宅配コンバット学園

twitterでフォロワーが絶望しながら紹介していたので思わず購入してみた。

宅配コンバット学園 (スーパーダッシュ文庫)

宅配コンバット学園 (スーパーダッシュ文庫)

あらすじ。戦場の女子高生たちに届く宅配便の中身は!? 政府の実験により過去の戦場に送り込まれた女子高生天童春菜とその仲間たち……。死と隣り合わせの絶望の中、唯一の希望は念じた物を届けてくれる宅配便だった!!(Amazonから引用)


ただ、このあらすじって合ってるようで合ってないと言うか。バックトゥザフューチャーを「デロリアンに乗って移動した後にステージでギター演奏をする話」とか言っちゃうぐらい的外れな感じ。



ストーリーは主人公たち(ぶっちゃけキャラの違いがわかりにくかったので人数すらあやふや)が自A隊に体験入隊するのがきっかけ。ちなみに自A隊は劇中での表記通り。ほかの固有名詞は現実と同じなのに。


自A隊に入って体験入隊し、「いやー自A隊の訓練ってキツいなー。でも絆とか深まったし、なんだかんだで隊員はみんな日本のことを考えてくれるし、いい体験できたぜ! 高校のすてきな思い出になったな!」ぐらいで終わらせておけば駄作と言わないまでも佳作ぐらいの評価にはなったと思う。


自A隊の体験入隊で選抜された主人公たちはなんと過去にとばされてしまう。飛ばされたのは戦時中のユーゴ。そこで主人公たちは戦争の悲しさとか知るけれど、まぁいい感じに絆とかそういうのを知ることが出来て精神的に成長できた……みたいな展開だったら駄作とは言わないまでも(以下略




ここまでこの作品をまるで駄作であるかのような表現をしていますけども別にそういうわけではないんですよ?




そもそもこの作品は全体的に配分がおかしい。というのも、こういう作品ってどこをメインにするかで変わってくるんですけれども、最初の自A隊編が半分、タイムスリップ後で半分という構成なんですよ。フルメタルジャケットかよ。



ここからは詳しく解説。ネタバレ全開で。







前半部分は自A隊編なのですが、やってることはなんかキツい訓練してよく食べてるぐらい。本当にこれだけでびっくり。


なにせキツい訓練をしているという表現が『よく食うキャラが食わなくなった』というだけ。一応訓練内容は書いているけれども「走り込みの距離もどんどん延びていったぐらいのサラッとした表記。


タイムスリップ部隊に選抜された理由は優秀だからというものなのですが、優秀さがあまり出ていない。せいぜい「銃の訓練で優秀だった」ぐらいなんだけど、それもメンバーのうち1人だけだし。




というわけで全体的に描写不足でイマイチ感情移入できないまま「実は国家秘密でタイムスリップ装置が完成していたのだ! さぁ過去に行ってもらうぞ!!」という展開になって盛大にずっこけた。




冒頭に述べたタイムスリップシステムも、宅配システムもそ、もそもえらい中途半端な時代にタイムスリップしてやたらピンポイントな戦略をする理由すら具体的に明示されてないのにびっくりした。主人公たちに伝えられる情報だけでなく、読者に伝えられる情報すら少ないのでぜんぜん話についていけない。


結局主人公一行が適地に潜入し、作戦を進めるというもので、途中で宅配システムを使って救援物資を送ってもらうという展開になるのだけれど、展開が早すぎる上に脈略がなさすぎて全くついていけない。


おまけに途中で「こんな子供まで戦うなんて」「これが戦争ってことさ」みたいな茶番もしててげんなり。そんなのガンダムの序盤でもやってたぞ。あまりにも唐突すぎるわ。


宅配システムで救援物資をうけとったあたりで残り30ページ。「おいおい、こんな状況でどんなオチにするつもりだよ……」とか思ってたら夢オチの方がまだマシなんじゃないかと思えるレベルのオチに。ジャンプの打ち切りマンガでもここまでひどいのはなかなか無いぞ。




というわけで『これはひどい』という評判を裏切らないどころか斜め上をいくような作品。ツッコミどころが多いどころじゃない。


もしも自分が話を書き換えるとしたら、冒頭にも書きましたが「自A隊訓練メインで終わらせる」か「いきなりタイムスリップして過去で戦わせる」かのどっちかにするかなぁ、と。


ここに書いた以外にも「アーマーデザインどうなの」とか「バンドやってる設定関係ないな」とか「銃の扱いに長けてる新山さんとはなんだったのか」とかツッコミどころは多いのだけれど、過去編の決着が余りにもひどすぎてその辺がどうでもよかったです。


いろんな意味ですごい本だった。絶対おすすめしない。