斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

著名経済学者が紹介しない、金融機関が儲からない&投資残高が激増している金融商品

はい、eMAXIS Slimシリーズです。

今年2月には投資信託の残高ランキングで、『eMAXIS Slim 米国株S&P500』が初めてインデックス型として首位を奪うぐらい、人気です。売り買いで手数料はかからず、手数料は信託報酬の年間0.09372%だけです。ちなみに、第三位になっている『eMAXIS Slim 全世界株式(オール)』の信託報酬は0.05775%。

投資信託の残高ランキング インデックス型が首位奪う - 日本経済新聞

合わせて4兆円の残高(=投資家による投資総額)ですが、運用している三菱UFJ国際投資にとっては売上20~30億円程度で、全然儲かっていません。

本日の記事は以上です。以下は、余談です。お好きな人だけどうぞ。

 

余談

こんな記事を読みました。

新NISAが始まっても投資に手を出してはいけない…経済学者が「老後に備えるならコレ」と唯一勧める金融商品【2023上半期BEST5】 金融機関の職員を手数料で食わせるようなもの | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

"小泉内閣・安倍内閣で経済政策の中心を担"った著名経済学者(68歳)の方が、銀行員は預金だけではなく保険や投資も営業するが、手数料が高く銀行員を儲けさせるだけだから、大人しく国債を購入したほうがいいという記事です。

この記事に対し、ネットではかなり批判的な意見がありますが、書かれていることはある意味で正しいです。銀行窓口で売られている金融商品は手数料が高いものが多いし、国債の金利は上昇傾向にあり、今ではとうとう0.43%という状況です。普通の銀行預金より全然有利で、リスクが嫌いなら普通に投資の選択肢になる。

変動10年「第162回債」 : 財務省

銀行で売られている金融商品がいかに手数料が高いかは、みずほ銀行の、インターネットでの個人の購入を"除いた"販売額ランキングを見ると垣間見れます。電話や窓口で、みずほ銀行が顧客に販売した商品のランキングですが、売買時に手数料がかからないノーロードのものは2つしかなく、年間の信託報酬が1%を超えるものがザラにあります。

投資信託ランキング | みずほ銀行

ランキングがこんなことになる理由は、銀行が儲からない商品を積極的に営業していないことが考えられます。何しろ、冒頭に紹介した、eMAXIS Slimシリーズは、日本の四大都市銀行であるMUFG、みずほ、三井住友、りそなの店頭で購入することはできません。グループ会社のMUFGでさえオンラインでのみの取り扱いです。

販売会社一覧 | ファンド | eMAXIS(イーマクシス)

eMAXIS Slimシリーズがいくら人気でも、販売会社の銀行に入るのは、年間の信託報酬の1/3ぐらいです。同じ額を売るにしても、信託報酬の率が違えば銀行への収入は10倍ぐらい違います。銀行からすると、儲からない商品を積極的に売る理由はないので、eMAXIS Slimシリーズをそもそも取り扱わないわけです。

冒頭に紹介した著名経済学者さんの記事は、恐らくご自身と同年代(60代以降)の人を対象にしていると思います。その意味では、eMAXIS Slimシリーズのような、最近人気になっている、四大都市銀行の店頭では購入できない、インターネットでの販売が中心の金融商品を紹介しないのは、よく理解できるところです。

一方で、最近は若い人を中心に銀行の店頭で金融商品を購入するような人は減っていて、オンライン中心のインデックス型ファンドは、eMAXIS Slimシリーズをはじめとして急速に残高を増やしていっています。

インデックス型ファンド、残高シェア25%突破 - 日本経済新聞

ご自身で金融リテラシーが低めだという自覚があり、「来年から新NISAが始まるらしいし、付き合いのある銀行や証券の店舗でどうしたらいいか相談しよう」と思っている人は、まずは、投資の勉強から始めるといいですね!

※まずはここから

補足

こういう特定の金融機関の金融商品を紹介すると、「お金を貰っているのでは?」「投資を推奨する裏があるのでは?」と思う人がいるのは理解できるので、ちょっと補足をしておきます。

私は特にお金を貰っていないし、他人に投資を推奨するつもりはありません。一方で、銀行や証券会社の店頭で、ぼったくりの保険や投資商品が売られているのは好ましいとは考えていません。

新NISA、回転売買の勧誘は処分対象 金融庁が監視強化 - 日本経済新聞

銀行や証券会社の店舗に行ったら、金融機関が儲かる商品を営業されるというのは、知っている人は知っているけど、知らない人はまだまだたくさんいます。外貨建て生命保険などという、邪悪な金融商品が、国民生活センターで注意喚起されるぐらいです。

外貨建て生命保険の相談が増加しています!(発表情報)_国民生活センター

実家の親と久々に話してみたら、トルコリラやブラジルレアルを銀行・証券のお勧めで買っていたなんてことは、世の中にザラにある話です。本当に酷い話。

なんだかんだでお金とまったく付き合わないで生きていくのは難しい世の中で、金融リテラシーを高めると生きやすくなる面があります。私は、一般の人よりは多少は金融リテラシーが高めなので、時々こういう記事を啓蒙目的で書いている次第です。