の直径は、Oct4-GFPを発現する前の最初の2日間で減少しはじめた。Fig. 1f

・GFP発現の開始には細胞分裂を伴わなかったが、これはストレスを与えた後のOct4-GFP+細胞で5-ethynyl-2'-deoxyuridine (EdU)の取り込みが観察されない事と一致している。
 ED. 2d

※EdUはDNAの構成要素であるdT(deoxythymidine)のミミックで、核内のDNAに取り込まれる
・増殖能力がかなり欠けていることは、CD45−の細胞に極わずかなCD45+ 細胞がコンタミしていて、それが低pH処理して最初の数日で急速に増えて相当なOct4-GFP+集団を形成したのではないかという可能性への反証になっている。

・Tcrb (T細胞受容体遺伝子)のゲノム再構成が、FACS精製したCD45+ 細胞とCD90+CD45+T細胞由来のOct4-GFP+細胞で観察されたことは、少なくとも系統に関係付けられたT細胞の寄与があることを示している。Fig. 1i, ED. 2e-g               ↓
※Oct4-GFP+細胞は、単なるストレス耐性細胞が選別されたのではなく、初期化によって低pH処理したCD45+ 造血細胞から新しく作られたと結論する。

Low-pH-induced Oct4+cells have pluripotency

・7日後に、Oct4-GFP+の球状塊は多能性に関するマーカータンパク質(Oct4, SSEA1, Nanog, E-cadherin)とマーカー遺伝子(Oct4, Nanog, Sox2, Ecat1 (別名Khdc3), Esg1 (Dppa5a), Dax1 (Nrob1) and Rex1 (Zfp42))をES細胞に見られるのに匹敵する程度で発現した。Fig. 2a / Fig. 2b , ED. 3a

・これらの多能性マーカー遺伝子の穏やかなレベルの発現が3日後に観察された。
 Fig. 2b, ED. 3b
・7日後では見られないが、3日後のOct4-GFP+細胞がFlk1 (別名Kdr) やTal1の様な初期の造血性マーカー遺伝子を発現した事は、3日後のOct4-GFP+細胞の集団レベルでのそれらの発現パターンからすると、まだ転換のダイナミックな過程の中にあることを示している。ED. 3c
・7日後では、CD45+ 細胞とES細胞とは異なり、低pH処理で誘導したOct4-GFP+細胞ではOct4 と Nanogのプロモーター領域が広範囲で脱メチル化されていたが、これは多能性についてこれらの鍵となる遺伝子でエピジェネティックな再プログラム化がかなり進行していることを示している。Fig. 2c

・生体外での分化試験では、内臓の内胚葉様上皮と同様に、低pH処理で誘導したOct4-GFP+細胞は3つの胚葉の誘導体を生じた。Fig. 2d, ED. 3d                ↓
・マウスに移植すると、低pH処理で誘導したOct4-GFP+細胞の集団は奇形腫を形成した(40% n=20)が、Oct4-GFP+細胞が持続的に含まれる奇形癌腫は生じなかった。(n=50)
Fig. 2e, ED. 4a-c
・様々なOct4-GFPのシグナルレベルのものがあるので、7日後にFACSにより強GFP細胞(主要集団)と弱GFP細胞(少数集団)に分けてマウスに入れると、強GFP細胞は奇形腫を形成した。ED. 4d

・定量的PCR(qPCTR)解析で、強GFP集団は多能性マーカー遺伝子を発現するが初期の系統特異的なマーカー遺伝子を発現していなかった。一方、弱GFP集団はいくつかの初期系統マーカー遺伝子をかなり発現していたが、Nanogと Rex1は発現していなかった。
ED. 4e
                ↓
・これらの観察結果は、3つの胚葉の誘導体は、弱GFP集団からではなく、多能性マーカー遺伝子を発現している強GFP集団から産生されたことを示している。

※体細胞の分化状態は、外部からの強い刺激を与えることで多能性の状態に変えられる。
こうした状態の変化を「刺激誘導多能性獲得」(STAP)、その結果得られた細胞をSTAP細胞と呼ぶことにする。

・確立条件下では、STAP細胞はめったに増殖しない。ED. 2d and 5a, b
・STAP細胞の比較ゲノムハイブリダイゼーションは、染色体数には大きな変化はないことを示した。ED. 5c
STAP cells compared to ES cells

・STAP細胞は、マウスのES細胞とは違い、LIF添加培地での自己複製能力が限られており、分離によるアポトーシスを抑えるROCK阻害剤のY-27632が入っていても、分離培養するとコロニーを形成する効率が悪い。Fig. 2f, g / Fig. 2h
・部分的な分離後に高密度培養しても、STAP細胞の数は2回の継代後にはかなり減り始めた。Fig. 2i

