スラスラわかるニュース解説
2018年8月、トルコの最大都市、イスタンブールの両替所に市民が殺到しました。
きっかけは、アメリカとの対立が引き金になって、
トルコのお金の価値が一気に下がったことです。
トルコの通貨はリラ。
これまで1ドル3.7リラのレートで交換していたのに
5.58リラを払わないと交換できなくなりました。
市民は「自分の国のお金の価値が下がる前に、世界で通用するドルに換えておこう」と、両替所に駆け付けたのです。
トルコを始めとした新興国で、
お金の価値が下がる通貨安が広がっています。
アルゼンチンのペソやトルコのリラは、
ドルに対して3~5割安くなってしまいました。
ー 2017年末比騰落率 ー
国の稼ぎを示す経常収支をみると、
中国は1,600億ドルを超える黒字です。
ー 2017年経常収支 ー
一方、トルコの経常赤字額は500億ドル近くになっています。
借金が多い
「国の貯金」と「外国からの借金」を比べました。
- ●=貯金
- ●=借金
アルゼンチン、トルコは借金が貯金に迫っています。
手元に余裕がないのに借り入れが多いときついのは、
家計と同じですね。
同じ新興国でも、
タイやブラジルは手元の貯金が借金の3倍から7倍あり、
比較的安定しています。
強権政治が続くトルコ。エルドアン大統領は米国と対立し、市場の不安を呼んでいます。
2018年から19年にかけて新興国では大きな選挙が相次ぎます。結果次第では政治がさらに不安定になるリスクがあります。
利上げ
注目点は、アメリカの利上げです。
FRBのパウエル議長は18年11月下旬
「段階的な利上げの経済への影響は不確か」と語り、
先行きの利上げについては
慎重に見極めていく姿勢を示しました。
民間債務
新興国の借金は、増え続けています。
10年間で約2倍になり、
アメリカの利上げが進めば新興国の利払い負担は
さらに重くなる可能性があります。
通貨危機に陥った新興国は、今後も借金返済に苦しみ、
これまで以上の危機が訪れるリスクを抱えています。
- 取材・制作
- 三田敬大、伊藤岳、森田優里
- 制作協力
- ノースショア株式会社