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 最近の人工知能(AI)の進歩により、従来は人間にしかできなかった多くの仕事が、理論上は自動化できるようになりました。しかし、現代の仕事は複雑さを増し、1つのことだけをすればいい仕事は減りました。働く人、特にホワイトカラーの労働者は職場で日々、多岐にわたる課題をこなしています。このインタラクティブ計算ツールは、米マッキンゼー・グローバル・インスティチュートから得たデータに基づき、仕事の未来がどう変わるか、1つの指標を提供します。AIと自動化は、さまざまな仕事をまるごと破壊して全く新しい職業を生み出すのではなく、大部分においては人々が抱える職務の中で、どの業務活動に集中するかを変えるだけです。マッキンゼーのデータによると、ほぼすべての職業に自動化可能な作業が多少ありますが、現在ある技術を使って理論上完全に自動化できる職業は全体の5%にも達しません。

完全に自動化ができる仕事

  • ミートパッカー
  • 左官、しっくい職人
  • 眼科検査技師

自動化ができない職業

  • 歴史家
  • 鉱山の屋根用ボルト締め作業員
  • 聖職者

 理論上は自動化できる作業でさえ、実際に自動化されるかどうかは、その他の要因に左右されます。ロボットによるソリューションを導入するコスト、導入によって得られる経済的利益、人間の労働力の需給、規制や社会による容認などが主なところです。これらの要因は、産業や地域によって異なり、マッキンゼーの試算では、変化は数十年かけて起きます。マッキンゼーのパートナーで、リポート執筆陣の一人であるマイケル・チュイ氏は「さまざまな技術を統合し、特定のビジネスの問題を解決するソリューションを開発するためには、多大な努力が必要になる」と語っています。今回研究した歴史上の多くの技術については多くの場合、商業利用が可能になったときから、それが隅々まで広く行きわたるまでに8~28年の歳月がかかっています。

メソドロジー(方法論)

 このインタラクティブ計算ツールは、フィナンシャル・タイムズ(FT)が米マッキンゼー・グローバル・インスティチュートから提供されたデータを利用して作成したものです。ここで出される答えは、ある特定の業務が理論上、現在手に入る技術を使って自動化できるかどうかの判別だけであり、自動化を可能にする製品やソリューションを誰かが作ったわけではありません。

 マッキンゼーのチームは米労働統計局のデータを利用し、820種類の職業を、個々の職業を構成する業務に分解しました。個別の業務内容の数はおよそ2000種類あります。マッキンゼーは次に、それぞれの業務について求められる18の遂行能力の組み合わせを評価しました。

 例えば、小売販売員の仕事は、「顧客を歓迎する」「商品の特徴を説明する」といったさまざまな活動から成り立っています。顧客を歓迎する活動には、「感覚認知」や「社会的、感情的知覚」「自然言語生成」といった能力が求められます。

 マッキンゼーは次に、人間が現在これらの活動を遂行しているやり方に基づき、それぞれの能力について、どの程度の達成度が必要か検討しました。さらに、既存の自動化技術が同じレベルのパフォーマンスを実現できるかどうかも評価しました。当該活動を行うために必要なすべての能力について、答えがイエスだった場合に限って、その活動は理論上自動化できると判断されます。

 計算ツールを操作しやすくするために、ここでは820の職業を23の職種に分けたうえで、97の職務グループに分類しました。

 一部の活動は、職業の内容により異なる能力を必要とすることから、職務グループによっては、一部の職業では理論上自動化でき、同じグループのほかの職業では自動化できない活動が含まれます。

 例えば、「林業、保全、伐採作業員」の職務グループでは、「装置や設備を点検し、状態やメンテナンスの必要性を判断する」活動の場合、伐採装置のオペレーターについては活動が理論上自動化できますが、林業・保全の伐採作業員の活動は自動化できません。

 こうした活動については、「場合による」と判定し、理論上自動化できる活動の総数には含めませんでした。