5000円で都内、再発見。日常を旅する東京散歩で「駒場東大前~下北沢」をめぐる

日々同じことの繰り返し。そんな変わり映えのない日常を変えたいというならば、まるで日常を旅するかのように1日のプランを立ててみるのはどうでしょうか?

そんなかたにおすすめなのが、「東京での日常を、旅するように過ごしてみたい」と考えるメルマガ『中村洋太の「5000円で旅する東京」』の著者である中村洋太さんの楽しみ方。

毎週行くエリアを決めて、5,000円で都内を旅しているのだそう。今回はどこを旅したのでしょうか?早速チェックしてみましょう。

駒場東大前~下北沢を行く、5,000円で新しい出会い

最初のおでかけ場所として京王井の頭線の「駒場東大前」を選んだのは、Xのタイムラインに流れてきたポストがきっかけでした。

どうやらこの近くに「日本近代文学館」なる場所が存在し、2024年11月23日まで『編集者かく戦へり』という企画展をやっているらしい。

日本文学には疎いですが、物書きの端くれとして興味があります。よし、まずは駒場東大前へ行ってみよう。

そして周辺の良さげなお店を訪ねながら、下北沢方面へ歩いてみよう、と決めました。記事公開時点ではもう次の企画展に移っていますが、ご愛嬌ということで。

image by:中村洋太

朝7時45分、駒場東大前駅に到着。東口の北側から出ると、すぐ目の前に東京大学の「駒場キャンパス」がありました。東大生が最初の2年間を過ごすキャンパスです。

個人や少人数であれば、自由にキャンパス内を見学して良いそう。でも朝は少し急いでいたので、また次の機会にします。


image by:中村洋太

駅の南側の住宅街をしばらく歩いて、目的の 「GRATBROWN Roast and Bake」というカフェにやってきました。朝8時のオープンと同時にいちばん乗りで入店しましたが、続々とお客さんが入ってきて、すぐに席が埋まりました。

ソイラテ(580円)と、自家製の焼き菓子がおいしいと口コミにあったので、バターミルクビスケット(350円)を注文し、しばらく待ちます。

小さなお店ですが、とてもオシャレな空間でした。『You’ve Got a Friend』をはじめ、キャロル・キングの心地良いBGMが流れていました。

image by:中村洋太

温かみを感じるかわいらしいソイラテも、バターミルクビスケットも絶品でした。感動的なおいしさで、ひと口食べた瞬間、「この企画はきっとうまくいく」という予感がしました。「サクサク」と「しっとり」の加減が素晴らしい。

席の横に、このお店が紹介されている雑誌が置いてありました。伊田夫妻のお店だそうです。

「ご主人の晴彦さんが店内で焙煎するコーヒーと、妻の志帆さんが作るアメリカンスタイルの焼き菓子が人気」

クッキーやマフィンもいかにもおいしそうだし、早くも何度も訪ねたいお店になりました。

  • GRATBROWN Roast and Bake
  • 東京都目黒区駒場2-9-2
  • 駒場東大前
  • 定休日:あり(毎月変動)
  • 営業時間:8:00~16:00
  • 公式サイト
image by:中村洋太

続いてやってきたのは、いつも通っているスタバのパートナーさんがおすすめしてくれた 「ル・ルソール」 というベーカリーです。駅の西口からすぐのところにありました。

image by:中村洋太

「おいしいけど結構高め」と聞いていたので、パンをひとつだけ買おうと決めていました。ここも雰囲気の良いお店で、どれもおいしそう。

選んだのは、とりわけ目を引いたピスタチオクリーム(360円)。「ほうれん草?」と疑うくらい、色が濃かったです。

近くの公園で、早速食べました。こんな濃厚なピスタチオクリーム、初めてです。パンの生地も絶妙。満足です。

  • Le Ressort(ル・ルソール)
  • 東京都目黒区駒場3-11-6桑野ビル1F
  • 03-3476-1172
  • 駒場東大前
  • 定休日:月曜(月曜が祝日の場合は営業、翌日が休み)
  • 営業時間:9:00~17:00
  • 公式サイト
image by:中村洋太

そして 「日本近代文学館」 へ。観覧料は300円。特別展『編集者かく戦へり』を鑑賞しました。

本ができるまで、あるいは雑誌に原稿が掲載されるまでには、編集者と作家との間で様々なやりとりがあります。

現在であればメールやオンライン会議が可能ですが、昭和の通信手段は主に手紙。なので、この特別展ではたくさんの手紙が展示されていました。

作家の文体以前に、一人ひとりが書く文字に個性が感じられて、おもしろかったです。「あの人はこんな字を書くんだな~」って。読み取れない字、丁寧な字、わんぱくな字、かわいらしい字、いろいろありました。