・STAP細胞では、ESマーカータンパク質であるEsrrβの発現が低い。ED. 5d, e

・メスのCD+細胞とEpiSCsと異なり、一般的にメスのES細胞はX染色体の不活性化を示さずH3K27me3高密度点(不活性X染色体の指標)を持たない。

・対照的に、強Oct4-GFP発現のメスのSTAP細胞の40%にH3K27me3高密度点が見られた。ED. 5f, g, h

・STAP細胞は、EpiSCsとも似ておらず、Klf4ポジティブで上皮密着結合マーカーのclaudin 7 とZO-1がネガティブであった。
ED. 5d, e

STAP cells from other tissue sources

生後1週間のOct4-gfpマウスの脳・皮膚・筋肉・脂肪・骨髄・肺・肝臓の組織から集めた体細胞で同様な転換実験を行った。
             ↓
転換効率は様々であったが、FACSでCD45ネガティブにソートされた脂肪の間充織細胞や新生仔の心臓細胞など、実験した全ての組織の培養で低pH刺激で産生されたOct4-GFP+細胞が観察された。Nkx2-5や心臓のアクチンなどの遺伝子の発現は抑えられていた。 
Fig. 3a, ED. 6a-c / Fig. 3a-c / Fig. 3d-g, ED. 6d
Chimaera formation and germline transmission in mice
・GFPを常発現する新生仔マウス(cag-gfp導入遺伝子を持つC57BL/6系統:B6GFP)のCD45+細胞から産生したSTAP細胞の胚盤胞注入試験を行った。
              ↓
・STAP細胞集団をひとまとめにして、マイクロナイフを使って手作業で小片に切り注入した。Fig. 4a              ↓
・GFP発現の高いものから中程度の細胞がキメラ胚に見られた。キメラマウスは高頻度で生まれ、全て正常に発生した。Fig. 4b, ED. 7a / Fig. 4c, ED. 7b              ↓
・CD45+細胞由来のSTAP細胞の寄与が全ての組織に対して調べられた。Fig. 4d
              ↓
・STAP細胞から作成された子孫がキメラマウスから生まれた。これは、遺伝的・後成的な正常さと同様に多能性の厳しい判定基準である生殖細胞系伝達を示している。
Fig. 4e, ED. 7c

・発生能力の最も厳格な試験である四倍体胚補完法で、CD45+細胞由来のSTAP細胞(B6GFP×129/SvまたはDBA/2から)は、胎生期(E)10.5で全てがGFP+の胎児を作り出した。これは、STAP細胞単独で全ての胚構造を形成できることを示している。
Fig. 4f, ED. 7d
               ↓
・STAP細胞は生体内で生殖細胞系と同様に全ての体細胞系に分化する発育能を持っている。

※四倍体胚補完法(tetraploid complementation assay):テトラプロイド(4倍体)の胚は、胚体外(胎盤など)には寄与できるが、胚体(胎仔)に寄与できない。そこで、多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)と4倍体胚のキメラを作製することで100%多能性幹細胞細胞由来の胎仔を作り出すことができる。
Expandable pluripotent cell lines from STAP cells

・STAP細胞は、確立するのに使った条件下では自己複製能力に限界がある。
Fig. 2g, ED.2e, 5a
・STAP細胞は、胎児の環境ではSTAP細胞集団の小さな断片から胎児全てに成長することができる。Fig. 4f
               ↓
・STAP細胞が、特定の条件下でインビトロで増殖可能な多能性細胞を作る能力があるか調べた。通常のLIF+FBS含有培地や2i培地(大半のSTAP細胞は2i培地で7日内に死ぬ)では効率的に継代して維持できない。ED. 8a
               ↓
・ES細胞のクローン増殖を促進することが知られている副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)+Lif含有培地(ACTH培地)が、STAP細胞コロニーの増殖を補助した。MEFフィーダーやゼラチン上にこの培地で培養すると、一部のSTAP細胞集団が成長を開始した(96ウェルプレートで1ウェルにつき1つの細胞塊から10〜20%、12細胞塊だと70%より高頻度)。Fig. 5a

※フィーダー細胞:増殖や分化を起こさせようとする目的の細胞の培養条件を整えるために用いる,補助役を果たす他の細胞種。通常フィーダー細胞は増殖しないようにあらかじめガンマ線照射や抗生物質によって処理しておく。MEF feeder:胚線維芽細胞(MEF)をマイトマイシンC 等で処理することにより有糸分裂的に不活化して使用。

