
オーディオドラマに関連する昔話。笹本はその昔、ARIELのカセットブック(そーゆー時代だった)という仕事をしたことがある。ソノラマ文庫で売り出し中だった小説をカセットブックつまりオーディオドラマ形式にして売ろうって企画。
2012-12-07 02:03:59
なんせもう20年以上前の話ですからねえ、キャスト凄いよ。林原めぐみ、水谷優子、富沢美智恵がエリアルパイロットの三人娘、宇宙人は塩沢兼人に平野文、デモノバ役なんか山寺宏一と来たもんだお立ち会い!モブ役に素敵な声の新人がいて気になって訊いたら「今度デビューする三石琴乃です」とか。
2012-12-07 02:06:49
オーディオドラマの演技する役者はいいんだ、今も昔も声優の層は厚い。問題はシナリオ書くこっち。なんせ笹本、アニメやまんがみたいに日常的にラジオドラマに接してた訳じゃありませんからね。そもそもオーディオドラマというものに関する素養がない。
2012-12-07 02:08:09
なんか参考図書でもないかなあと思って、本屋でたまたま買ったのがもうタイトルも覚えてないけどアメリカ産の訳書のラジオドラマの書き方の教科書。こいつが凄かった。例として出てくるのが「五大湖をスポンジケーキで埋めて軍のヘリでクリームトッピング。TVじゃ絶対出来ない!」
2012-12-07 02:09:58
いまならCGでなんとかなるかも知れないけど、でも確かにラジオドラマなら頭に出来た池に身投げすることも、天地を丸めて呑む人を鼻毛の先でつつくことも出来る。その教科書に書いてあったことはそれだけじゃない。ラジオドラマなりの細かい技術もいっぱい開陳されてた。
2012-12-07 02:11:15
まず書いてあったのは、「ナレーションで説明するのは最悪の手法である」じゃあどうすればいいか。細かい情景描写のための音を付け加えるんですな。具体的に行こう。「笹本は喫茶店に入った。編集Aが待っていた」これをラジオドラマ風に音だけで表現するにはどうするか。
2012-12-07 02:13:20
「おれは喫茶店のドアを開けて中に入った」こういうモノローグは悪手である。もっとうまくやろう。まずドアを開ける音、だけじゃ解りにくいからそれにからんころんみたいなドアチャイムを付け加える。「いらっしゃいませ」ウェイトレス役に言わせる。「待ち合わせですか?」さらに姑息な技術を使おう。
2012-12-07 02:15:47
「いらっしゃいませ。あら笹本さん、待ち合わせですか?」ウェイトレスニコの台詞言わせれば入ってきたのが笹本だと解る。「おはよ、そう、マスター、モーニングセットとブレンド」おれがこう返事すればそこが喫茶店だと解るかな。で、編集の台詞「ああ、笹本さん、こっちのテーブルです」
2012-12-07 02:17:21
「ああ、編集Aさん、お待たせしました、ちょいと寝坊しちゃって」がたがたと座る音、と。こういうふうに音を重ねていけば、喫茶店で笹本と編集Aが会っている、モーニングで寝坊するような時間だとそういう表現が出来るわけだ。
2012-12-07 02:18:27
画面のあるドラマなら絵で見せれば済むことを、ラジオドラマは全て音で説明しなければならない。それはもちろんそれなりの技術が必要で手間がかかるけど、その代わり「絵にも描けない絶世の美女」も「敵が七分に星が三分」も表現出来る。いい教科書に当たったもんだよ実際。
2012-12-07 02:20:28
アメリカには素人向けの小説の書き方とかシナリオの書き方とかの本がいっぱい出てて、たぶんそんな一冊が運良く翻訳されてよく行く本屋に並んでたんだと思う。ちゅーわけでオーディオドラマのシナリオは画面のあるものより様々な技術が必要になりますが、いろいろ楽しいよ。
2012-12-07 02:22:31
「なんでも表現できる!」という思い込みと声優の演技力があれば大抵のことは表現出来ます。音だけなんで予算制限は画面のあるものよりはるかに緩い。昔っから傑作の生まれる条件は低予算、無名、若いスタッフと決まってるが、そのうち一つが最初っからあるんだから強い。
2012-12-07 02:25:22
今どき「オーディオドラマ作りたいんです!」って人は少数派だとは思うけど、でも技術は覚えておいて損はない。表現の幅が広がるから。小説は読ませるもの、画像作品の脚本は見せるもの、オーディオドラマは聞かせるもの、この違いを心得ておけばいろいろ役に立つであろう。
2012-12-07 02:32:33
「ラジオドラマのスタッフがもっとも難しいという音」それは、静寂だそうです。開演前の音楽会場、無人の倉庫、夜の博物館、誰もいない教室、それぞれ全部違う音作るからねえ、彼ら。んじゃおやすみなさい。静かな夜を。
2012-12-07 02:45:30