斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

なぜインフレ防衛のために株式投資がおすすめされるのか、会社決算から簡単に解説

日本でもインフレが定着したようです。

9月の消費者物価指数 2.9%上昇 食料品値上がり続く | NHKニュース | 消費者物価指数

デフレでありとあらゆるものが安くなり続ける時代を長く経験したせいか、インフレにまだ慣れない人も多いのではないでしょうか。

物価上昇が当たり前のことになると現金を保有し続けることがリスクで、防衛のために株式投資をした方がいいという話が出てきます。これは一応はその通りなんですが、理屈を分かっている人は必ずしも多くはないと思うので、せっかくなので会社決算も参照しながら簡単に解説します。

インフレと企業業績の関係

まず、物価が上昇しているということは、基本的に企業の売上も上昇していることになります。1年でチョコレート50gが100円から150円に値上がりし、販売数量が変わらなければ、売上は1.5倍になります。

ただ、売上が1.5倍に増えても、原材料のカカオや人件費がそれ以上に上がっていれば利益は増えませんし、そもそも商品が買われなくなると売上も落ちます。インフレでも業績が悪化する企業は存在します。

一方で、商品力があり、生活必需品の企業であれば、原材料費や人件費等の費用の上昇分をそのまま商品価格に価格転嫁した上で、同じ数量を売り続けることが出来ますから、売上だけでなく利益(ここでは分かりやすく営業利益)も上がります。

国内の食品会社の事例をいくつか紹介すると、山崎製パンは売上も営業利益も順調に伸びていて(元の営業利益率が低いから価格転嫁できれば急激に伸びる)、

【山崎製パン】[2212]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版

森永製菓も順調に業績が上向いています。

【森永製菓】[2201]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版

上場企業はそもそも選りすぐりの企業ですから、その中でも上位の有名企業であれば、このようにインフレ下で利益が増えている企業が多くなるのは理解しやすいのではないでしょうか。

ちなみに、日経225に採用されるような企業は更に選りすぐりだったりしますが、海外売上高比率が高い企業が多くあり、単純なインフレだけではなく、為替要因で株価が動く傾向があります。これはインフレの話とはまた違う話なので今回は詳細は触れません。

企業業績と株価の関係

ここまで来れば後は簡単で、企業業績が伸びることが予想されていれば、株価も伸びることになります。

「なぜ、企業の業績と株価が関係あるの?」と疑問に思う人向けに非常に簡単に解説すると、企業業績が良くなるということは、将来的にその会社に投資した人に還元される利益が増えることに繋がるからです。企業が儲からないと投資家にお金は還元できないわけですから、企業がたくさん儲かるようになれば、投資家への還元できる金額も増えるという、単純な話です。

実際、上で紹介した山崎製パン、森永製菓は利益も取れるようになった2023年半ば頃から株価も上向いています。

※Google financeで作成

そういうわけで、インフレ下だと優良企業は業績がプラスに働くので、ただ現金を置いておくよりも投資をした方がインフレ程度かそれ以上に増える可能性があるので、インフレ防衛のための株式投資がおすすめされるという理屈になります。

応用編

普通の金融リテラシーの人はここまででいいと思いますが、応用編としてもう少しややこしい話を書きます。

まず、インフレ防衛のための手段としては株式投資だけが正しいなんてことはありません。通常、インフレ下では金利も上昇しますから、銀行に預けたり、国債を購入したりすることで、多少の防衛にはなります。今だと日本国債の2年物の利率が0.92%になっています。

また、すべての企業がインフレ下で業績が伸びるわけではありません。日本の上場企業でもピンからキリまであり、価格転嫁ができない企業もあります。また、インフレ以外の要因で業績が上下する会社もあります。インデックス投資であれば大きなトレンドに賭けて投資する形ですから、あまり細かなことは気にする必要はないですが、個別株に投資する場合は、企業の個社の事情を理解しておく必要があります。

最後に、これが一番ややこしいですが、インフレしても理論的には企業の株価は上がらないという考え方があります。インフレする分、期待リターンも上がるからです。詳しくは次の記事をどうぞ。

あなたの会社の価値、インフレで目減りしてませんか?金利上昇期のバリュエーション再入門|徒然なるままに

締め

ということで、インフレと会社業績と株価の関係を簡単に解説しました。

応用編でもちらっと触れましたが、インフレ下での資金防衛方法としては株式投資がすべてではないですし、当然ながら投資は自己責任で、投資をしたことで資金が目減りすることもありえます。

私が今回紹介した企業と、そして株価のグラフの期間も恣意的に抽出したのではないか?と疑問に呈する人がいるでしょうし、そういう疑問を持つのは金融リテラシー的には真っ当です。

私個人はインフレが続くのが見えている中では、とにかく大きな買い物は早めにするようにしています。自動車とか家関係とかですね。後は、旅行にも思い立ったらすぐに行くようになりました。

これからインフレが当たり前になっていく中で、どう対応するかは色々な方法がありますから、一つの考え方として今回の記事を参考にしてもらうといいかなと思います。

以上、今日書きたかったことはこんなところです。ではでは!

※紙の本にもこの話は触れています。読んでみてね!