               ↓
・成長したコロニーは、見た目がマウスES細胞と似ており、Oct4-GFPの発現が高かった。
               ↓
・ACTH培地で7日間培養した後、成長した細胞の集団は親STAP細胞とは似ておらず、単独の細胞として培養できた。Fig. 5a, Fig. 5b
               ↓
少なくとも培養120日まで2i培地で育ち、指数的に増殖した(染色体の異常はほとんど無かった)。ED. 8a / Fig. 5c, ED. 8b, c               ↓
・STAP細胞から作成した増殖能がある細胞をSTAP幹細胞と名付ける。

STAP幹細胞は、多能性細胞のタンパク質とRNAのマーカーを発現していた。Oct4とNanogの場所では低いDNAメチル化が示され、ES細胞とよく似た核構造を持っていた(電子密度の少ない領域はヘテロクロマチンに対応する)。Fig. 5d, e / ED. 8d / ED. 8e
               ↓
分化培養では、STAP幹細胞は生体外で、鼓動する心筋細胞を含む外胚葉・中胚葉・内胚葉の誘導体を産生し、生体内で奇形腫を形成した(奇形腫瘍腫の形成はなし n=40)。
Fig. 5f-h, ED. 8f, g / Fig.5i, ED. 8h
               ↓
・胚盤胞に注入後、STAP幹細胞は効率的にキメラマウスを作り、生殖細胞伝達が見られた。
Fig. 5j / ED. 8i ↓
・四倍体胚補完法試験でも、注入したSTAP幹細胞は成体に成長できるマウスを作ることができ、子孫も生まれた(8つの独立した系統全て)。Fig. 5k, l, ED. 8j
↓
・増殖能力に加えて、STAP幹細胞と親STAP細胞には2つの違いがある。1つはSTAP細胞では検出できないES細胞マーカータンパク質のEsrrβの発現がはっきりとあること。もう1つは、メスのSTAP細胞ではかなり見られるH3K27me3集中点の存在が、STAP幹細胞では見られないこと。ED. 5d, e / Fig. 5e / ED. 5f, 8k               ↓
・STAP幹細胞は、増殖能力のある細胞系統を作れること等、ES細胞と似ている。

Discussion

・この論文は、体細胞が潜在的に驚くべき柔軟性を持っていることを明かしている。通常の環境では経験することのない一時的な強い刺激に晒されることで、多能性細胞になれるというダイナミックな柔軟性が明らかになった。

・低pH処理は、1947年にHoltfreterによる「自己神経科」実験でも用いられた。これは、生体外で、サンショウウオの動物極を酸性培地に晒すとSpemannのオーガナイザーシグナルが無くても組織自律的な神経転換が起きるというものである。メカニズムは分かっていないが、Holtfreterは強い刺激が動物極の細胞の運命転換を抑制している何らかの内因的な阻害メカニズムを解放すると推測した。彼の言葉でいうと「亜致死性の細胞溶解」(細胞の阻害状態を解く刺激誘起を意味する)を通過すること。

・Holtfreterの研究や他の異なった方向での運命転換−直立歩行の分化と核のリプログラミング−の現象は、特に亜致死性の刺激誘発により細胞の固定 (転換抵抗) 的な状態から解放する幾つかの共通した面があるかもしれない。

・残された疑問は、細胞のリプログラミングが低pH処理で特別に初期化されたのか、物理的ダメージ・細胞膜の穿孔処理・浸透圧ショック・成長因子の欠如・熱ショック・高Ca2+曝露などの幾つかの他のタイプの亜致死性ストレスでも起きるのかということである。

・少なくとも、これらのストレスの幾つか、特にきつい摩砕とストレプトリシンOによる細胞膜の穿孔処理による物理的ダメージは、CD45+細胞からOct4-GFP+の産生を誘導した。
ED. 9a

・これらの知見は、ある共通した調節モジュールがこれらの遠い関係の亜致死性ストレスの下流にあり、体細胞の分化を強固に固定した後成的な状態から解放して後成的な制御に大局的な変化をもたらす鍵として働いている可能性を浮かび上がらせた。言い換えると、亜致死性の刺激で活性化する未知の細胞機能が、体細胞を現在の拘束から解放して未分化細胞の状態に戻しているかもしれない。

・拘束された体細胞での徹底的なリプログラミングという予想外の大きな能力は、様々な重要な問いを浮かび上がらせる。例えば、どうして、または何のために、体細胞は亜致死性刺激の後だけに現れるリプログラミングする自己運用能力を潜在的に持っているのか。どうして、このリプログラミングメカニズムが通常は抑制されているのか。さらに、どうして強い環境ストレスを受ける可能性のあるインビボの組織で奇形腫(または多能性細胞腫瘤)の形成が普通に見られないのか。

