護衛騎士であるクリフォードと偽の恋人になったオクタヴィア。ところが、父王にに呼び出されたオクタヴィアは護衛騎士をもう一人任命するよう迫られてしまう。しかも、新しい護衛騎士候補として連れてこられたのはあのルスト・バーンで……!?
父王カップル(?)の馴れ初め話が面白かった
新たな護衛騎士にシル様の記憶、そして諸侯会議に向けたあれこれ……本編もイベント盛り沢山だったけど、幕間で語られる父王イーノックと王配エドガーの過去の馴れ初め話が印象的でした。あくまで互いに恋愛感情のない夫婦関係、エドガーの妹でありイーノックの恋人であったアイリーンの死によって結ばれた、いわば「共犯者」同士の偽装結婚的ななにかを匂わせるふたり。普段はラブラブカップルを装いながらも実際の関係性は全く違う、殺伐としたもので……あっこれ私が好きなやつや…。この世界が上位存在によって不自然に歪められた同性愛至上主義社会というのは以前にも語られていましたが、父とエドガーの話を聞いていると更なる何かがありそう。貴族が不自然に同性愛嗜好を持つ傾向があるというだけでなく、王が異性と恋愛すること自体が何らかの強制力によって許されないような何か……?うーん謎が深まってきたぞ。
それはそれとしていい加減未解決のフラグが多いな……
シル様の出自やクリフォードの関係性、兄王子セリウスの記憶の件、セリウスと同じく記憶を操作されたらしきデレク、弟アレクシスの変貌、結局味方なのか敵なのかわからないまま懐に滑り込んでくるルスト・バーン、見え隠れするヤールシュ王子の姿……なんというかクリフォード以外は誰がいつ敵対してもおかしくない──セリウス&デレク&アレクシスの問題の根本には同じ原因がありそうではあるんだけど──所々の問題が解決しないままどんどん他の問題が山積みになっていく感じは正直読んでいてあんまり気持ちよくない、もともと刊行ペースが早い作品ではないこともあって、新刊が出る度にこれどの話だっけ!?と混乱するようになってきたのも気持ちよくない。そういえばヒューと面会する話も今回何も進展しなかったな……。今回明かされたイーノックとエドガーの話で語られた世界の強制力っぽい話も含めて色々気になる件が多すぎるんだけどとにかく本編の刊行ペースも展開もそんなに早くないので増えていく謎に対して速度が足りない感すごくて(とはいえこのシリーズ初期からそういう部分あった)、そろそろどれか一つでもなんとかなってほしいかも。偽恋人の件だけは決着したけど、意味深に積み上げられたフラグが多すぎるんですよね。
そして公式のあらすじではさもかし今回のメインのように描かれながら最後の最後で思い出したように滑り込んできた媚薬イベントの途中で次巻に続く。混迷していく謎に翻弄されつつラブコメはじまった主役二人!!ほんとこの作品、物語本線は面白いんだけど毎回悪い意味で「ここで切るの!?」ってところで切れるよなあ……。あらすじの書き方が悪いのか、本編の切り方が上手くないのか……どっちもか。
ところで今回、4巻以降長らく「電子限定」で発行されていた当シリーズが4〜6巻の紙本発売を経て遂に紙&電子の同時発売に戻ったのは本当にめでたかった。私は電子書籍派なので購入で困ってたわけではないんだけど、やっぱ紙での発行あるかないかって大きいから……。