小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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世界の発行新聞数は1万 WAN調査より


 「プレスガゼット」紙によると(世界新聞協会WANのデータ)、世界の日刊新聞の数は1万紙になったそうである。

 「WAN世界プレストレンド」の調査では、過去5年間で世界の新聞発行部数は約10%上昇したそうで、昨年は2・36%の上昇。WANのティモシー・ボールディング氏によると、「新聞が終末を迎えている話とは全く逆の結論だった」。

 無料新聞の発行部数も増えており、過去5年間で2倍になった。2001年では1200万部だったが、2005年では2900万部に。欧州の有料及び無料新聞の発行部数は過去5年で15%、2005年では3・31%増加。世界の新聞業界は1800億ドル相当の規模で、200万人を雇用しているという。

http://www.pressgazette.co.uk/article/060207/world_association_of_newspapers_booming_circulation

 一方、仏ル・モンド紙とフランスの実業家Vincent Bolloréとい人が今週新しい無料新聞を発行開始。「マタンプリュス」MatinPlus はパリ近辺で発行され、バタービスケットと共に35万部が配布されたという。(オランダ紙他による。)

 パリ近辺の無料紙は他に2紙で、メトロと20 Minutes。

 ボロレ氏はメディアの売買会社イージスの役員になろうとして失敗。新無料紙「マタンプリュス」の70%を所有。残りの30%はル・モンドが所有する。ル・モンドは、姉妹雑誌「クーリエ・インターナショナル」と協力しながら、4ページ分の内容をマタンププリュス紙に毎日提供している。マタンプリュス紙はルモンドと印刷設備を共有する。

 無料紙と有料紙がますます入り乱れる状況が欧州では続いている。

 ロンドンの無料紙というと、メトロ(欧州のメトロは別物)に加え、ザ・ロンドンペーパー、ロンドン・ライトがしのぎを削っているが、最近は道路にごみとして落ちていることが問題となっている。ゴミ収集費用を誰が負担するのか、と。また、ホームレスの人が販売している「ビッグイシュー」(週刊)の売れ行きが、無料紙の販売で落ち込んでいると言う。ロンドンの地下鉄駅近辺では、本当に複数の新聞を手渡そうとする人で一杯だ。限界ぎりぎりか。

(追加)

 読売によると(2月7日付。ヤフーより)

 
フランスの高級夕刊紙ル・モンド(発行部数約30万部)は6日、無料朝刊紙「マタンプリュス」を創刊、発行した。

 広告収入などで、部数低迷に悩む本紙の経営健全化を図る。仏主要日刊紙で無料紙発行に踏み切ったのは初めて。

 マタンプリュスの発行部数は約35万部で、同日朝、パリ市内と首都圏で通勤、通学客らに配られた。

 紙面は全部で28ページ。ル・モンドの6人の記者をはじめ、計約80人の記者が編集に携わる。AFP通信などの内外通信社電も活用する。

 現在、仏では「メトロ」と「20ミニュット」の無料紙が人気。同日会見したル・モンドの幹部は「ル・モンドの豊富な経験を生かし、記事の質を高めることで、2つの無料紙との競争に打ち勝つ」と述べた。ル・モンドは有料紙を夕刊、無料紙を朝刊で差別化を図ったとしているが、無料紙の売れ行き増で、夕刊本紙が影響を受ける恐れもある

by polimediauk | 2007-02-07 20:55 | 新聞業界