2014年8月27日の理研のアクションプランに関する記者会見の記録

<研究不正再発防止をはじめとする高い規範の再生のためのアクションプラン>
8/27に行われた会見での、質疑応答での理研側の応答の内容について「記録」としてまとめました。
記事が長くなってしまうので記者側の質疑は省きました。(野依理事長、川合理事、坪井理事の敬称を略させて頂きました)
※私からの質疑とそれに関する補足を入れています。
応答の内容は冗長にならないように、全般に要約しています。

参考動画:FNN https://www.youtube.com/watch?v=a0e8wRkSHN8

野依:(当日配布された資料1. 『「社会のための理研」に向けて改革する』とほぼ同じ内容の話)
[資料1に無かった内容について]
・処分に関しては、論文の疑義に関する予備調査の開始に伴い、懲戒委員会の審査を一時停止している段階であるが、調査終了後すみやかに懲戒委員会の審査を再開する。
・役員に関しては、これらの処分を踏まえて適切に対応する。

坪井:(当日配布された資料『研究不正再発防止をはじめとする高い規範の再生のためのアクションプラン(概要)』に沿った説明)

坪井:アクションプランはこれから規定を整備して実行に移していく。それらが制定されて着実に実行されていくかという所で評価がなされていくと考える。第三者からなる運営改革モニタリング委員会の第1回を10月の前にでも開きたい。この委員会は随時開催されて、改革が実行されているか外部の視点から評価をして頂く。独立行政法人の通則法が改正されて、来年の4月から理研は国立研究開発法人になるが、評価の中に研究不正に関するものが盛り込まれる方向で検討されていると承知している。新しい制度の下では、主務大臣による研究不正に関する評価が明確に入ってくる。
規定の中身に魂を込めていき、それを実施していくことが必要だと思っている。

坪井:運営改革モニタリング委員会はこれから委員の選定をする。第三者の立場からきっちりと見て頂ける方にお願いをするのが基本と思っている。
委員の選定の結果によって評価される事になるし、固定メンバーではないと考えているので、アクションプランの中身も含めて常により良くなる様にする努力を続けていきたい。

野依:理事長としてアクションプランの陣頭指揮をとることが責務であると考えている。本日も下村文部科学大臣を尋ねたところ、その旨の指示を受けた。結果は大臣に評価をして頂く。役員についても今回の問題を防ぐことができなかったこと、また本件が社会的な問題となっていることについては、皆一定の責任を感じている。こうした中、私どもは公表したアクションプランを実施して理化学研究所の改革を推進して責務を果たしていくことが一番大事だと考えている。

野依:アクションプラン全部が実施されるべきで、実効性とスピードが大事だと思う。できるところから、誠実に懸命に実施していきたい。
理研改革の実現した後の自分自身の処分については、今申し上げることではないと考えている。

野依:私どもはこのアクションプランを確実に迅速に実施していくために、研究担当理事と研究コンプライアンス担当理事ともになければならない人材である。

野依:機能を今までよりもさらに強化する必要があると思う。研究担当の川合理事はきわめて有能でリーダーシップに長けた人材である。しかし広い分野に跨がる研究活動を統括・調整するには過剰負担になっている。従って、研究政策審議役を新設して、所内の見識有る研究者達を活用して補佐に当たらせることにする。理研は規則により理事が5名しかおらず、理事達はみな負担が過剰になっている。これを補佐して職務を円滑にするシステムが必要であり、今回そのことについても取り組んでいる。

野依:研究担当理事は一人しかいないが、理研は非常に広い分野をカバーしている。研究政策審議役等については生命科学に非常に強い人を充てたいと考えている。理研には科学者会議があり、そういう所から経験と見識のある者を登用して理事の補佐に充てたい。

野依:研究不正については、基礎科学研究の本質から個人に帰せられるものと思っているが、CDBの人事のマネージメント、あるいは倫理教育の不徹底があった。その問題はCDBだけに固有のものかとなると、同様なことが他の研究センターにおいても起こり得るので、この事案を契機として所全体の研究不正等のリスクを軽減する様に運営を改めていきたい。

