潜入!謎の「赤羽くのいち屋敷」⑤
忍者の正体はババアであり、
忍者の恰好はババアであることを隠す為のものであった・・・
その後も、俺の隣でタバコをくゆらすババア。
煙を吸う際、熱でタバコの先端が赤くなるが、
その度にババアのババアたる顔が暗闇に浮かび上がった。
タバコを吸い終わると、ババアはトイレへ行く為、席を立った。
タバコ吸うわ、トイレ行くわ、接客業として完全に失格である。
しかし、忍者としては合格なのかもしれない。
ここで気になるのは、隣の部屋の赤澤氏。
カーテンの向こうは、どういう状況になっているのだろう?
果たして彼は、無事なのだろうか・・?
心配になった俺は、恐る恐るカーテンの隙間から
様子を伺うことにした。
超盛り上がってた。
頭巾を脱ぎ、素顔を晒してるババアに、赤い仮面をつけてる赤澤氏。
完全に立場を逆転させた上で、世間話に花を咲かせていた・・・
この赤澤という男、町の老人をダマす・・いや、
町の老人の心を開かせる技術といったら、俺などの数段上をいく。
一時期、それで飯を食ってたほどだ。
俺も負けてはいられないぞ!
10分後、ババアがトイレから戻ってきた。
時間から察するに、生理かウンコと思われる。
生理はとっくに上がっていると思われるので、ウンコと思われる。
今度は、ババアの方から話を振ってきた。
ババア「わたし、一人身で寂しくてさ、どっかにいい男いないかしらねえ?」
俺「僕、男友達多いんで、良ければ紹介しますよ。どういった男性がタイプなんですか?」
ババア「わたし、年下がいいわあ~」
俺「具体的にいくつくらいの男性がいいんですか?」
ババア「う~ん・・・」
ババア「65歳くらいかなあ~」
「年下の男がいい」=「65歳以上の男がいい」=「ババアは65歳以上」
こういう方程式が成立する。
さっきは俺の2つ上って言ってたのに、
ここまでサバ読まれると、もはや気持ちが良い。
と、ここまでは良い流れでババアと雑談できていたのだが、
俺のふとした失言で、ババアとの関係に亀裂を生じさせてしまうことになる。
俺は、居酒屋とかスナックで居合わせた年長者の女性に対し、
親しみを込めて「お母さん」と呼ぶことがあるのだが、
いつもの癖で、ついババアをお母さん扱いしてしまったのだ・・・
さきほど「年下(65歳)の男が好き」とボロを出してしまったババアだが、
ボロを出したことに気づいていないので、まだ「31歳」という設定に
なっている。
当然、ババアは怒り始めた。
俺の失言を耳にしたのか、カーテン越しに赤澤氏の噴き出す声が聞こえてきた。
やばい・・話題を逸らして一刻も早くババアの怒りを
沈めないと・・!
しかし、もはやグダグダだった・・・・
そんなこんなで時間切れ。
俺と赤澤氏は、くのいち屋敷を後にした。
若い肉感的美女からの素敵な性的サービスを望み入店した、
そこらの男性客なら「ボッタくられた!」と幻滅しながら店を出るであろう。
しかし俺と赤澤氏は、こういう、まったくオチの読めない
不気味かつ滑稽な出来事をを期待して入ったので、
うっとりしながら店を出た。
期待以上の大満足である。
くのいち屋敷から満足げな表情を浮かべて出てきた俺たちを見て、
周囲の怖そうなキャッチたちが、どよめいたのが印象的だった。
やはりくのいち屋敷は、赤羽の風俗街の中でも、
相当浮いた店だったようだ。
ひとつ気になるのは、入り口の張り紙に記されていた、「大奥大回転コース」。
一体どんなコースなのだろう?
一番安い体験入門コースの5000円に、プラス3000円で本番行為ができてしまう。
つまり、ババア一人8000円。
で、赤澤氏が担当のババアから聞き出した情報によると、
くのいち屋敷に在籍してる女性は、あのババア二人だけとのこと。
ババア二人つけて、3人でエンジョイしたとしても16000円という計算になる。
それに更に1万円もプラスするコースって一体・・・・
ババアに木刀で半殺しにされる・・・そんなコースが脳裏をよぎった。
ちなみにくのいち屋敷は、
それから数ヵ月後にドロンしてしまった。
by kurukurupaaaa | 2009-12-22 01:43