『うみねこのなく頃に』「EP7」感想・考察「EP8のエンディングをどうするのか」

概要

 07th Expansion 製作のPCノベルゲーム『うみねこのなく頃に散 Requiem of the golden witch』(以下「EP7」)についての感想です。魔王14歳さんが開催した「うみねこチャット」から、前エントリで書いた残りを整理して、ブログのエントリに起こしました。

(警告:以下、『うみねこのなく頃に散 Requiem of the golden witch』(EP7)の内容に触れています。)

『うみねこのなく頃に』「EP7」感想・考察

  • 「EP8」のエンディングをどうするのか
    • ウィルの「幻は幻に」で謎解きが一応されて、「EP8」への最大の興味は、エンディングをどうするのか。
    • 「EP8」は、全滅EDにもできるし、生還EDにもできる。全員ではなくても、何人かが生還するくらいなら、無理なくできそう。
    • ただ、ここまで魔法=嘘・装飾を重ねてきたので、エンディングに説得力を持たせるのが難しそう。
    • ベルンがさんざん暴露してきたので、たとえばもし、戦人が金字で「みんなハッピーでした」とか「EP8」で言っても嘘臭い。
    • 「EP7」で殺し合う親世代が描かれているので、全員生還でハッピーエンドには、違和感が残る。
    • さしあたり、実は天草が戦人で、縁寿を守ってバトル、という辺りが無難でミニマムに収めたED。でも、それだけでは竜騎士氏が満足しなさそう。
    • もし「EP8」でハッピーエンドにするなら、黄金を捨てて全員生還するのが、王道的な展開か。
  • 「作者のホワイダニット」
    • 「大きい猫箱」を用意して、戦人の帰還が1年ずれるとか、戦人が白馬に乗って来るとか、そうしたらあっさり全員生還EDにできる。納得できるかどうかは別として。
    • そもそも、夏妃が使用人と赤ん坊を突き落としたのは、偶然にも犯罪がばれない状況で悪魔が囁いたから、だったと思うが、それが起きない確率が約250万分の1、というのは恣意的。数字を出さない方が、まだ説得力があった。
    • カケラ紡ぎという可能世界の装置を持ってきた時点で、ハッピーエンドにするのは容易。だから、後は読者がどう納得するかという、犯人ではなく、いわば「作者のホワイダニット」が残る。
  • 「ホワットダニット」
    • ゲーム盤上の犯人・手口・動機とは別に、この物語が本当は何なのか、偽書や魔法だとしても、それは誰の幻想なのか、という謎が最後に残る。その問題意識を私は「ホワットダニット」と呼ぶ。
    • 「うみねこ」は、赤字以外は自由に嘘がつけるシステムなので、語り手が嘘をつくことで本当は何をしたいのか、という問題が生じる。
    • たとえば、真里亞のボトルメールは魔法の話、八城の偽書はその魔法を暴く話、戦人がGMの「EP6」は優しい話(殺人は狂言)になるとか。いずれも語り手の意識が反映している。
    • 全く魔法で装飾されていない真相、生の事件現場を最後に描くのかどうか。
    • ゲーム盤の外部がどうなっているか。たとえば、「EP3」の98年が現実だとしたら、「EP1」「EP2」のボトルメールについて、少なくとも絵羽殺害に関しては、虚偽だとすぐ判断できる。
    • 描いた分量からして、「EP3」の98年が最も現実味を感じる。だが、猫箱を大きくすると、絵羽が生存していない現実、というのもありえるのか。
  • ヤスの正体
    • ヤスの正体は紗音が本命だろうが、年齢的にヤスになれる嘉音、朱志香、(偽)戦人らにも、まだ可能性はある。
    • もし、ヤス=朱志香だとしたら、貴賓室の怪談の話は、上手いミスリード。
    • 「EP7」まで来て、ほとんどの人物が黒くなったが、朱志香は真っ白いまま。単なるブラフ用キャラかもしれないが、少し怪しくも感じる。
    • 金塊抱き込みによる共犯システムが露見した以上、親世代や使用人の誰が黒幕でも、意外感があまりない。
    • なぜ朱志香が怪しいかというと、いとこ組の中で朱志香だけが六軒島に住んでいて、紗音と同等の知識を得られるから。便利なポジションにいるので、やろうと思えば色々できる。たとえば、屋敷に仕掛けをするとか、ベアトリーチェの怪談を広めるとか。