野依:私は小保方さんに接触する機会がないので直接言葉をかけることはできないが、検証プロジェクトが進んでいるので、そこで得られる結果を粛々と受けて、それを元に判断していきたいと思っている。

川合:笹井先生の遺書については、私どもは遺書の中身は見ていないし、遺族のご意向もあり全く公開もしていないので、所として何が書かれていたのか全く把握していない。
小保方さんとは会って研究の進め方等についての意見交換はしているが、それ以上のものはない。

野依:岸委員会が提言した「解体」と言えると思う。改革委員会は長年固定化されてきた旧来の運営体制を無くす事、新しい組織では現時点での研究動向を踏まえて必要な研究分野を設定して研究体制を再構築することを求めている。岸委員会の提言には発生・再生科学というのは極めて重要な分野あるので続けるべしというものがある。そして250名に及ぶ任期制の研究員の雇用を維持することがある。「解体」をした後に何もなくなるのではなくて、発生・再生科学を中心とした新しい科学の潮流をどの様に作っていくかという事が大事だと思っている。創造とか革新に向かう科学研究というのは今までの延長線上にはない。常に新しい分野に挑戦し領域を拓いていかないとならない。それがどういう方向にあるかを定める上で、国際的に著名な研究者をヘッドとする委員会を作ってどういう分野をコンバインしていったらいいのか検討することをお願いしている。分野が決まれば、それを率いるリーダーが必要になる。これも世界に広く求め、委員会に選考を依頼して候補者を挙げてもらうことをお願いしている。

坪井:アクションプランのP21に、研究室主催者の採用、登用の新たな取り組みについて書いているが、最低限必要となる採用プロセス(手順、提出すべき書類、審査の基準、等)について文書として明確化するという対策を打ち出しているが、これは小保方氏の採用時のプロセスがCDBの中で文書化されておらず、研究倫理も含む審査の基準も明確化されていなかったということを踏まえた対策として、これを打ち出している。

坪井:本文のP16に目的指向型の4のプログラムに組み直すという点と、先端技術支援開発プログラムと一部の研究チームは移管するという事を明記している。そうした組織の再編により、結果的に半分程度の規模への縮小となる。
任期制の職員の雇用を確保した上での「解体」であり、他の研究センターへの移管をすることで理研全体としては雇用者数の削減にはならない。先端技術支援開発プログラムはCDBの枠から外れて新しい役割を担えるのではないかという期待も込めて移管をする。

坪井:理研のガバナンスの全体像については書いている。STAP問題はCDBで発生して、そこでの制度疲労という形での問題と考えて改革案を出している。他のセンターについて今直ちに見直しをするというまでの問題ではないと判断している。

川合:他のセンターに関しては、それぞれミッションを持った研究を遂行してもらっている。現時点で、そのアクティビティーを削ぐことは想定していない。
P16にCDBの改革的な出直しの具体的なプログラム名が書かれているが、これはCDBが中期計画で実施しなければいけないマストアイテムとしての研究である。現在その数が明記できない理由は、CDBの中でどのチームがどういう風に配置されるかというのがまだ検討している最中であるため。それぞれの研究者は4月に自分達の計画を立て開始しているので、それを調整した上で早急にどのチームがどのプログラムの中に配置され、どのチームが他センターに動くのかという事を具体的に決める。それからでないと数字は出せない。

坪井:内部通告の窓口を独立したもので作る事ついては、既に外部の弁護士に依頼してそうした窓口を設けていた。これを岸委員会に説明する機会がなかったので、無いと思われてしまった。

[片瀬の質疑]
P22の論文の信頼性を確保する仕組みの構築の中に、「研究不正や不適切行為の防止にかかる規程等の改善」として新たな取り組みがいくつか具体的に書かれているが、ここに書かれていない事で気になったものとして、最近、共著者の適正な選定が行われているかどうかという事が論文不正に関して問題となることが多くなっている。
例えば、著名な人を共著者に入れてアクセプトしやすくしてしまうとか、力のある人が共著者に名前を入れさせることで論文数の水増しをする事などが、共著者の責任を曖昧にしてしまうことにより論文不正の温床にもなっている事が指摘されている。
こうした、最近クローズアップされている問題を踏まえて、論文における貢献度に応じて共著者の適正な選定をする事を指針として盛り込まれる予定はあるか?

