最終更新日:2024/12/4
株式会社と合同会社の違いを比較!メリットもわかりやすく解説
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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この記事でわかること
- 株式会社と合同会社の違い、メリット・デメリットがわかる
- 株式会社と合同会社どちらを設立したらいいかがわかる
会社設立にあたって、株式会社と合同会社のどちらにするかで悩む方は少なくありません。起業前はこれからのことを考えて、なるべく費用を抑えたいと思って合同会社を検討する方もいるでしょう。
しかし、株式会社と合同会社にはそれぞれメリット・デメリットがあり、自身の事業展望にマッチしない法人形態を選ぶと、後々変更することになるため注意が必要です。
本記事では、会社を設立したい方、個人事業主から法人成りを考えている方に向けて、株式会社と合同会社の違い、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
株式会社と合同会社の違いは所有と経営の在り方
株式会社と合同会社の違いは、「所有と経営が分離しているかどうか」です。株式会社は、出資者である株主と経営者の役割が分離されていますが、同一人物が兼任しても問題ありません。一方、合同会社は出資者のことを「社員」と呼び、この社員と経営者が同一である必要があります。
そのため、株式会社と合同会社の大きな違いは、会社の持ち主である出資者と実務を行う経営者が同一人物か、それとも別の人物で構成されているかということです。
役割の違いを野球で例えると、出資者が球団のオーナー、経営者が監督となります。オーナーは球団の持ち主で経営に関する最終決定権を持っていますが、チームの編成や試合当日の打順などには基本的に関わりません。一方、監督は現場の指揮命令を担う仕事です。試合における先発メンバーの選抜や戦略など、現場レベルでの意思決定権を持っています。
合同会社の場合、「オーナーにあたる出資者」と「監督にあたる経営者」が同一人物でなくてはなりません。また、出資者は複数人を選任することもできますが、出資比率にかかわらず1人1議決権が原則です。
株式会社のように、出資比率に応じて会社の議決権が変わるわけではないことも違いのひとつです。1人1議決権ということは、意見が割れたときに解決しづらくなるため、合同会社の出資者を決める際には役割分担するなど注意が必要でしょう。
株式会社と合同会社の違いを比較
株式会社と合同会社では、所有と経営の在り方以外に、会社法上の決まりや設立手続き、設立費用といった面などでも違いがあります。どちらの会社形態にするか決めるポイントにもなるので、比較表と併せて詳しく見ていきましょう。
株式会社と合同会社を比較したときの違い
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
所有と経営 | 分離 | 一致 |
出資者(所有者) | 株主 | 社員 |
経営者(代表者) | 代表取締役 | 代表社員 |
業務執行 | 株主総会 | すべての社員 |
取締役の任期 | 2年~10年 | なし |
取締役会の設置 | 任意 ※条件によっては設置義務がある | 不要 |
監査役の人数 | 1人以上 | 不要 |
持分の譲渡 | 自由だが制限を設けることも可 | 社員の承認が必要 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
設立にかかる費用 | 23万円~ | 11万円~ |
定款の認証 | 必要 | 不要 |
定款の変更方法 | 株主総会で3分の2以上の同意 | 全社員の同意 |
会社法上の決まりによる違い
株式会社と合同会社では、会社法上の決まりでも違いがあります。例えば、株式会社の代表者は代表取締役、合同会社では代表社員と呼びます。社員は従業員ではなく、出資している人のことを指します。また、役員の任期が株式会社には定められていますが、合同会社では任期はありません。取締役会や監査役の設置も合同会社では所有と経営が一致しているので不要です。
会社の設立費用による違い
会社の設立費用にも違いがあり、合同会社のほうが安く抑えられます。
会社を設立する際には、法人形態にかかわらず定款を作成した上で法人登記する必要があります。定款は、会社の規則などを定めたルールブックのような書類です。
株式会社の場合、作成した定款を公証人役場で公証人に認めてもらう、定款の認証手続きを行わなくてはなりません。定款の認証には認証手数料1万5,000~5万円、定款を書面で提出するには収入印紙代4万円がかかります。
一方、合同会社を設立する場合は定款の作成は必要ですが、認証手続きは不要です。したがって、合同会社は定款の認証費用がかからない分、設立費用を抑えられます。
また、法人登記では法務局に登録免許税を納付しますが、登録免許税の金額は法人形態によって異なります。登録免許税の金額は、株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円です。このように設立費用としては合同会社のほうが約12万円安いことがわかります。
決算公告の有無
会社設立後の義務についても違いがあり、株式会社の場合は決算公告を行う必要があります。決算公告とは、会社の財務情報を一般に開示することです。
決算公告は、掲載メディアによって費用が異なり、官報なら最低6万円程度、全国紙なら最低50万円程度の費用がかかります。自社サイトへの電子広告なら費用は発生しませんが、公告を作成する担当者を設置したり、掲載後の公告を管理したりするコストや手間は発生します。こういったコストや手間のかかる公告については、合同会社であれば行う必要はありません。
株式会社と合同会社のメリット・デメリット
株式会社と合同会社の違いを把握したところで、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
比較してみると以下の表のようになります。
株式会社と合同会社のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