    • 霧江が、朱志香の顔面を潰しているあたり、すごく胡散臭い。 前EPで霧江と朱志香の組み合わせで戦ったことと言い、何か含みを残している感じ。
    • クラウスと夏妃の不妊話があるので、朱志香の出生が絡めば、霧江との因縁は生じる。たとえば、ルドルフが朱志香の父親だとか。
    • 朱志香(と夫の男系の子)が次期当主になるのに、なぜか軽視されている。それに、朱志香は金髪だし、ベアトに似ている。金蔵とベアトの娘である可能性も残る。
    • ただ、真里亞=レナのように、朱志香=魅音も、初期ブラフの役割を終えた空気キャラ、という配役もありそうなところ。
    • それに、ノックス十条で、手がかりなき変装を禁じている。ノックスが全EPに適用されるかは不明だが。紗音−嘉音の入れ替わりは、さんざん伏線を入れているが、朱志香が紗音に変装するのはどうか。
  • 幻想キャラの正体
    • 幻想キャラの正体も、決着がついていない。ガァプの本体が誰かとか。
    • ガァプの本体が朱志香だったりすることも、ありえなくはない。
    • 七杭でさえ、杭だけではなく、使用人のモデルがいた。ガァプだけ純粋な想像というのは、少し引っ掛かる。
    • 自然現象はゲームで変えられないので、ラムダ=台風説は有力。
    • 天草が戦人っぽいので、八城が真里亞だと、スッキリする。真相を完全に知らなくても、アウアウは生き証人だから、ベルン=ボトルメールより上位になる。
    • 山羊は、爆弾の爆風か。爆弾というのが、一瞬にして全てを吹き飛ばすのではなく、段階的に爆発するタイプなら、山羊のような煙が追ってくるシーンを想定可能。
    • 黄金蝶のモチーフは、そのまま金塊なのではないか。ベアトの黄金伝説が一番のベース。シーンによっては、金塊による買収を魔法で装飾して描いた、という見方もできる。
  • 川端船長の怪しさ
    • 脇役の中では、川端船長は頭1つ抜けて怪しい。脇役の中では川端船長だけ、ここまで来て立ち絵が出ている。同一人物説によって島の定員を増やせば、川端船長が外部犯Xだとしても、赤字にもノックスにも抵触しない。実行犯になれる。
    • ウィルのイカリは、ウィルの本体が川端船長であることの証だとか。(SSVD(Steam Ship Van Dine)から、船→錨の連想でつけているのが本義だろう、という指摘あり)
    • 熊沢とワルギリアの例があるので、年齢は関係なく、若い頃の川端船長は、ウィルのようにイケメンだったとか。
    • 理御が、川端船長の協力を得て、絵羽と別ルートで生還していたりとか。
  • 「片翼の鷲」の紋章が付くルール
    • 源次が「片翼の鷲」の紋章を持っているあたり、まだ裏がありそう。紗音=嘉音がヤスと同一なら、片翼を継承することは自明だが、そのとき源次の存在が謎になる。(一応、金蔵直属の使用人は片翼をもらえるという設定はあるが)
    • 源次は、旧日本軍の残党とか、金蔵の親族とか、色々な余地がありそう。ただ、若金蔵と源次=ロノウェの髪の色からすると、親族という線は薄いか。
    • 幻想キャラの多くが、片翼の鷲を持つことに、何か深い意味はあるのか。できれば、片翼の鷲がつくルールに、一貫性があった方が良い。
    • たとえば、ボス級のベルンやラムダに片翼がつかないのに、なぜザコである山羊に片翼がつくのか。
    • 片翼の鷲の紋章は、クレルにはなくてベアトにはある。ヱリカが嫁ぐときにも、ドレスに片翼が付いた。幻想キャラであっても、やはり右代宮家と関係がありそう。
    • もしかすると、幻想キャラのうち、右代宮家の「家具」には、鷲がつくとか。七杭やウィンチェスターは家具だが、ガムテープやレシートはそうではない。
  • 動機に納得できるか
    • 「心をおそろかにするな」とウィルが言ったが、現時点で動機に納得できるかどうかはまた別。
    • たとえば、ヤスが殺人計画を立てた動機が、「EP6」のルーレットを回すためだったら、作品内の論理としてはよくても、現実的にはかなりシュール。
    • 単に金塊独り占めとか、右代宮家への復讐のため、という方が現実的な説得力はある。
  • 伏線の回収