[この質疑の意図]
笹井さんが、論文の仕上げの段階で手伝ったという事だけで2つのSTAP論文の共著者となり、さらには(生データの確認もしていなかった状況で)そのうち1つの論文の責任著者となり、最終的にSTAP問題の責任者として矢面に立った事が悲劇の原因となったと思います。
そしてその元凶が、不適切な共著者の選定にあったと考えています。
(敢えて笹井さんのお名前を出しませんでしたが、川合理事らはこの質問の意図をご理解下さったと思っています)

川合:適切な質問だと思う。共著者をどうやって選ぶかというのは、論文の著者達の責任において確認されなければいけない大事な項目である。その点に関して、明確には書いていないがP23に新たな取り組みのところに「共同研究者はそれぞれの貢献を明確にした上で、研究成果を発表するにあたり、論文の内容を充分に検討、確認をしなければならない」という事が書かれており、ご指摘の通り、どういう貢献があるかを確認して共著者を選びなさいという事を指示している。そしてP24の研究発表時の承認手続きの明確化という所に改めて発表する時点でチェック項目を確認して論文全体を著者が責任をもって発表できるかという事を点検するチェックシートがあり、ここで個別の働きとそれぞれの人が責任をもって論文全体を確認していることを担保する項目を設定している。

[片瀬の質疑]
現行の理研の研究不正防止の規程には、研究不正として罰則対象になるのは所謂FFP(捏造・改竄・剽窃)の3つの行為のみになっている。共著者の適正な選定が行われる事を規程の方にも盛り込まれると、問題になった時に対処がしやすくなるのではないか。

川合:ご指摘の事はこれから規程を整備していくので、その中で反映していきたい。

[補足]
笹井さんの悲劇を繰り返さない為にも、ぜひ理研の「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」に共著者の適正な選定をする事について盛り込んで頂きたいと思います。罰則を伴う規程にこの項目が入ることで、安易に共著者となることに歯止めがかかり、著名な研究者を共著者に入れる事で不備のある論文がアクセプトされ易くなったり、論文に責任を持つのに不適切な者が共著者(特に責任著者)となるのを防止する効果が期待できます。(罰則の程度は、最悪とされるFFPよりは軽くてよいと思います)


坪井:STAPの特許については、STAP現象の検証結果を見ながら特許の判断をしていく。

野依:このアクションプランの精神は全てのセンターに共通する。中期計画に則って事業を推進しなければならないという箍がはまっている状況がある。それと科学イノベーションの方向として総合化しろというものがある。縦割り構造を壊して横串を刺し、融合連携するという事はなかなか難しい。私どもは機会を捉えてそういう横串を刺し、新しい領域を作っていく事を心がけている。CDBのサイズを半分くらいにする話で、残りをバラバラにしてどこかに吸収してもらうのではなく、例えばCDBの支援部分は他のセンターとも共通するが、チームの異動、人の異動を通じて全体的に有効な研究基盤・支援システムを作れば理研全体として良いのではないか。理研全体の活動の効率化というものにも活かしていきたい。

川合:理研は今の独立法人の枠組みでは、5年を1つのセットにした計画で進んでいる。各センターは10年毎に大きな見直しをしてきており、これからもしていく。今は中期計画の真ん中であり、現時点では見直しをする予定はないが、節目で運営も含めて大きな見直しをお願いしている。3年後に第3期の中期計画が終わるいくつかのセンターでは大きな見直しをする予定である。
第3期に移った時には、センターをいくつか融合させて機能的に大きなセンターにしてみたり、そういうトライアルをした。支援体制をより統合化することによって総合力を上げる施策であったり、別個に育ってきたセンターの技量を合わせることによって、新しい研究の方向性を見せることが可能であるとか、そういう新たな取り組みでより新しい研究を推進できる体制に変えていくという観点から行った。サイズの問題を超えた取り組みをこれまでやってきており、これからも真摯にやっていきたい。

