ブレイクコアとポップミュージック
ポップミュージックに対する "飽き"
Tigerbeat6 を率いる KID606 は昔 "閉塞したポップミュージックシーンに対するアンチテーゼ" と自らの音楽のスタンスを位置づけていた。名物である$マークの付いた7インチレコード、いわゆるチャートイン音楽を無断で様々なブレイクコアクリエーターが非情なまで徹底的にハードコアに変えている。ここから KID 606 のポップミュージックに対する深い愛情が現状のポップミュージックシーンに対して一種の悪意なき助言行為として形を変えて行き着いた様子が分かる。物の見事に原曲の展開を壊し、テンポを極端に上げ、ボーカルを切り刻みながら新たなポップ?を提示する$シリーズを聴いていると不思議と原曲以上にポップな高揚感に包まれる奇妙な現象が起きる事もある。
ukadapta.com | Music Analysis : Break Core vol.1
00年以降で僕が一番影響を受けたジャンル、ブレイクコア。語りたくなったので需要あるかしらないが語ります。一見するとこのジャンルは他のクラブミュージックとは明らか無いごった煮感と
いつまでたっても実態がつかめないもどかしさ。世界同時多発的でありながら、主なアーティストも良く分からず何処のジャンルから生まれたのかすら謎。鍵を握るのはP2P(ファイル共有!)とエレクトロニカとハードコアテクノそしてポップミュージック。なんだろなーこの音楽はなんだろなー音楽はなんだろなー。分かる事。クラブで踊るとめちゃくちゃ気持ち良い。速い!密度濃い!嘘臭い!鮮やかな90年代前半のハードコアシーンに反抗する様に生まれたPraxis(レーベルオーナー来日中!?)その他のダークサイドインテリ密教系エクスペリメントミュージックの数々の影響が大きく見えるわけですが、それだけでは確実にシーンはここまで大きくならなかっただろう。むしろ、僕が大きく共感するのは2000年以降に突如ドドドットと出始めたポップミュージックをからかうアーティスト達。あの頃はあれが当たり前の事かと思っていたが今冷静になって振り返るとあれは確実におかしい事だった。新人アーティスト達が毎月激しい音をフリーで放出し、レコードが世界にばら撒かれた。どれも革新的で素晴らしかった。テクノロジーと素直に付き合ってる気がした。気が狂ってた。今ブレイクコアと素直に呼べる音楽は下火だと思う。実際にそう呼ばれるレコードは減ってきている。だがしかし、それは大きな問題ではない。ブレイクコアはブレイクコアと呼ばれたを超えダブステップ、エレクトロニカ、ガバ、ハードダンス、ジャングル、パンク、なんとかかんとか、になっている。ブレイクコアという名前を与えられた時よりも、もっと分かりにくくなっている。かつてブレイクコアだったアーティストはブレイクコアの攻撃性を潜めながら、ブレイクコアと呼ばれた前の用に好きな音楽を作っている。スバラシイ!
話がそれたぞ!ブレイクコアとポップミュージックについて話す。ギークでナードな、KID606は
規制のゆるいニュージーランドのレーベルViolent Turdからラジオスターの悲劇ネタの「MP3 Killed the CD Star」をリリースしたのが2002年。SickboyがQUEENのBohemian Rapsodyをサンプリングした「Bohemian Crapsody」をリリースしたのが2004年。Shitmatは機関車トーマスのテーマのサンプリングし、Maladroitはゴーストバスターズのテーマを切り刻んだ。彼等はもちろん日本のポップミュージックにも反応している。NOIZE CREATORは松浦あやをサンプリングし、SOCIETY SUCKERSは早坂好恵をサンプリングしてついこの前レコードが出た。DROONは来日して何故かモーニング娘をかけまくり、CardopusherはPerfumeをついこの前のライブでネタにしたとかしないとか。アーティストの名前にもそれは現れていて、Duran Duran に一つDuranを足した、Duran Duran Duran。Donna Summerを丸々パクッたDonna Summer(今はJason Forrestに改名)。
様々なブレイクコアアーティストに見られる、ポップミュージックへの愛憎。ポップミュージックが解体され、高速ブレイクビーツがぶっかけられ、様々なエフェクトを通り抜け、組み立て直され、ダンスフロアへ放出された時の高揚感はそのネタを知らない知っているに関係なく、やはり凄まじい。それの虜になるのも良く分かる。
一つの音楽形態に固執せず、ポップミュージックからノイズエクスペリメントはたまたディスコ、ジャングル、ブレイクビーツ、民族音楽、パンク、ハードダンスその他様々な音楽を均一に見て、ダンスフロアでの効率のみを考え横断してポジティブに盛り上げる。インターネットでポップミュージックをほとんど聞ける時代になった今の時代に生まれるべくして生まれた音楽だろう。権利の問題は置いておいて、むしろ著作権に反するイリーガルさすら、ダンスフロアのその一瞬盛り上がりに全てをかける後にも先にも何も残らない材料に変えてしまう。そんな音楽が僕は大好きだ。
Notes on Breakcore
再掲載