斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

自分がどう育てられてきたかを最重要視して子どもをどう育てるか考えるのは2つの観点で危険

たまたまネットで、

夫婦の妻に当たる人が、「夫と子どもを保育園に入れるかで対立してるんだけど、子どもが小さいのに母親が育てず保育園に通わせるのに納得できなくて、保育園を選んだ理由を教えて欲しい」と、意見募集をしているのを見かけました。

元ネタ貼ってもいいんですけど、ご本人がプチ炎上状態で針のむしろみたいになっていて、ちょっと攻撃的になっているので、紹介しません。何となく、発言小町の住民が外に出てきたような、天然の釣り師っぽいところもあるし。

それで、よくよくこの妻側の人が書いている文章を読んでいると、どうやら、自分は専業主婦家庭で育って、親の愛情を感じたから、自分の子どもも親の愛情を感じさせたくて保育園に通わせたくないという、自分のn=1の経験をかなり重要視して、子育てをしようとしているようでした。そして、夫のほうは共働き世帯で育って、保育園で育ったけど問題ないから大丈夫ということで、恐らくは妻に対して「保育園で育っても大丈夫だから、自分たちの子どもも保育園に入れさせよう(そしてあなたは働いてくれ)」とお願いしているっぽい感じ。

これ自体も一つの事例ではありますが、自分がどう育てられたかを軸にして子育てをしようとする人はしばしば見かけます。私自身も、「自分は周りにヤクザの子息がいる環境で育って何も困らなかったから、荒れた地域で子育てしても大丈夫」という考えでもって子育てしようとしたら、パートナーや周囲から「いやいやいや!」と止められたことがあります。

育てられ方の否定は自己否定に感じる

自分がどう育てられたかを最重要視して子どもをどう育てるかを考えるのの何が危ういって、夫婦で育児方針の擦り合わせが全然できないんですよね。何しろ、自分がこう育てられたから正しいという主張だから、私はそうは思わないと返すと、その人自身の生き方を否定するみたいになっちゃうから。

具体的に言うと、「俺は子どもの頃から親に殴られて勉強してきたから、子どもも殴って勉強させよう」に対して「そんなの子どもが可愛そうだよ。虐待だよ」と返すのは、「あなたは可愛そうな人で、親からされてきたのは虐待だ」という風に受け止められるんですね。

お互いに自己否定に走り出すと感情的になっちゃって、収束がつくのにかなり時間がかかりますし、結局は平行線になりがちです。

最初に紹介した元ネタの人も、子どもを保育園に入れている人たちに対して随分攻撃的になっちゃってるんですよね。たぶん、ご本人自身や、今まさにやっている子育て方法への否定と受け止めちゃっているんだろうなと思いました。

保育園派はマイノリティでなく共働き世帯はマジョリティな時代

あと、自分がどう育てられてきたかを軸にしすぎると、今の子育て環境が目に入らなくなりがちなんですよね。世の中大きく変わっているのに。

例えば、私が子どもの頃は保育園卒はマイノリティでした。しかし、今では保育園児は全国で2015年時点で1歳児で3割を超えていますし、3歳以上でも45%とほぼ幼稚園児と同じ割合です。

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※画像の出所は内閣府資料から

他にも、私が子どもの頃は専業主婦世帯が共働き世帯よりも多かったですけど、今では逆転しています。

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※画像の出所は図12 専業主婦世帯と共働き世帯|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)から

上の2つは代表的な分かりやすい統計上の話ですけど、もっと身近な話をすると、子ども用紙おむつが普及したのは1970年代の後半で、私が子どもの頃は布おむつが主流でした。「私は布おむつで親の愛情を感じたから、子どもも布おむつで育てたい」というのは否定はしないですけど、布おむつはつけるのも時間かかりますし、洗濯も大変ですから、私はやりたくないです。

自分がどう育てられたかに固執しちゃうのは仕方がないけど、子育て環境は時代によって大きく変わるんですよね。

締め

せっかくなので、もっとマクロ的な話もしてみると、日本のGDPが中国に抜かれたのは記憶に新しいですが、このペースが続けば、あと10年ぐらいで中国のGDPはアメリカを抜いて世界一位になります。

他にも、私が子どもの頃は外国人労働者は数万人いるかいないかぐらいでしたけど、安倍さんが首相になってからは急激に増えて130万人ぐらいになっています。コンビニだけではなく、製造業でも農業でも外国人労働者が重要な働き手になっていますよね。

子育て環境が変化するのと合わせて、世の中のトレンドも大きく変わっていっていますから、どう子育てをしていいかはかなり不安を覚えるところであり、だからこそ、自分がどう育てられたかを軸に据えたくなるのも致し方ないように思います。

結局のところは、どう育てるかというのは、自分たちの家庭環境によるところが大きいですよね。あとは、保育園でも幼稚園でも、地域でも、それぞれの園でも、それなりに違いはあるので、一概にこうだとも言えませんし。

他人の子育て方法は気になるけど、自分たちの置かれている環境を整理するのが最優先だと私は考えています。