「合区」「特定枠」「合併選挙」
参議院選挙の
しくみ
SANIN2022-SYSTEM
参議院選挙は6月22日公示、7月10日投開票で実施する。岸田文雄政権が2021年の衆議院選挙後、有権者の中間評価を問うことになる。選挙区と比例代表合わせて125議席を争う。参院の存在意義、投票の仕組み、衆議院選挙との違いなどについてまとめた。
解散なし
「良識の府」
任期は6年、3年ごとに半数改選
衆院の行き過ぎを抑えチェック機能を果たすのが参院の役割といえる。議員の任期は6年で、3年おきに半数が改選される。
衆院と違って解散がないため任期途中で議員の資格を失うことはない。長期的な目線で議論ができ「良識の府」と呼ばれる。一方で、衆院の決定に追随することも多く、参院は「衆院のカーボンコピー」との皮肉もある。
議決が異なれば?
衆院と参院はそれぞれ独立して審議し、両院の議決が一致したときに国会の決定となるのが原則だ。しかし衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」などでは一致すると限らないため、憲法は衆院の優越のルールを定める。
予算の議決、条約の承認、首相の指名で衆院と参院が異なる議決をし、両院協議会でも意見が一致しない場合は衆院の議決が国会の議決となる。衆院が可決した法案を参院が否決しても、衆院が出席議員の3分の2以上の賛成で再可決すれば法案は成立する。
投票、
「選挙区」と
「比例代表」に
定数の半数を争う
3議席増え124議席に
有権者は2票入れる
今回の参院選の改選定数は2016年と比べて3議席増え124議席になる。神奈川選挙区の欠員1を補充する「合併選挙」を合わせた125議席を与野党が争う。
125議席のうち、選挙前の与党勢力は自民党55、公明党14の計69議席。与党が56議席以上をとり過半数を維持するかがまず焦点となる。今回の参院選は「選挙区」で74人(非改選の補充1を含まない)、「比例代表」で50人を選ぶ。選挙区選挙で有権者は各選挙区の「候補者名」を書いて投票する。比例代表選挙は政党名か個人名を書く。
合区、全国で2区
かつて参院選の選挙区は人口が少ない県にも改選定数1を割り振っていた。大都市部への人口の集中に伴い「1票の格差」が拡大してきた。
2016年の参院選から1票の格差を是正するために「合区」と呼ぶシステムを導入した。人口の少ない鳥取県と島根県、徳島県と高知県をそれぞれ一つの選挙区に統合した。
特定枠、政党が優先候補を決定
2019年に比例代表で「特定枠」という制度を新たに設けた。通常は個人名の得票の順で政党内の当選者が決まる。特定枠は個人名でどれほど得票したかにかかわらず、政党が優先的に当選させる候補を定められる仕組みだ。
背景には合区の導入がある。合区の導入でそれまで「2県で2人」だった候補が「2県で1人」に減った。比例に回った候補を救済する目的があった。
選挙区の数は45
選挙区は都道府県ごとになっており、北海道3議席、東京6議席などと人口の多さに応じて議席数が割り当てられている。
参院選の比例代表の仕組みは衆院選とやや異なる。衆院選では全国を11のブロックに分けているが、参院選では全国が一つのブロックになる。
衆院選は政党名で投票する。参院選は政党名でも個人名でも投票でき、その合計が政党の得票となる。得票数に応じてそれぞれの政党に議席数が割り当てられる。
合併選挙、神奈川で
神奈川選挙区の通常の改選定数は4だ。2025年に任期満了を迎える議員が横浜市長選に立候補したため欠員が出た。
改選定数が4以上の選挙区は欠員が1人出てもすぐには補欠選挙にならない。通常の参院選で欠員を補充する。今回は計5議席を争う「合併選挙」となる。
得票数が4位までの議員の任期は通常と同じく6年になるが、5位の候補は25年までの3年間となる。
女性や若手、
多様性は道半ば
女性比率、伸び悩み
当選者のなかの女性の割合
女性の候補者数と当選者数
前回2019年の参院選で女性当選者は28人だった。全体の22%で伸び悩む。18年に議員立法で「政治分野の男女共同参画推進法」が施行された。国会や地方議会の選挙で男女の候補者をできるだけ均等にするよう政党に努力を求める内容だ。
当選者の平均年齢は54.4歳
年代別の当選者数(2019年)
2019年参院選の当選者の平均年齢は54.4歳だった。年代別でみると50歳代が39人で最も多く、38人の40歳代が続く。最年少は32歳で最高齢は78歳だった。 世代交代などを理由に定年制を採用する党もある。
投票率は低め
19年参院選は50%割る
衆院選・参院選の投票率
投票率は下落傾向が続く。19年参院選の投票率は48.80%と24年ぶりに50%を割り込み、過去2番目に低かった。
衆院選も12年からずっと60%を割るが、参院選はさらに低い。政権選択選挙ではなく、何を争うのか明確になりにくいことも関心が低い一因とみられる。
60歳代が高く、20歳代が低い
年代別投票率
期日前投票、商業施設でも
投票日の当日に予定が入っていたり、忙しかったりしても投票はできる。立候補者が出そろう「公示日」の翌日から「期日前投票」ができるようになる。
投票時間は基本的に午前8時半から午後8時までで、大学やショッピングモールなどに投票所を設ける地方自治体もある。
期日前投票の割合は上昇傾向
2003年に始まった期日前投票の利用者は増えてきた。前回19年の参院選は投票者全体のおよそ3分の1にあたる1706万人が使った。期日前投票が投票全体に占める割合が最も高かったのは17年衆院選の37.54%だった。
経済対策、安全保障、コロナ
岸田政権の中間評価
参院選は6月22日公示、7月10日投開票で実施する。経済対策、外交・安全保障、新型コロナウイルス対応などを巡って、各党・各候補者が公約や政策を訴える。