坂本龍一の父、坂本一亀は「鬼の坂本」と呼ばれた有名編集者だった、ということも初めて知りました。三島由紀夫『仮面の告白』や小田実『何でも見てやろう』は彼が手がけたものだったのですね。菊池寛や齋藤十一、滝田樗陰らの手紙もありました。

なかには「小説を書くため旅に出たが、いい題材がなくて書けない、許してください」という作家の手紙も。やや渋い展示かもしれませんが、300円でこれだけいろいろ見れたら個人的には大満足です。

次の特別展は「三島由紀夫生誕100年祭」で、2024年11月30日(土)から2025年2月8日(土)まで開催されています。

また、施設内には「BUNDAN COFFEE & BEER」というカフェがあり、村上春樹『ハードボイルド・ワンダーランド』の朝食セットや、「シャーロック・ホームズのビールのスープとサーモンパイ」など、作家にちなんだメニューが特徴的です。

日本近代文学館の隣にある「旧前田家本邸 洋館」は、火曜閉館日のため残念ながら入れず。また次回リベンジします。

  • 日本近代文学館
  • 東京都目黒区駒場4-3-55(駒場公園内)
  • 03-3468-4181
  • 駒場東大前
  • 展示室観覧料:300円/中学生・高校生100円
  • 休館日:日曜/月曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)/第4木曜/年末年始/2月と6月の第3週(特別整理期間)
  • 開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
  • 公式サイト
image by:中村洋太

続いてやってきたのは、「日本民藝館」。民藝運動の父・柳宗悦の審美眼により蒐集された新古工芸品約1万7,000点を収蔵しています。

木の温もりに満ちた古民家のような建物で鑑賞できるのも良いところ。初めて訪れましたが、国内外の民藝品が見られておもしろい。一度は来る価値のある場所です。柳宗悦にも興味を持ちました。

2024年11月20日まで開催されていた特別展「生誕130年 芹沢ケイ介の世界(※ケイの漢字は金+圭)」に駆け込んできました。入館料は一般1,200円。

image by:中村洋太

昨年、東京国立近代美術館のコレクション展で染色家・芹沢ケイ介のことを初めて知りました。文字とデザインを日本的に融合させたユニークな作品が多く、好きになりました。彼の作品をたくさん見られて良かったです。

次の企画展は「日本民藝館展 – 新作工藝公募展 – 」で、2024年12月7日(土)から12月22日(日)の開催です。

  • 日本民藝館
  • 東京都目黒区駒場4-3-33
  • 03-3467-4527
  • 駒場東大前
  • 入館料:一般1,200円/大高生700円/中小生200円
  • 休館日:毎週月曜(祝日の場合は開館し翌日休館)/年末年始/陳列替え等に伴う臨時休館あり
  • 開館時間:10:00~17:00(最終入館は16:30まで)
  • 公式サイト
image by:中村洋太

ランチは、東大「駒場IIキャンパス」内にある、「食堂コマニ」にて。学食ですが、一般人も利用可能です。

日本各地の食材や発酵食文化を大切にしている食堂で、化学調味料を一切使わないのも特徴。使われている食材は、油や調味料に至るまで、その生産者さんが明記されています。安心・安全においしい食を楽しめる素敵なお店だと思いました。

image by:中村洋太

豚汁定食(小)は、おにぎり1個と豚汁がついて950円。「サバラー油」のおにぎりも、具だくさんの豚汁もおいしかったです。

  • 食堂コマニ
  • 東京都目黒区駒場4‐6-1 東京大学駒場リサーチキャンパス
  • 03-6416-8722
  • 駒場東大前
  • 定休日:土日/祝日/年末年始
  • 営業時間:ランチタイム 11:00〜15:00(14:30ラストオーダー)/ティータイム 15:00〜17:00/ディナータイム 利用規定あり。要相談
  • 公式サイト
image by:中村洋太

下北沢方面へ向かう途中で立ち寄ったのが、「COFFEE COUNTY Tokyo」という人気のカフェ。ここも雰囲気の良い空間。

満席でしたが、注文している間に席が空きました。エルサルバドルのドリップコーヒー(700円)と、クッキー(250円)を注文。

自家製のチョレートクッキーは、カルダモンが良いアクセントになっています。お店の売りは、ドリップコーヒー。

世界各地のコーヒー農園と直接契約していて、オーナーは1年の約半分を海外のコーヒー農園などで過ごしているとか。この日も、ペルーの農園に足を運んでいるそう。

エルサルバドルのドリップコーヒーは、浅煎りで酸味はハッキリしてものの、強過ぎず、バランスが取れています。

「様々な柑橘、アプリコットや無花果を思わせる果実感、ジューシーな酸に伴ってブラウンシュガーのような甘さが長く続きます。スムースな質感と甘さの余韻がこの土地のポテンシャル、エルナンデス兄弟(生産者)の丁寧な仕事を感じさせてくれます」

