
めちゃ面白い。「それでも叱ることには意味がある」という執着をぶった斬ってくれる本。叱っても人は育たない。「叱る」を必要悪だと思っている人は多いが、間違いだ。以下の言葉はむしろ危険。①「怒る」はダメだが「叱る」は必要。②叱らないと打たれ弱い人間になる。③叱らないと学ばない――そろそろぼくらは幻想を手放すべきだ。「叱る」は想像以上に効果がない。 叱られるとぼくらは萎縮する。脳の防御システムが作動する。野生の世界ならそれが正解。命の危機にあっては、悠長にものを考える時間などないのだから。けれど、防御モードに入るとぼくらは知性や理性などの知的活動、しっかり考え・検討することができなくなる。で、結局やってしまうのは、とりあえず「言うことを聞く」といった即興反応である。「勉強しなさい!」と声を荒げられたらサッと勉強に取り組む、みたいに。 しかし、その時ぼくらの脳は「学ぶ」力を著しく減衰させている。学びの効率が悪くなっている。 「叱る」では「やる気」は出ない。「叱る」が本能的に有効なのは、何かを緊急的に「させない」時だけである。子どもが刃物で遊んでいたら、叱って止めるだろう。「叱る」が機能するのはそんな時。意欲を持って何かをさせようと思ったら、「叱る」はむしろ逆効果になる。 しかも、「叱る」には依存性がある。SNSで他人を呵責するとめちゃくちゃ気持ちがいい。人には「よくない人を罰したい」という欲望があるのだ。それと同じ原理で、実は「叱る」も一種の快楽になる。だから「〈叱る〉依存」が始まってしまう。加えて、「叱る」は大抵、相手の成長を願って行われる。ほとんどの「叱る」は「あなたのため」という仮面をかぶる。だから、むしろ「いいことをしている」と思って、ぼくらはどんどん「叱る」に沼る。これは危険だ。 いよいよぼくらは「叱る」が成長の阻害要因になることを確信すべきである。 「叱る」が本質的にヤバイのは、「相手をコントロールしたい」という欲に根ざしている点である。「人は変えられない。変えられるのは自分だけだ。」としばしば言われるけど、そう言っている人が別のところでは人を叱っていたりする。だが、いくら言い訳してもムダだ。その行為は「相手を変えよう」という不毛な行為でしかない。 では、「叱る」以外に人の育て方はあるのか? 実は、この「別の方法」に想像力が及ばない人が多いことが社会的な問題である。だからこの本が書かれたのだと思う。別の方法、たくさんありますよ! と。 たとえば――教育現場で何かあった時に、叱るのではなく「どうしたの?」「これから、どうしたいかな?」「先生に手助けできることはある?」と聞く(教育者・工藤勇一氏@KudoYousan)。 あるいは、職場で何かあった時に、叱るのではなく「フィードバック」をする。評価を伝えるのではなく、そこで起こった客観的な事実 を伝え、相手をフォローする(経営学部教授・中原淳氏@nakaharajun)。 スポーツの現場なら、「叱って苦しい状況に追い込むこと」と「厳しさ」をきちんと区別して、「こうしろ!」と命令するのではなく、「どうしたらいいと思う?」等と、相手が自分で考えるよう導く(元バレーボール日本代表で母の大山加奈氏@kanakanabunが教わってきたこと。ちなみに、この対談箇所では、為末大氏@daijapanの「小中高ぐらいまでだったら、叱る指導で勝てちゃうだろうけど、叱る指導を受けていた選手の中から、オリンピックで金メダルを獲る選手は出てこないだろう」という印象的な言葉も紹介されている)。 または、子育ての現場等で、アイメッセージを伝える(経営者で編集者の佐渡島庸平氏@sadycork)――相手がどうこうではなく、「こうしてくれたら自分は嬉しい」のように自身を主語にしてメッセージを伝えることをアイメッセージと言うが、佐渡島さんはその語りで、学校に行かなくなった息子さんと「価値観」を共有した。彼は「学校に行くことが偉いとは考えていない。自分に嫌なことがあって破裂した感情を、(◯◯=息子さんは)ちゃんと自分で立て直した。大人でもそれができない人がいる。尊敬するよ」(趣意)と伝えた。すると、息子さんは学校に行った――。 その上で、著者いわく、成長にとって大切なのは、相手を「冒険モード」に突入させることだという。それは何か? ぜひ本書を読んでたしかめてみてほしい。 ※「叱る=厳しさ」という、人を盲目にさせる思想については連続投稿に引用を紹介する。 『「叱れば人は育つ」は幻想』@PHP_Business 著者:村中直人@naoto_muranaka
2024-08-07 06:42:32

「叱ることがすなわち厳しくすることだ、という認識自体がそもそも誤りです。『厳しさ』の本来的な意味とは、『妥協をしない』ことや、『要求水準が高い』ことだからです。要求水準を高く保つことは、相手にネガティブな感情を与えなくても可能です。『苦しみを与える』も同じことで、厳しくする=『叱る』『苦しみを与える』ではないのです」村中直人@naoto_muranaka『〈叱る依存〉がとまらない』161頁
2024-08-07 06:46:19みんなの反応