・我々の予備的な研究では、逆流性食道炎が局所的にOct4-GFPの中程度の発現を誘導するが、内在性のNanogはマウスの食道粘膜に発現していない。今後の研究についての興味深い仮説は、最初のOct4活性化からリプログラミングの過程がインビボではある阻害メカニズムによって抑制されているというものである。ED. 9b

・なぜ、どうして、この自己運用リプログラミングが多能性状態に向かうのかというのは基本的に重要であり、STAPリプログラミングは多能性マーカー遺伝子がかなり発現するまでにたった数日間という極めて短期間であり、遺伝子導入や化学的な誘導によるiPS細胞転換とは異なっている。我々の結果は、多細胞生物での多様な細胞状態の生物学的な意味に新しい光を投げかけるものである。

METHODS SUMMARY

組織採集と低pH曝露

生後1週間のOct4-gfp C57BL/6マウスから脾臓を切除
    ↓
ハサミで細かく切り、パスツールピペットで機械的に分離
    ↓
分離した細胞を集め、DMEM培地に再懸濁し、同量のlympholyte (Cedarlane)を加える
    ↓
1,000gで20分遠心
    ↓
CD45ポジティブ細胞をFACS Aria (BD Biosciences)で選別
    ↓
低pHのHBSS溶液(pH5.7、37 ℃で25分間)
    ↓
5分間遠心して上清を捨てる
    ↓
1,000U LIF (Sigma) とB27 (Invitrogen)を添加したDMEM/F12培地の入った非接着培養プレートに蒔く

Oct4-GFP+細胞(多能性関連タンパク質と遺伝子マーカーの発現と、3胚葉誘導体への分化能を持つ)は、若いマウス(例えば生後6週間)のリンパ球からも同じ培養条件下で作れるが、それらの培養中での割合は、新生仔のリンパ球(生後1週間かそこらから分離)と比べると数倍から10倍少ない。

ライブイメージングは、CO2インキュベーターを特別に組み込んだ共焦点顕微鏡を用いて行い、生細胞のCD45免疫活性は述べた様にして調べた。

生体内と生体外での分化試験

[生体内]
STAP細胞をポリグルコール酸繊維から成る不織布3×3×1 mmのシートに蒔く
    ↓
生後4週間のNOD/SCIDマウスの背側の皮下に移植

[生体外]
STAP細胞とSTAP幹細胞を培養7日後に集める
    ↓
神経への分化:SDIAまたはr SFEBq培養
中胚葉と内胚葉への分化:胚葉体培養

METHODS
動物試験
動物を含む研究は、Harvard Medical School/Brigham・Women’s Hospital Committee on Animal Care・Institutional Committee of Laboratory Animal Experimentation of the RIKEN Center for Developmental Biologyによって承認されているプロトコールに従った。

組織採集と低pH曝露

[CD45+造血細胞の分離]
生後1週間のOct4-gfp C57BL/6マウス(特に明記しない限り)から脾臓を切除
    ↓
ハサミで細かく切り、パスツールピペットで機械的に分離
    ↓
分離した細胞をPBSに再懸濁し、cell strainer (BD Biosciences)を通して濾す
    ↓
1,000 r.p.m. で5分間遠心
    ↓
集めた細胞をDMEM培地に再懸濁
    ↓
同量のlympholyte (Cedarlane)を加える
    ↓
1,000gで20分遠心
    ↓
リンパ球層を取り出し、CD45 antibody (ab25603, Abcam)で染色
    ↓
CD45ポジティブ細胞をFACS Aria (BD Biosciences)で選別
    ↓
1×10^6個CD45ポジティブ細胞を500μlの低pHのHBSS溶液(HClでpH5.7に調整)で37 ℃・25分間処理
    ↓
室温にて1,000 r.p.m.で5分間遠心して上清(低pH溶液)を捨てる
    ↓
沈殿した細胞を1,000U LIF (Sigma) と2% B27 (Invitrogen)を添加したDMEM/F12培地で再懸濁し、この培地の入った非接着培養プレートに蒔く(一般的に1×10^5 細胞/ml)

[細胞塊の形成]
・Oct4-GFP+細胞の割合よりも、植えた細胞の密度の方に影響を受けた。
・生存細胞の数は、提供したマウスの年齢の影響を受け、大人のマウスの脾臓を用いた処理条件では低くなった。
・培養7日後のOct4-GFP+ STAP細胞塊の産生には、培養2日〜7日の間にLIFの添加が必須 ED. 1f
・LIFが無くても、低pH処理したCD45+細胞を培養して2〜5日後の間にOct4-GFP+細胞(そのほとんどは弱いシグナル)が一時的に現れるが、その後消える。LIFに依存しない初期の段階があるが、それに続く段階にはLIF依存的であることを示している。