野依:研究不正防止を実効あるものにするためには、責任者としてコンプライアンス本部長を今回設けようと思っている。コンプライアンスに関わるものは研究不正だけではなく研究費の不正などその他のいろんな不適切な行為がある。コンプライアンス担当の今の理事は現時点ではアクションプランの実行に全力で指揮をとって欲しいが、さらに幅広い専門を持った人達が要るのではないかと思う。私どもは研究に関する戦略には強いが、広い意味でのガバナンス、経営戦略に関しては経験が不十分である。科学技術と社会の結びつきが強くなるに従って、そういう事に造詣のある人達を登用していく必要がある。
アドバイザリーカウンシルを他の研究機関に先駆けて作っているが、社会の知恵をいろいろと活用させて頂く努力はしている。

川合:可能性の1つとして、コンプライアンス本部長に産学の方を登用することも考えている。

川合:新センター長の選定に関して、私どもの研究は国際的な標準で選ぶのが第一基準となる。国内外の研究者を含む委員会を組織しつつあり、そういう所からこれからの動向についてのご意見を賜り、研究の方向が定まればそれを率いる最適な方々を国際的に選んで頂くというプロセスを考えている。具体的な手順はまだオープンになっていないので、今ここで話はできないが、広く世界中から候補者を募る努力が始まっている。スカウトと公募の両方でやる。

坪井:利用予定をしている研究倫理のe-ラーニングはCITI Japanで、文部科学省もサポートしているプログラムであり、アメリカで開発されて世界中で一番有効なプログラムと言われている。これを既に導入して役職員が受けられる状態にしてある。その他にも管理職研修の中でも講義の内容などを充実させていく必要があると考えている。これらを受講しないものについては、実験室の立ち入りの禁止や研究活動の停止なども視野に入れていく。

野依:研究倫理とは何かということについて、一般的な道徳や道議とは違う。研究社会における職業的な規律・規範であり、英語で言うethical standard である。それから逸脱したものを研究不正という。これは学会が定めているものもあるし、学術誌の出版社がそれぞれ定めている場合もある。分野によっても随分違っている。ある分野では比較的許されるけれども、ある分野ではバツということがあると思う。倫理教育といった場合になかなか難しいのは、FFPはいけない、不適切なオーサーシップ、利益相反はダメだという様な一般的なこともあるが、分野によってそれぞれ違うという事があり、例えば物理分野と生物分野では違うという様なことがある。また研究社会と一般社会で随分と違うこともある。
一般社会ではコピペは比較的便利だからといろいろな所でやられているが、研究倫理では一発アウトになる。理化学研究所全体として研究倫理を教えるという事もあるし、それぞれの分野によって個別に教育しなければいけないこともある。従って、基礎研究における研究不正というのは個人に帰結されるものであるというのが世界的なスタンダードとなっている。

野依:このアクションプランを作るにあたって、事務方ばかりとやっていると締め付けばかりになる。果たしてこれが実効性があるかという事と、研究者達に受容されるがどうかという事のどちらも大事であり、アクションプランを作るのに主にシニア研究者達とも相談してきている。今朝、テレビで全所に向けてアクションプランを発表したが、それは限られた人しか来ていないので、明日、川合理事と坪井理事が広く説明することになっている。いずれにせよ、理研のための理研改革ではなく、社会のための理研改革であるという思いでやってきており、それをぜひ所内で共有して欲しい。コミュニケーションをしっかりとりたい。

川合:理化学研究所はキャンパスが多岐にわたっているが、全てのキャンパスでTV会議を通じて参加できるようにセットしている。一番関係の深い神戸のCDBに関しては、今日別の理事が出向いて説明をしている。繰り返し説明をして意見交換をして進めていきたい。

野依:11月から始まる中間的なセンターについて言及しているが、これから長期の方向については国際的な委員会に諮って決めていく。6月に提言を受けて、早急に対処するために一時的に定めたものである。