@nobushiromasaki 【よくない人を罰したい】をやると気持ちいいはそうかも😂 が、よくないの定義が不明すぎて、そっちの定義を押し付けられても、定義ちゃうからなぁ🧐言われても なんの改善にもならんかと😂 💢怒るは感情。 ここの場では【ルールがある】ことを相手のレベルに合わせて言うのが 改善の一歩🧐定義合わせ
2024-08-07 09:40:38
@nobushiromasaki この本はまだ読んでいないけれど,投稿の内容をZ世代にやったら,「自分で考えろとか言わないで,早く答え教えてよ」といわれそうで怖い。
2024-08-07 10:34:07
@nobushiromasaki 社会に出たら、現実として叱る人はいます。 その社会に「変わる」必要性を訴えるのは理解できますが、それよりも先に子どもたちが社会に出ることのほうが早いわけです。 叱られることに慣れていない子どもたちは、どうしたらいいのでしょうね。どう自分を守ったらいいのでしょう。
2024-08-07 10:24:50
で、それに対する科学的な反論のアプローチもあったような。この本読んで、これこそが真実みたいに思い込んじゃうことに、叱られた叱られていないは関係ないんだろうにゃあ。 x.com/nobushiromasak…
2024-08-07 12:15:44
今の教育現場は、「叱る」「怒る」というより、「説得する」だからね。 「褒めながら唆す」というのもよく使う手。 良いのか悪いのか…🤔 x.com/nobushiromasak…
2024-08-07 11:03:42
「(自分も含めた)人に厳しい」とは、安直な即興な反応を引き出すことではなく、"本人が願うことに対して自らの頭で思考し行動し学ぶこと"から安易に逃さず共に向き合うことなんだなと思う。自ら答えを出さなきゃいけないという意味において、とても厳しい。 x.com/nobushiromasak…
2024-08-07 10:16:40この考え方は人による

たぶん人による。 「不遜なものを叱るな。知恵のあるものを叱れ」 「聖なるものを犬にやるな」 人間には人間のように教えれば理解するものと、 犬のように鞭で叩いて餌をやらねば動かない人間がいる。 要するに日本人の盲点は「人類は努力によって平等だと勘違いしているところ」なのである。 x.com/nobushiromasak…
2024-08-07 11:32:03「叱る」が本能的に有効なのは、何かを緊急的に「させない」時だけである

「叱る」が本能的に有効なのは、何かを緊急的に「させない」時だけである。子どもが刃物で遊んでいたら、叱って止めるだろう。「叱る」が機能するのはそんな時。 x.com/nobushiromasak…
2024-08-07 12:04:39村中直人先生より

『「叱れば人は育つ」は幻想』、本日発売日です。 各種インターネット書店でご予約頂きましたみなさま、半日お手元に届くかと思います。毎回ながら、我が子を送り出す気持ちです。よろしくお願いいたします。 x.com/naoto_muranaka…
2024-07-17 11:17:02
『「叱れば人は育つ」は幻想』というタイトルの本を出版します この本は〈叱る依存〉の続編で、超豪華な四名のトップランナーと「叱る」について赤裸々に語り合った対談集です 元麹町中学校校長の工藤勇一先生@KudoYousan には学校教育現場における「叱る」への過信と〈叱る依存〉、そして課題解決のための話し合いの技術について語っていただきました 経営学者の中原淳先生@nakaharajun には、企業のマネジメントにおける、「発憤幻想」や「修羅場イリュージョン」、そこから抜け出すための「フィードバック」の技術を語っていただきました 元全日本バレーボール選手の大山加奈さん@kanakanabun には、スポーツ界にはびこる「苦痛神話」の根深さと、ご自身の体験からくる子どもたちへの切なる願いを語っていただきました コルク代表の佐渡島庸平さん @sadycork には、ご自身の「叱る」を手放す決意の経緯と、創作活動や経営における「前さばき」、さらにはウェルビーイングのあり方について語っていただきました 一つ一つの対談がとても学びが多く、私にとってとても幸せな時間の連続でした。その結果、まったく異なる領域、視点からなるそれぞれの対話が、一冊の本になるときに一つの大きな物語のようにも感じられる不思議な、そしてとても魅力的な本になりました ぜひ多くの方にお読みいただきたいと心から思える、オススメの一冊です。どうぞよろしくお願いいたします amzn.to/4bsl6Pi
2024-07-06 21:56:00「〈叱る依存〉がとまらない」の続編
部下との信頼関係

最近、部下が「〇〇課長(私)じゃなかったらとっくに辞めてました」とうれしい事を言ってくれた。 実は私は昔は辛い思いをしなければ成長できないと信じていた。 それが間違いだと教えてくれたのが村中先生の前著「叱る依存が止まらない」 この本が無ければ部下と信頼関係が築けてなかったと思う。 x.com/naoto_muranaka…
2024-07-18 22:28:08