キメラマウスの作成と解析

[STAP細胞を使った2倍体と4倍体キメラの作成]
・2倍体の胚:ICR 系統のメスから得る
・4倍体の胚:2細胞胚を電気融合して作成

提供サンプルのトリプシン処理はキメラ化が低くなることが判明。

STAP球状コロニーを顕微鏡下でマイクロナイフを使って小さく切る
    ↓
STAP細胞の小さな塊を、大きなピペットで4.5日の胚盤胞に注入
    ↓
翌日、キメラ胚盤胞を2.5日の偽妊娠させたメスに移植

・Oct4-gfp レポーターではなくCD45+細胞からのSTAP細胞を使った実験では、STAP細胞塊はその特徴的な塊の形態で判別した。(とても小さい細胞から成り、凝集に強い圧縮ははない)

STAP転換条件(低pH)をCD45+リンパ球に適用すると、7日後の塊の多くは大きくなり、数十個以上の小さな細胞が含まれており、Oct4ポジティプ(発現レベルは様々)になる
    ↓
特徴的な塊がよく形成(大きい)されたものだけをこのタイプの実験に使用
    ↓
マイクロナイフで切断し、ガラス針注入に適当な大きさにして提供細胞塊を調整

[注入した細胞の寄与の推定]
GFPを常発現するマウス(cag-gfp 導入遺伝子を持つC57BL/6系統:雑種強勢の観点からC57BL/6と129/Svまたは DBA/2のF1)のCD45+細胞から作成したSTAP細胞を使用
    ↓
新生仔の脾臓から得られるCD45+細胞数が少なかったので、STAP細胞転換にオスとメスのマウスの脾臓細胞を混ぜた

・生殖系列伝達をより効率的にするため、いくつかの実験ではキメラを交雑

[STAP幹細胞を使った2倍体と4倍体キメラの作成]
・2倍体の胚:ICR 系統のメスから得る
・4倍体の胚:2細胞胚を電気融合して作成

STAP幹細胞を1つ1つの細胞に分離
    ↓
4.5日の胚盤胞に注入

・STAP細胞とSTAP幹細胞のキメラを調べたが、そのキメラや子孫には腫瘍化する傾向は見られなかった。

生体内分化試験
[STAP細胞]
1×10^7 個のSTAP細胞をポリグルコール酸繊維から成る不織布のシート(3×3×1 mm:穴径は200 μm)に蒔く
    ↓
DMEM+10% FBS培地で24時間培養
    ↓
生後4週間のマウスの背側腹部の皮下に移植
    ↓
局所的に密集した状態に保つことで、ゆっくりしたSTAP細胞の成長から腫瘍の形成を補助する為、ポリグルコール酸繊維で作られた人工的な足場と一緒にSTAP細胞を移植
    ↓
材料の人工的な性質により、同質遺伝的なマウスでもこの足場により移植後に炎症を起こすので、それを回避するためにNOD/SCIDマウスを宿主として使用

[STAP幹細胞]
STAP幹細胞を1つ1つの細胞に分離
    ↓
1×10^7個を含む細胞懸濁液を精巣に注入
    ↓
6週間後、移植物を組織化学的な技術により解析

[観察方法]
移植物を10%ホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋して4μmの厚みの切片にする
    ↓
・切片をヘマトキシリン・エオシン染色
・内胚葉組織:抗α-fetoprotein(マウスモノクローナル抗体; MAB1368, R&D Systems)
・外胚葉組織:抗 -βIII tubulin (マウスモノクローナル抗体; G7121, Promega)
・中胚葉組織:抗 -α-smooth muscle actin (ウサギポリクローナル抗体; DAKO)
・ネガティブコントロール:一次抗体を同じアイソタイプのIgG抗体にする

他の外部刺激の曝露によるSTAP

[機械的なストレス]
パスツールピペットを加熱して伸ばし、内径約50μmの細いキャピラリーにする
  ↓
適当な長さに折る
  ↓
成熟した体細胞をこれらのピペットを通して20分間繰り返して摩砕する
  ↓
7日間培養