川合:CDBの研究組織改革で再編して構築する4つのプロジェクトとiPSによる網膜再生医療のプログラムの5つは中期計画の目標に照らして必ず実施しなければいけないものであり、それが残されている。これが将来像ではなく、ここから次に向かってさらに創造的かつ革新的な研究方向を決めていく作業が始まる。

野依:基礎と応用のバランスは考えなければいけないし、それぞれ拓かれていくべきところがあり、さらにイノベーションにも関わらないといけない。CDBの場合は神戸市、兵庫県や地方自治体とも連携していかなければならない。iPSに関しては京都大学とも協力していかにいとならない。様々な要素が絡まっている。それがポジティブに働く様な組織にしていくことが大事である。

川合:網膜再生医療プログラムがいずれ京都大学などに移行するという様なことは考えていない。理化学研究所としてその基礎的な所はずっと背負っていくべきと思っている。一方で、医療的な所は理研では実施できないので、これまで同様に先端医療センターのシステムと協同して進めていくことになる。より京都大学のiPS研究所との親密さを増しつつも、理研としてこの部分を完全に外に出すということは考えていない。

野依:私に協力してくれている5人の補佐は大変有能だと思っている。今回の事案が出たという事については反省しているが、皆さん非常に良くやっているという思いがある。

野依:研究不正の問題は個人の責任だと思っている。同時に、大変難しくなっている事は、世界の科学あるいは技術の研究が多彩な共同研究をしなければいけないという事。今回のNature論文も4機関15名の共著である。それぞれの観察事実がしっかりと検証されなければいけないが、それをさらにコンバインして1つの仕事にしていくところに、どういう仕組みを導入すれば、研究不正が防止できるかという課題がある。国際的な共同研究は当たり前になっている。研究倫理のあり方が違うと、研究リスクをどう軽減していくかというのは大きな問題になる。全然トレーニングを受けてこなかったのが来ているとか、トレーニングを受けているはずなのに、という色々な事があり、様々なリスクを含んでいる。
それが顕在化しないようにくい止めていく必要がある。
どれくらい厳しく規程を作れば妨げられるかというのは限度があるので、倫理教育を徹底して行い、絶対に科学に対しては誠実であるという思いを培っていく必要がある。大学と違い、私どもは大学を終えてみな大体ドクターをとっているが、その背景というのは様々で19%が外国人である。そして理化学研究所の中だけではなく他機関とも共同研究している。どうやってセキュリティーを担保していくかという事を、科学者の社会全体、教育機関も含めてやっていかなければならない。非常に脆弱なセキュリティーの上に立っているが、同時に多才で多様な人達が集まり協力できるというチャンスもある。ここをどういう風に乗り切るのか、理研の中だけではなくて大学・研究機関・出版社も協力してやっていく必要がある。

坪井:半減というのは研究室の数として資料を作っている。40ある研究室が20くらいになる規模で考えている。

野依:新しいセンター長が就任するまで竹市センター長にお願いできればと思う。CDBのガバナンスが不十分だというご意見もあり、センター長を補佐する仕組みを作っていく。竹市センター長は世界に稀なる科学者としての業績を上げており、この科学的見識を今後も活用させて頂きたい。
CDBの名称変更は「解体的出直し」という象徴的な意味を持つ。

川合:場所を全部移すというのは大変な時間と労力を要するので、現在は管理体制を変える事を考えている。場所の移動はおいおい起こるかもしれないが、11月にすぐに半分の人達が別の所に行くということではない。
採用の手順と基準を明確化して記録を残す、外部の意見を取り入れるというのが改善点であり、思い切った登用をする時にそれが弊害になるとは思わない。

川合:ご指摘の通り、3月の時点で論文の調査をしないという宣言をしている。その当時WEB上ではいろんな疑義が上がっていたが、それぞれの疑義について理研の中のシステムや第三者の協力も得ながら検証をしており、確かな疑義を抽出していく作業を継続している。アクションプランには研究不正の調査を進める事と科学的な検証をする事を分けて書いている。科学的な検証を進めていく中で、調査に値する疑義だと判断されたものがいくつか出てきており、それを元に6月30日に予備調査に入った。本調査には近々に入れていく。アクションプランのP8に書いているが、調査に関しては新しい文部科学省のガイドラインに基づき理研外部の有識者に調査を依頼する予定で準備をしている。期日は明言できないが、そういう状況にある。

