(photo:多摩美術大学情報デザイン学科卒業制作展学生作品より)千葉工大
安藤昌也先生の「エクスペリエンスデザイン」の卒展 と多摩美大
吉橋昭夫先生の「サービスデザイン」の卒制(情報デザイン学科/卒業制作展内) にご招待いただく機会があり、イベントに参加して来ました。
このどちらにも「デザイン」という言葉がはいっていますが、いわゆるグラフィックや広告計画における「デザイン」より広義で、かつそのどちらも企業の事業計画やブランド戦略に直結しているため、最近、業界でもとても注目されている分野ですね。
【エクスペリエンスデザイン計画】
安藤研究室 では、個人が主体であるUX(ユーザ体験)に対し、UXD(体験が再生産/量産されうるしくみ)が産業界の問題解決手段となるべく、日々の研究に取り組まれているようです。卒展も単なる学生によるパネル展示だけに留まらず、実業界のゲストや研究室からのスライドセミナーとコラボされており、大変に活気に満ちておりました。
異業種の知見不足の見学者にとって、見方によってはあいまいな着地にもなりかねない学生の展示ですが、こういった補講的セミナーあることにより、きちんとしたUXD理解への橋渡しになるのだなぁというところは大変に印象的でした。
安藤先生の当日のセミナースライドは一般に公開されており、個人的には「UXのカタチ化のレンズ」というスキームが大変に分かりやすく、腑に落ちました。下図は「UXデザイン」と「ソーシャルデザイン」の解説ですが、UXが体験から関係をつくり周辺(場)に向かっていくのに対し、ソーシャルデザインは「周辺(場)」からの関係から「行為(心)」へと向っていくことが誰にでも瞬時に理解できます。(引用:
http://www.slideshare.net/masaya0730/2-31795264 )
エクスペリエンス(経験)が重要でプラットフォーム(場)が戦略になると分かっていても、いざ、プランニングに「構造力があり再生産可能な」エクスペリエンスデザイン戦略をとり入れる事に成功しているかといわれるとなかなかそうではないケースも多いように感じます。
持続継続性を目指す中長期のビジネス戦略を立てる際や、ブランドマーケティングや事業計画の立案においても、また、スマホ端末とリアルを結ぶプロモーション戦略など、さまざまなビジネスの現場でUXDの理解は有効な知見となるのではないでしょうか。
【サービスデザイン(情報デザイン学科)】
一方、
吉橋昭夫先生 が教鞭をとられる多摩美術大学の情報デザイン学科も、私が多摩美(グラフィックデザイン科)在学中にはまだ存在していなかった学部です。情報デザイン学科のパンフレットのコピーにもあるように、「今まで」よりも「これから」に注目しているデザイン学部といえるでしょう。
多摩美の情報デザイン学科の中には、さらに○○デザインというものがいくつかありますが、今回はご縁あって吉橋先生にサービスデザインの学生作品を中心に解説をして頂きました。
印象的だったのは、私たちが学生時代に課題をやるといえば、まずは大手の企業を推定していました。「経験」をデザインして「サービス」に繋げるというむずかしいジャンルであるが故かもしれませんが、故郷の離島をリ・ブランディングしたり、地元の公園を紹介する試みであったり、日常の生活に入り込むシーンを想定したアプリの開発など「身近なサービスデザイン」をテーマにしたものが多かったように思います。
(photo:多摩美術大学情報デザイン学科卒業制作展学生作品より)
けれど身近な題材であるとはいえ、さまざまなサービスへの発展性が大きく期待できる「芯のあるブランドコンセプト」をつくるという意味では、サービスデザインの考え方は(社会に出てからこそ)役に立つだろうなぁと想像しました。「自分がつくりたいものづくり」ではなく「ユーザーにとっての大切なこと=体験」をデザインしていくいくんだ、というユーザー目線の企画力、これは本当にとても大切ですよね。
サービスデザインは特にマーケティング分野で熱い注目を浴びており、美大のデザイン科で取り組まれることはまだ珍しいようです。さまざまなご苦労があるようですが、まさにこれからのジャンルでありますし、かつ市場のニーズとしては大きいと感じていますので今後の研究室の活動に期待しています。
【体験が価値をつくり、ブランドを築く】
今日は3月11日。東北大震災から丸3年がたちました。復旧作業が進む一方で「復興はあまり進んでいない」という声も聞こえてきます。相馬・双葉地域の避難民の方など多くの方が自身の「ふるさと」を失ったままの状況だといいます。
今日の日中、フェイスブックのフォロアーの方に教えて頂いたものですが
という記事を読みました。復旧ではなく「開発」だ、という視点には多いに賛同。失ったものを単に埋めるという発想ではなくよりよい「創造体験」を目指すことには大きな意味を感じます。復興を通じて素晴らしい未来がデザインできるようになるためにも「エクスペリエンスデザイン」の知見が多くのプロジェクトへ広まればいいなと心から思います。
(ご案内いただきました安藤先生、吉橋先生、ありがとうございました!)