コーヒーの解説文は、おそらくオーナーが自ら書いたのでしょう。

実際の文章はもっと長く、生産された農園の風土や、生産者の人柄にまで説明が及んでいて、コーヒーへの強い愛情が感じられました。

  • COFFEE COUNTY Tokyo
  • 東京都世田谷区北沢1丁目30-3 1F
  • 03-5790-9909
  • 定休日:月曜
  • 営業時間:11:00~19:00
  • 公式サイト
image by:中村洋太

すぐ近くの小さな焼き菓子専門店「Gather」を覗いてみると、幸運なことに今日は営業日でした。このお店、土日を除いては平日は週一日しか営業していないそう。せっかくなので何かひとつ買うことにしました。

実はこの時点で、今日すでに4,690円を使っていたので、5,000円の予算だと残り310円ということになります。しかし、どうしても人気商品の「カルダモンバナナブレッド」を食べてみたかった。420円。

少しだけ予算オーバーしましたが、おいしかったので買って良かったです。このお店もイチ押し。

このお店がオープンしたのは、昨年10月。店主の女性に伺ってみると、それ以前は代々木八幡の「Little Nap COFFEE」で焼き菓子を提供していたそうです。いまも彼女のレシピが引き継がれているそう。

Little Nap COFFEEは、ぼくが読んでいた雑誌でも紹介されていました。「Little Nap COFFEE ROASTERS」と「Little Nap COFFEE STAND」の2店舗があり、日本におけるコーヒースタンドのパイオニアといわれる濱田大介さんが手がける人気店とのこと。チーズドッグもおいしいみたい。今度行ってみよう。

Gatherには、季節限定のスイートポテトブロンディなど、ほかにもおいしそうな焼き菓子が数種類並んでいました。インスタに営業日が載っているので、行かれる際は事前にチェックを。

  • Gather
  • 東京都世田谷区北沢1-30-8セブンハイム北沢101-B
  • 営業時間:11:30〜17:00(売切れ次第閉店)
  • Instagram
image by:中村洋太

下北沢の駅を通り過ぎて、この日最後に訪れたのは、2020年4月に開業した「日記屋 月日」。

先日、日経新聞の朝刊でも、このお店が紹介されていました。いま、日記本がブームで、作家さんが書く日記エッセイ本だけでなく、一般の方が自主制作する日記本も人気を集めているようです。

この「日記屋 月日」には、まさにそんな個人制作の日記本が多数置いてあります。いろいろと手に取ってページをめくってみると、なんだか他人の人生や生活を覗き見しているみたいで、とてもおもしろいです。

書き手としてもインスピレーションをもらえる作品ばかりでした。通常の書店でもAmazonでも買えないため、希少性があります。

image by:中村洋太

もう予算オーバーしたなかでしたが、お店の方のおすすめで、『夏葉社日記』(1,650円)を購入しました。これは別枠ということで。なんだかこのメルマガ、言い訳が多くなりそうです。

ぼくも日記本を出版してみたい、と思うようになりました。すべてを書かない、その塩梅が良いと感じます。ぼくの文章は、すべてを書き過ぎる癖があります。

でも日記本としては、もしかしたらもう少し抽象度を抑えた方が文も短くなるし、良いのかもしれない。具体的に書き過ぎない方が、より感性的な文章になるかもしれない。そんなことを感じました。

なお、月日ではコーヒースタンドも併設していて、コーヒーやビールも楽しめます。

  • 日記屋 月日
  • 東京都世田谷区代田2-36-12
  • 営業時間:8:00~19:00(18:45ドリンクラストオーダー)
  • Instagram

夕方、下北沢駅にゴール。今回の総額は、5,110円でした(日記本を除く)。次回もピッタリ5,000円を目指して頑張ってみます。

  • image by:中村洋太
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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エッセイスト、旅行ライター/1987年、横須賀市生まれ。早稲田大学創造理工学部を卒業後、旅行会社にて海外添乗員&旅行情報誌の編集者に。2017年よりフリーランスとして活動。自転車で世界1万km以上を旅(欧州12カ国、アメリカ縦断、台湾一周など)したほか、東京から博多まで1270kmを徒歩で旅した経験も。自主制作の本『海外添乗員という職業から学んだこと』『旅と書くこと』を販売中。

 

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