川合:調査をすべきかどうかは、その疑義が科学として確定することが重要なポイントになる。4月の段階では、いろいろと出ていた疑義の確度がまだ科学的に確証がとれるところまでには至っていなかった。

川合:遠藤さんの解析については、5月の後半に理研の中で説明して頂いており、その事実について確認している。その後に調査の必要がないとコメントしているのは、どうだったかは…。

川合:小保方氏が実験していた期間は客員研究員の期間が2年間で、ハーバード大学の所属であり、理化学研究所では客員の規程がきちんとしていなかった。アクションプランでは、P26に客員の者に対しても理研のルールを適用するという事を明記した。

川合:STAP論文で剽窃ではないかと指摘された部分については、実験の手技が書かれており、一般的な記載であることが不正ではないとされた主な理由である。使った機器の名前も全てコピペであった事は、あまり推薦できることではない。この判定は調査委員会の考えに基づくものであり、理研の規程として全てコピーをしたものはダメであるとして書けないのは理解して頂けると思う。内容の判断がそこに入ってくる。

川合:笹井先生が希望に反して副センター長を辞任できなかったと報道されている件について、人事は年度ごとに更新しているが、笹井先生から3月の時点で4月からの更新がなされる前に辞任の希望が出ていたという事は聞いている。その当時、最初の調査委員会が走っている状態であり、竹市センター長と、研究担当理事の私と、人事担当の理事とで相談し、笹井先生も納得の上で副センター長の職をそのまま続けて頂いた。ただし、センター長の配慮で過大な負担をかけない様に、副センター長としての職務を軽減して研究室の運営の方に専念して頂いたと聞いている。

川合:その後の処分等の問題があり、そのまま留任してもらったが笹井先生も納得されていたので、その後特にそれが問題になるということはなかった。その判断に間違いはなかったと思う。

野依:今回の事で自分が辞任しようと思ったかどうかについては、答えるのが難しい。ただ、ただ残念だと言う以外になく、どうすれば一番良かったのかといつも自問している。私はこの思いを一生背負って生きていかなければいけない。2月から大変辛い気持ちでいるが、その気持ちの中身は様々である。

川合:今回の事案を解決する中で試行錯誤しながら進めてきた事も沢山ある。まだ道半ばであり、責任をもってやるべき事を果たして、きちんとした結果を残したい。それが今の責任の果たし方だと思っている。

坪井:私は再発防止策のとりまとめの担当をしているので、この与えられた職務を果たす事が基本的な役割だと思っている。

坪井:科学界での論文の撤回というものは大きく、論文で主張された内容が無かったことを意味する。一方、社会ではSTAP現象があるかないかを理研が明らかにすべきだという意見があると認識している。現在、残されている細胞株の科学的解析を引き続き進めている。社会的な観点からのSTAP現象の有無を明らかにする意義は変わっておらず、引き続きSTAP現象の検証を進めていく意味はあると判断する。小保方研究ユニットリーダーにやらせるという事については、Nature論文に記載のプロトコールに従って高い透明性を確保した上で本年11月末までという時限を切って、STAP現象の有無を明らかにする1つの手段としてやる必要があるという判断をしている。

川合:私どもが考えている意義として、実験そのものには個人的な手腕・テクニカルなスキルというものが関係していると言われており、論文に記載された時に実際に実験をした者は一人であるので、その人の検証をもって最終的に結論を出す必要があると考えている。その他に周辺の色々な科学的な解析データの結果をもって次の調査委員会を立ち上げる決意をしているので、見守って頂きたい。

坪井:検証実験は3月末までの計画だが、途中段階の報告によっては継続しない判断をすることはある。相澤さんからの報告の他に、STAP細胞の存在を否定する決定的な解析データの結果が出ればそれを加味して、継続中止の判断をする可能性もある。その時の状況による。