再びパリ

戻りは1人でした。成田より飛び立って香港経由でCDG。巨大な空港のなかでも今までで一番地味なところに飛行機が着いて、RERで北駅まで出て、パリのわが家へ。すっきりした部屋の姿をみて、東京の実家と比べたら余計なものが限りなく少ないこの部屋の有り難さを噛み締める。せっかく部屋がきれいなので、荷解きしてシャワーを浴びて洗濯もさっとすませた。冷蔵庫がからっぽだから、あとでバターからなにから買いにいかないと。

佐藤真さんのこと

きのう夕方、佐藤さんの近況を話してくれたばかりだった友人に、成田の搭乗口から電話をかけ、訃報を伝えた。涙が止まらなかった。
まだとても信じられず、どう受け止めていいか、途方に暮れています。
…私が佐藤さんに出会ったのは、アテネフランセで佐藤さんが「ドキュメンタリー映画の地平」の特集上映をした時のこと。
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/2001/schedule0102032001.html
どれを観てもびっくりするほど面白くてたまらず通い出し、最終日の「まひるのほし」の上映後、打ち上げの飲み会にちゃっかり参加したのが最初の出会いだった。その後しばらく、気がつくと佐藤さんのいる場所にいた。都内の大学でやっていた夏休みの集中講義も聞きに行ったし、山形映画祭にも行った。佐藤さんの近くにいることで出会えた映画、行き着いた場所、そこで生まれた出会いと対話、全部、大好きだった。
まだ思い出と呼ぶほど遠くなってはいなかったし、生活が変わりなかなか会えなくなってもそれはまだ続いていると思っていたけれど、佐藤さんとの時間はこれで終わってしまった。突然、まさか、のかたちで。映画が、書籍がのこったとしても、そこからどうしたって始めたくなる対話が、消えた。
去年の春、サイードについてのドキュメンタリー映画「OUT OF PLACE」の上映会でご挨拶したのが、言葉を交わした最後になってしまった。

ドキュメンタリー映画の地平―世界を批判的に受けとめるために〈上〉

ドキュメンタリー映画の地平―世界を批判的に受けとめるために〈上〉

ドキュメンタリー映画の地平―世界を批判的に受けとめるために〈下〉

ドキュメンタリー映画の地平―世界を批判的に受けとめるために〈下〉

アテネフランセの上映と共に、教科書のようにして読んだ本。
たくさんの人と出会い、真摯に向き合いながら映画のことをしている人だった。若い人との関わりもとても多かったと思う。いま思いを同じくしている人も同じだけあちこちにいるはず。
http://ameblo.jp/yukiko-m/entry-10046199669.html
http://kutyufish.exblog.jp/6416146
こうやって書いていても、どうしても信じられない。佐藤さんの大きな姿が、やさしい声が、見え隠れしていた知性が、もうどこにもないなんて。