[熱ショック]
細胞を42℃で20分間熱を与える
  ↓
7日間培養

[栄養欠乏]
細胞を基本培地で3週間培養

[高Ca2+濃度]
2mM CaCl2を含む培地で7日間培養

[細胞膜に穴を開ける]
細胞を230 ng /mlの streptolysine O(SLO) (S5265, Sigma)で2時間処理
  ↓
7日間培養

各処理の後、Oct4-GFPポジティブ細胞の比率をFACSで解析

Bisulphiteシーケンス

STAP塊中のGFPポジティブ細胞をFACS Ariaで集める
     ↓
ゲノムDNAをSTAP細胞から抽出
     ↓
バイサルファイト処理をCpGenome DNA modification kit (Chemicon, http://www.chemicon.com) を用いて行う
     ↓
得られた修飾DNAを2つのフォワード(F)プライマーと1つのリバースプライマーを使いnested PCRで増幅。PCRはTaKaKa Ex Taq Hot Start Version (RR030A)を用いる
[Oct4]
F1:5'-GTTGTTTTGTTTTGGTTTTGGATA T-3'
F2:5'-ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA-3'
R: 5'-CCACCCTCT AACCTTAACCTCTAAC-3'
[Nanog]
F1:5'-GAGGATGTTTTTTAAGTTTTTTTT-3
F2:5'-ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA-3'
R: 5'-CCACCCTCT AACCTTAACCTCTAAC-3'
     ↓
DNAシーケンスはM13 primerを用いてGenome Resource and Analysis Unit, RIKEN CDBで行う

免疫組織化学的検査

培養した細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定
    ↓
1% BSA solution でブロッキングする前に、0.1% Triton X-100/PBSで透明化
    ↓
次の一次抗体と一晩インキュベートする
anti-Oct4 (Santa Cruz Biotechnology; C-10)
anti-Nanog (eBioscience; MLC-51)
anti-SSEA-1 (Millipore; MC480)
anti-E-cadherin (Abcam)
anti-ZO-1 (Santa Cruz Biotechnology; c1607)
anti-claudin7 (Abcam)
anti-Klf4 (R&DSystems)
anti-Esrrb (R&D Systems)
anti-H3K27me3 (Millipore)
anti-BrdU (BD Bioscience)
anti-Ki67 (BDPharmingen)
    ↓
次の二次抗体とインキュベート
Alexa-488 またはAlexa -594を結合した
goat anti-mouse・goat anti-rabbit (Invitrogen)
    ↓
細胞核はDAPIで可視化
    ↓
スライドにSlowFade Gold antifade reagent (Invitrogen)を加えて取り付ける

蛍光活性化細胞の分離とフローサイトメトリー

細胞は標準的なプロトコールに従って準備し、FACSの前に氷上で0.1% BSA/PBSに懸濁
      ↓
死細胞を除くのにPropidiumiodide (BD Biosciences)を用いる
      ↓
特異性を確保するため、ネガティブコントロールとして、一次抗体の代わりに同じアイソタイプのIgGネガティブコントロールを使う
      ↓
細胞をBD FACS Aria SORPで分離
      ↓
BD LSRII with BD FACS Diva Software (BD Biosciences)で解析

造血性フラクション分離には、T細胞マーカー(anti-CD90; eBioscience)と造血前駆細胞マーカー (anti-CD34; Abcam)を用いる

RNA調整とRT-PCR解析
RNAはRNeasy Micro kit (Qiagen)で分離
     ↓
逆転写をSuper Script III first strand synthesis kit (Invitrogen)で行う
     ↓
Power SYBR Green Mix (Roche Diagnostics)を使用し、Lightcycler-II Instrument (Roche Diagnostics)で増幅

・各遺伝子のプライマーセットは、Supplementary Table 1にリスト

生体外分化試験
[中胚葉分化試験]
STAP細胞を7日後に集める
    ↓
Oct4-GFPポジティブ細胞をセルソーターで分離
    ↓
20% FBSを加えたDMEM培地で培養。3日毎に培地を交換
    ↓
7〜14日後、筋細胞を抗α-smooth muscle actin抗体 (DAKO)で染色

[神経系統分化試験]
STAP細胞を7日後に集める
    ↓
SDIAまたは SFEBq培養
・SDIA培養:集めたSTAP細胞塊をPA6支持細胞の上に蒔く
・SFEBq培養:STAP細胞塊を96ウェルプレートに蒔き(ウェル毎に1つ;non-cell-adhesive 96-well plate, PrimeSurface V-bottom, SumitomoBakelite)、懸濁液を培養

[内胚葉分化試験]
STAP細胞を7日後に集める
    ↓
96ウェルプレートで懸濁液を誘導物質と培養

TCR-β鎖遺伝子再編成試験
ゲノムDNAをSTAP細胞と、CD45+細胞由来のSTAP細胞から作ったキメラマウスの尾の先端から抽出
    ↓
DNA50ngを使い、次のプライマーを用いて(D)J 再編成領域をPCR
Dβ2:5'-GCACCTGTGGGGAAGAAACT-3'
Jβ2.6:5'-TGAGAGCTGTCTCCTACTATCGATT-3'
    ↓
PCR産物を1.6% agaroseでTris-acetate-EDTA bufferでゲル電気泳動し、ethidium bromideで染色
    ↓
STAP 細胞からのPCRバンドをシーケンスして解析
(D)J 再編成により、再編成したゲノム断片を同定