株式会社 | ・知名度が高い ・資金調達方法が多様 | ・設立費用やイニシャルコストが高い ・出資額に応じて議決権が決まる |
合同会社 | ・設立費用やイニシャルコストが安い ・出資者の議決権が対等 | ・出資者の人間関係が経営に影響する ・知名度が低い |
株式会社のメリット
株式会社のメリットは、知名度が高く、株式による資金調達が可能なため資金調達方法が多様なことが挙げられます。大企業の中には、取引の条件として株式会社に限るという場合があります。合同会社の認知は広がりつつありますが、合同会社という名前を知っていても、どういった会社形態なのかは知らない人が多くいるからでしょう。
また、会社設立後に資金を潤沢にするには、会社が利益を上げてお金を貯めていくか、借入れや出資を受けてお金を増やすかのどちらかです。株式会社の場合、株式を発行することによって投資家などから資金を調達することも可能です。
上場を目指したり、社員数を増やしたりするなど会社の大きな成長を目指す場合は、合同会社よりも株式会社のほうが向いているといえるでしょう。
株式会社のデメリット
株式会社のデメリットは、設立費用や維持費が合同会社よりも高くなることです。設立費用は合同会社よりも約12万円高く、さらに決算公告の費用も必要になります。また、株式会社は役員の任期があるため、たとえ同じ人が継続するとしても、最低10年に一度は役員の重任登記費用としての登録免許税が、資本金1億円以下の会社なら1万円、資本金が1億円を超える会社なら3万円かかります。
また、利益配分は出資金額に応じて決まるため、貢献度が高い出資者に利益配分を多くするといった柔軟な対応ができないこともデメリットといえるでしょう。
合同会社のメリット
合同会社のメリットは、会社設立費用や維持費が安いことです。創業当初は売上が立つまでに時間がかかるため、費用を抑えられることは大きなメリットといえます。また、合同会社は定款の認証が不要なため、認証にかかる手数料を抑えられるだけでなく、株式会社よりも早く設立できます。
さらに、合同会社のメリットには、定款に定めれば出資比率にかかわらず、個人の貢献度に合わせて出資者同士で利益配分を自由に決められることも挙げられます。このように、所有と経営が一致しているので経営の自由度が高いことはメリットといえるでしょう。
合同会社のデメリット
合同会社のデメリットは知名度が低く、出資者の人間関係が経営に影響することです。特に、合同会社は出資比率にかかわらず議決権が対等になるため、出資者同士で意見が割れると解決しづらくなります。出資額が多い人の意見が必ずしも通るとは限らず、もめた場合に経営が立ち行かなくなる点はデメリットといえます。
しかしながら、日本に進出してきたグローバル企業が子会社を合同会社にするといったケースが多くあり、今後知名度は高まっていく可能性があるでしょう。
株式会社か合同会社かで迷ったら?
合同会社と株式会社のどちらを設立するかで迷った場合、選ぶポイントがいくつかあります。ここでは、株式会社と合同会社それぞれを選ぶポイントを紹介しますので、会社形態を決める参考にしてください。
株式会社を選ぶポイント
株式会社を選ぶポイントは、主に以下の4つです。
- 将来的に上場を目指す場合
- 株式会社や代表取締役という表記が欲しい場合
- 資金調達を検討している場合
- Webサイトで集客したり、求人したりする場合
将来的に上場を目指す場合は株式会社を選択することになります。それ以外では、大手企業と取引する場合や代表取締役という肩書きを名乗りたい場合も株式会社が向いているといえます。
合同会社から株式会社へ変更を希望する人に理由を聞くと、「合同会社とは取引できないと言われたから」「名刺を見た取引先に不安な顔をされたから」といった声があります。業種にもよりますが、合同会社の知名度の低さが取引に影響する場合は、株式会社にしたほうがよいでしょう。
また、資金調達を検討したり、Webサイトで集客や求人をしたりするために会社名の信用度が必要になる場合も、株式会社のほうがおすすめといえます。
なお、株式会社を設立する場合、出資比率や株式の金額設定などは税理士に相談しておくと安心です。税理士とは決算や年末調整などで長い付き合いとなるため、起業の段階から接点を持っておくと事業開始後もスムーズなやりとりができます。
合同会社を選ぶポイント
合同会社を選ぶポイントは、主に以下の3つが挙げられます。
- 合同会社の知名度が事業に影響しない場合
- 設立費用を抑えたい場合
- なるべく早く会社を設立したい場合
合同会社の知名度の低さがネックにならない業種で、資本金や設立費用も抑えたい場合は合同会社が向いているといえます。例えば、飲食店や美容室など屋号でビジネスする業種、フリーランスや一般消費者向けのBtoC事業といった、会社名よりも個人や商品・サービスの知名度が重要な場合です。
また、株式会社よりも設立手続きが少なく、費用が抑えられるので、できるだけ早く会社を設立したい場合も合同会社が向いているといえます。
株式会社と合同会社の違いを知って会社形態を選ぼう
株式会社と合同会社では、所有と経営の在り方をはじめ、会社法上の決まりや設立手続き、設立費用などの違いがあります。自社の業種に合った会社形態を選ばなければ、後々変更手続きをすることにもなりかねません。それぞれのメリット・デメリットや選ぶポイントを知って、自社に合う会社形態を選ぶようにしましょう。
「合同会社で本当にいいのか」「費用を詳しく比較したい」といった場合は、税理士に相談してみるのもおすすめです。税理士なら、金銭面でトラブルが起こりそうなことや費用のシミュレーションをもとに最適なアドバイスをもらえます。また、インボイス制度の開始に伴って、課税事業者になるべきか否かなども幅広くサポートしてもらえるので、まずは税理士に相談してみてください。
例えば、ベンチャーサポート税理士法人では顧問契約にかかわらず、会社設立時の無料相談に対応しています。その上で、税理士顧問とセットであれば設立の代行手数料も0円になります。また、税理士が窓口となってグループ内の他の士業とも連携してサポートする体制が整っているため、法律相談もワンストップで対応することが可能です。依頼内容ごとに士業を探す手間が省けるので、ぜひお気軽にご相談ください。