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【書評】陸・海・空の進化の理由『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』

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脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年

 

 

すんごい。知的興奮の宝庫。

タイトルのとおり、脚、ひれ、翼という「生物がその場から異動するために使う器官」がいかにして進化してきたかについての一冊。

進化は偶発的に起こるものだ。僕も大好きな『ワンダフル・ライフ』の著者である生物学者のスティーブン・ジェイ・グールドは、仮に生命の誕生から進化の過程をもう一度やり直したら今とは違う生物界となっているだろうと断言した。
つまり今の生き物の進化はすべて偶然によるもので、そこに必然性はないとグールドは言っている。

しかし、本書ではそれに真っ向から対立し、生物の運動器官の進化には必然性や明確な理由が存在しているということを、物理学を軸に解き明かしていく。なぜ、その形に進化したのかは、説明できるということだ。

そもそも人間は二足歩行だが、なぜ二足歩行なのか、四足歩行や翼による飛行とならなかった理由について、その生き物が生活する周囲の物理的な環境による進化の理由と、人間のの脚がいかによくできているかという説明を合わせて展開することにより、人間が歩くに至った要因を解説していく。

ほかにも、

・鳥などの飛行する生物は滑空から進化しており、樹上から逃げたり移動距離を稼ぐ行為から進化したであろうこと

・しかしその飛行についても、鳥の羽毛やコウモリの翌膜など複数の方法があり、それぞれについて進化の過程に物理的要因があること

・魚がひれで泳ぐ→待ち伏せ捕食をする魚が獲物に近付くためにひれで海底を歩行するようになる→ひれが四肢になることにより水から陸に上がる生き物が生まれてきたであろうこと

・さらには陸上に適用するために肺が消化器から作られたであろうこと

そういった進化の過程を物理と遺伝子レベルの解析で解き明かしていく。

個人的に目から鱗だったのは、「脳は考えるための器官じゃない、移動を制御するために器官だ」ということだ。そりゃそうである。人間は思考や自我があるが、昆虫などは視覚や聴覚などからの情報をもとに移動の方向や体の制御をコントロールしなければならない。
人混みを歩いたり自転車に乗ったりといった、周囲や自分の状況に気をつけて体をコントロールする必要がある移動は、何気なくやっているが非常に複雑な情報処理能力が必要になる。脳は移動するためになくてはならない重要器官なのだ。

とにかく生き物をありとあらゆる角度から「この形はこういう理由でできた」と解説してくれる本書。生物学と進化について少しでも興味があるなら、絶対損はしないので手にとってみて欲しい。