EdU取り込み試験とアポトーシス解析
[EdU取り込み試験]
Click-iT EdU Flow cytometry assay kit (Invitrogen)のプロトコールに従って行う
STAP細胞培養の様々な段階(0–2æ—¥, 2–7æ—¥, 7–14æ—¥)でEdUを培地に添加
(最終濃度:10 μM)
    ↓
EdUの取り込みをFACSで解析

[アポトーシス解析]
Annexin-V (Biovision)とpropidium iodideを用いてフローサイトメトリーで行う

14日後でのFACSによるAnnexin-V解析により、大半のOct4-GFP+細胞がこのアポトーシスマーカー陽性であることが示される。この後、生細胞数が減少する

軟寒天試験
分離したSTAP細胞(Oct4-GFP強または弱)とコントロールのマウスES細胞(96ウェルプレート:1,000 細胞/ウェル)をLIF-B27軟寒天培地(0.4%アガロース)に蒔く
    ↓
培養7日後、細胞を分離し、足場非依存的成長をcytoselect 96-well cell transformation assay kit (Cell Biolabs)を用いて蛍光計測により定量

比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)アレイ解析

ゲノムDNAをSTAP (オス) とCD45陽性細胞 (オス)からGene JET Genomic DNA purification kit (Thermo Scientific)を用いて抽出
    ↓
STAP由来の染色体の正常性は、CGH array (Agilent)を用いて別の実験で染色体の正常性が確かめられているCD45陽性細胞と比較
    ↓
CGHアレイとデータ解析はTAKARA Bioで実施

電子顕微鏡
分離した細胞を、0.1M cacodylate buffer (pH 7.2) 中で2.5%グルタルアルデヒドと2%ホルムアルデヒドで固定
    ↓
薄片を作り透過電子顕微鏡で観察

生細胞イメージング

全ての生細胞イメージングは、LCV110-CSUW1 (Olympus)で行う
   ↓
CD45抗体染色は、低pHで処理したCD45+細胞を20 ng/mlの蛍光ラベルCD45抗体(eBioscience)を含む培地に蒔いて行う

RNAシーケンスとChIPシーケンス解析

[RNAシーケンス解析]
全RNAをRNasy mini kit (Qiagen)を用いて細胞から抽出
     ↓
RNA-seqライブラリは、TruSeq RNA Sample Prep kit (Illumina) のブロトコールに従い1μg の全RNAから調整
     ↓
Illumina Hi-Seq1500で大規模シークエンシング
     ↓
様々な細胞タイプの集団樹形図を包括的な発現プロファイル(log2 FPKM of all transcripts; FPKM, fragments per kilobase of transcript per million mapped reads)の階層クラスタリングから得る
     ↓
完全連結法を1−r (r=プロファイル間のピアソン相関)に適用したものを樹形図作成に用いる
     ↓
パーセント単位で統計的に信頼できるスコアを得るのに、ブートストラップ再サンプリングの1000サイクルを行う(AUP valuesとも呼ばれる)

