
いかに転載する拙訳は,2004年に刊行された『共和国ガイド』の一項目。この本は,中等教育教員の啓蒙のために国民教育相が編集したもので,フランスの知識人がわかりやすい言葉でフランス共和主義を解説したものである。現在の問題を理解する上で役立つと思う。
2015-01-14 09:48:26
1905年12月9日付けで公布された共和国の重要な法は教会と国家の分離に関わるもので,フランスにおける「共生」の基盤である。この法によって,われわれの社会制度に非宗教性の原理が根付いたのである。
2015-01-14 09:48:44
この法は,3つの分離しがたい価値観を規定するもので,共和国契約の親石となっている。まず良心の自由があげられる。これにより,市民一人一人は自分にとっての精神的あるいは宗教的生活を選択することができる。次に,精神的,宗教的信条についての権利の平等があげられる。
2015-01-14 09:48:56
これはあらゆる差別や制約を禁ずるものである。最後に政治権力の中立性があげられる。これは精神的,宗教的分野へのあらゆる政治的介入を禁ずることで,政治権力の限界を認めている。
2015-01-14 09:49:01
1905年の法は市民権と宗教的帰属を分離するよう主張しているのである。フランスはカトリック国家としての自己規定をやめたのである。
2015-01-14 09:49:06
この分離は多くのフランス人に痛みを与え,多くの論争を巻き起こしたとはいえ,この闘いを通じて非宗教性の原理は共和国の共有する価値観へと変容するに到った。
2015-01-14 09:49:11
ところが,1905年以降,社会状況は変化した。移民の影響のもとで,フランスは思想的,宗教的領域において多元的な国になった。このことは社会の多様性を尊重することによって,統一を作り上げることを意味する。
2015-01-14 09:49:15
非宗教性の原理の名のもとにフランスが新たな宗教の受け入れを認めなければならないのであれば,その宗教もまた共和国の価値観を十全に尊重しなければならない。このような条件のもとにこそ,その統合が成功するのである。
2015-01-14 09:49:20
なによりも国家こそが,さまざまな宗教や精神的グループ全体との関係を考慮に入れて,すべての人々が自分たちの意見を表明できるよう監視する使命を持っている。
2015-01-14 09:49:45
いかなるグループ,いかなる共同体といえども,なかでも出自を理由として宗教的帰属を誰であれ,課することのないよう,国家は監視しなければならない。非宗教性の原理とは差別に対する闘いの前衛なのだ。
2015-01-14 09:49:50
だが非宗教性の原理は,これと同時に兄弟愛でもある。なぜならば,これは異なる文化や思想,宗教を認め,尊重するためであり,すべての人々が互いを尊重し,いくつかの価値観へ共に結びつくことによって,共生を可能とするものだからである。これはさまざまな使命の中でも最も高貴なものである。
2015-01-14 09:50:03
われわれを団結させるものは学校で学ぶ価値観だ。この点で,子どもや青少年を受け入れる学校は特別な空間である。学校は子どもに知的道具を与え,それにより子どもは,自分や親の出自や信条がどのようなものであれ,啓蒙された市民となり,互いの違いを乗り越え,共和国の価値観の共有を学ぶのである。
2015-01-14 09:50:15
このために,学校はこの世界からの避難所でないにせよ,「怒り狂う世界」から守られていなければならない。学校は,分裂をもたらす紛争や,相違を誇張する行動やしるしを前にするもののの,共和国を作り上げる価値観や意思,夢を実現する共同体へ貢献をもたらさなければならない。
2015-01-14 09:50:21
『現代フランス社会における「ライシテ」概念の変容』 - 満足圭江/東洋哲学研究所 bit.ly/1zcIufE
2015-01-15 02:44:21