    • 赤字ほど必須ではなくても、真里亞の薔薇とか、序盤の伏線を回収して欲しい。他にも、「EP4」で縁寿が見て驚いたものとか、ルドルフが戦人に「俺は殺されるかも」と言った伏線とか。
    • 金蔵の謝罪した途端に死亡、というのは幻想描写で、実際は殺していそう。赤字で「即死」だし。
    • 碑文の最後の4行も、どんでん返しの可能性が残っている。 理御=Lionが、碑文とか、ライオンの仕掛けとか、どっかに掛かってきそう。
    • エヴァンゲリオン=絵羽・縁寿・理御説を採用すると、たとえば理御も生還しているとか。 理御が天草だったりすると、辻褄は一応合いそう。
  • 人物の退行現象
    • 今回、理御とウィルがユーザに大人気だが、戦人と縁寿とか楼座と真里亞とか、レギュラーメンバーのドラマが、ほとんどなかった。
    • 戦人が悲しくない話をするという予告があったから、縁寿が「屑肉の山」のまま終わることはないだろう。が、真里亞が「精霊の子」のまま終わってしまう場合はありそう。そうしたら、救われない感じ。
    • 「うみねこ」がループ形式を採用しているために、真里亞という人物が、「EP2」ラストあたりをピークに、成長どころか退行しているように見えてしまう。
  • 『ひぐらし』との差異
    • 「雛見沢症候群」が未知の病気なのに対して、多重人格は既知の病気で、本格推理でもよく使ってるし、フェアネスのレベルではOK。
    • イマジナリーフレンドというモチーフは、多重人格とそんなに大差ないように思える。たとえば、「狐憑き」とか言ってもいい。
    • ただ、多重人格というより催眠術に近く、複数人物間で共有できるとしたら、ゲーム性が変わってくる。
    • 雛見沢症候群と違って、意図的な嘘が入ってくる、というのは『ひぐらし』との差異。
    • 『ひぐらし』の羽入は意志を持つ存在だが、その力を弱めたのが『うみねこ』の幻想キャラだとすると、構造の改変が興味深い。
  • 例外的規則について
    • 黄金の真実=金字がその場の全員が認めた真実だとして、それがEP8でどう活かされるのか。それとも、EP5のピンチを切り抜けるためだけに金字を出した、で終わるのか。
    • ウィルが紗音に嘉音を呼ばせるときにバグるくだりは、「EP6」の青字禁止赤字や、『ひぐらし』の羽入による富竹尾行禁止と同じ、例外的規則のようでスッキリしない。
    • 紗音がバグったのが、チェックメイトの警告だというのは、別のカケラから呼んで二人揃えてしまうと、同一人物説が消えるからだろう。だが、それがチェックメイトとなってもロジックエラーとならないとすると、やや恣意的に思える。
  • 赤字ラッシュを期待
    • 後半のEPは、全部ゲーム途中で終わっている。たとえば、「EP5」は、夏妃の汚名返上以外は、全く何も解決してない。
    • 「EP5」「EP6」は何も解決してないけど、ドラマ感はたしかにあった。「EP7」では、ウィルと赤字でバトルする相手がいないので、大人しい感じ。
    • 「EP7」からふり返ると、「EP6」は面白かった。全く先が読めず、最も『うみねこ』らしいEP。
    • 「EP8」は、「EP3〜4」みたいに、怒濤の赤字ラッシュを期待したい。
  • 「EP8」のスケジュール
    • 竜騎士氏によると、「EP3」は当初の予定では解答編に相当した内容を持ってきて難易度を下げたらしい。それで、先に真相を明かし過ぎて、後半停滞しているのかもしれない。
    • 「祭り囃子編」は『ひぐらし』8編中で最大のボリュームだったが、『うみねこ』「EP8」のボリュームは、次の冬コミまでが期間だと、そんなに増やせないだろう。
    • 真相を全部明かして構わないなら、真相は最初に設定しているだろうから、淡々と書けば間に合いそう。ただそれだと、竜騎士的な美学(クライマックスはこれでもかと盛り上げる)に反しそうでもある。
    • 延期して作業期間を確保するという考え方もある。しかし、「EP8」を次の夏コミに延期すると、『うみねこ』の次に控える何らかの新作が、連動してズレてしまいそう(たとえば再来年の夏コミとか)なので、延期したくないという思惑が、竜騎士氏にあるかもしれない。

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