[ChIPシーケンス解析]
ChIP-seqライブラリーは20 ngのインプットDNA・1 ngのH3K4me3 ChIP DNAまたは 5 ngのH3K27me3 ChIP DNAsからKAPA Library Preparation kit (KAPA Biosystems)を用いて調整
     ↓
TruSeqアダプターはTruSeqユニバーサルオリゴヌクレオチドと各インデックスオリゴヌクレオチドのアニーリングによって室内で調整
5'-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3'
5'-GATCGGAAGAGCACACGTCTGAACTCCAGTCACXXXXXXATCTCGTATGCCGTCTTCTGCTTG-3 (Xはインデックスシーケンスを示す)
     ↓
クロマチン免疫沈降は、細胞を1%ホルムアルデヒドを含むPBS(-)で室温にて10分間固定
     ↓
グリシンを最終濃度0.25M添加し、固定停止
     ↓
氷温のPBS(-)で2回洗浄し、さらにLB1 (50mM HEPES-KOH pH7.5, 140mM NaCl, 1mM EDTA, 10% glycerol, 0.5% NP-40, 0.25% Triton X-100)とLB2 (10mM Tris-HCl pH 8.0, 200mM NaCl, 1mM EDTA, 0.5mM EGTA)で洗浄する
     ↓
細胞をlysis buffer (50mM Tris-HCl pH8.0, 10mMEDTA,1%SDS)で懸濁
     ↓
細胞溶解液はCovaris S220を用いて小試験管中で超音波破砕して調整。duty cycle=5%, PIP=70, cycles per burst=200 の条件で20分処理
     ↓
細胞2×10^6個からの細胞溶解液をChIP dilution buffer (16.7mMTris-HCl pH8.0, 167mMNaCl, 1.2mMEDTA, 1.1%TritonX-100, 0.01% SDS)で希釈
     ↓
ChIPは、sheep 抗マウスIgG beads (Invitrogen) または、抗histone H3K4me3 抗体 (Wako, catalogue no. 307-34813)もしくは抗histoneH3K27me3 抗体(CST, catalogue no. 9733)を結合させた protein A beads (Invitrogen)を用いる
     ↓
ローテーターで4℃にて4〜6時間インキュベーション
     ↓
ビーズを低塩濃度洗浄バッファー (20mMTris HCl pH8.0, 150mM NaCl, 2mMEDTA, 1%Triton X-100, 0.1%SDS)で5回洗浄
     ↓
ビーズを好塩濃度洗浄バッファー(20mM Tris-HCl pH8.0, 500mM NaCl, 2mM EDTA, 1% Triton X-100, 0.1% SDS)で3回洗浄
     ↓
標的染色体を溶出バッファー(10mM Tris-HCl pH8.0, 300mM NaCl, 5mM EDTA, 1% SDS)で室温にて20分溶出
     ↓
クロスリンクを65℃で外す
     ↓
試料をRNaseAとプロテインキナーゼKで処理
     ↓
調整したDNA試料をフェノール・クロロホルム抽出で精製し、エタ沈後にTEバッファーで溶解

STAP幹細胞への転換培養
STAP細胞塊をMEF フィーダー細胞上にACTHを含む培地に移す(96ウェルプレートの各ウェルにつき、数〜12個の塊)
     ↓
4〜7日後、通常のトリプシン法を用いて最初の継代。20%FBSを含むES維持培地に蒔く
     ↓
密集する前に、隔日に1:10の比率で分けて継代を続ける

・異なる3つの遺伝バックグラウンドを持つマウスで、STAP細胞塊からSTAP幹細胞への転換を調べ、増殖能のデータを得た

C57BL/6 carrying Oct4-gfp (29 of 29)
129/Sv carrying Rosa26-gfp (2 of 2)
129/Sv×C57BL/6 carrying cag-gfp (12 of 16)

3つの遺伝バックグラウンドを持つ全ての系統でキメラ形成活性を示した。

[STAP幹細胞のクローン解析]
STAP幹細胞を手作業で細いガラスピペットで拾い、96ウェルプレートに各ウェルに1個ずつ植える
    ↓
クローンコロニーを20%FBSを含むES培地で培養
    ↓
  増殖させる

核型解析
Multicolor FISH解析で行う
   ↓
ほぼ密集するまで増やしたSTAP幹細胞をコルセミド(最終濃度0.270 μg /ml)を培地に入れて分裂中期で停止させる。5%CO2中で37℃ 2.5時間
   ↓
細胞をPBSで洗浄し、トリプシンとEDTA処理
   ↓
細胞培養液に再懸濁し、5分間 1,200 r.p.m 遠心
   ↓
沈殿物を3mlのPBSに入れ、あらかじめ温めて置いた0.0375 M KCl溶液を加える
   ↓
細胞を37℃で20分間インキュベートする
   ↓
沈殿物を3〜5 mlの0.0375M KC1溶液に再懸濁
   ↓
細胞を穏やかにピペッティングしてメタノール:酢酸=3:1v/vで固定
   ↓
細胞をスライドグラスに広げる前に固定を4回行う
   ↓
マウス染色体特異的着色プロープを7つの異なる蛍光色素を使って組み合わせてラベル
   ↓
前述の方法でハイブリダイズする
   ↓
各細胞系列につき、Sensys CCD(Photometrics)カメラを備えたLeica DM RXA RF8落射蛍光顕微鏡(Leica Mikrosysteme GmbH)を使って9〜15の中期スプレッドを得る
カメラと顕微鏡はLeica Q-FISH software (Leica Microsystems)でコントロール
   ↓
中期スプレッドは、Leica MCKソフトウェアに基づいて処理し、多色核型として表した。

[Qバンド解析]
Chromocentre (Japan)で行う
   ↓
キナクリンで染色後、各試料から20細胞をランダムに選び、染色体の正常性を解析

・5つの独立したSTAP幹細胞は10よりも多い継代後のQバンド解析で染色体の異常は示さなかった