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エンタープライズ・アジリティについて考える (3)

「エンタープライズ・アジリティについて考える」シリーズの第3回です。
過去の記事はこちら。

過去2回では、エンタープライズあるいはエンタープライズ・アジャイルといったものをどういう範囲で捉えるか、どう定義して考えるかというような話をしました。今回からそろそろ本題に入りたいと思います。とは言え、このシリーズは明確な全体構想やストーリーがあって書いているわけではありません。相変わらず、思いついたところや書きたいところから順不同に書いていますが、ご容赦ください。

組織レベルでの3つの大きなTransformation

情報システム開発や製品開発におけるアジャイルな組織への転換においても、メンタルモデルというかマインドセットというかをはじめとして、さまざまな意識の転換が必要です。(このあたりは、Ryuzeeさんもいろんなところで語られています。例えば、Agileな開発からAgileな組織へ(Agile Japan 2012)#aj12 | Ryuzee.com。)

それとも重なるところは多いですが、特にエンタープライズレベルでの事業活動全体を視野に入れた場合、以下の3つについてどう考え、取り組んでいくかというのがキーになってくるような気がしています。

  • Project vs. Product
  • Project Culture vs. Team Culture
  • Cost Accounting vs. Throughput Accounting

Project ≠ Product

ご存知の通り、ScrumではProduct Ownerというロールがあります。Project Ownerではなく、Product Ownerです。そのため、「Scrumって製品開発には向いてるけど、エンタープライズ系の業務システムとかには向いてないよね」とかそんな話もちらほら聞こえたりもしますね。まぁ、ここで言葉の定義であれこれ議論するのは本質ではないと思いますので深追いはしませんが、今後「エンタープライズ・アジリティ」について考えていく上で意識しておきたい点のみ、少し解説しておきます。(これは、先週Mary Poppendieckから聴いた話が元ネタです。)

Maryが言っていたことを一言でまとめると「プロジェクトとプロダクトではFunding Model(資金調達・予算確保のやり方)が違う。それを変えないとうまくいかない。」ということです。プロジェクトは事前に全体予算を決めるバッチ・ファンディングであるのに対して、プロダクトはインクリメンタル・ファンディングである、と。
その他そこから派生する違いとしては、「タスクを管理する⇔ワークフローを管理する」「終わりがある⇔終わりがない」「プロジェクトチームは解散する⇔プロダクトチームは製品とともに存続する」などがあります。ここを意識してどう組織を考えていくか、製品開発/システム開発部門以外の人たちとどうコミュニケーションをとっていくかというのが重要かと思います。

プロジェクト文化とチーム文化

これも上の話(特に最後のあたりの「プロダクトチームは製品とともに存続する」)と幾分重なるところもありますが、とても大事な話です。これに関しては、Tobias Mayer氏が昨日、素敵なブログ記事を書いています。

この中で彼は、プロジェクト中心のマインドセットを持っている限り、Scrumは最適なソリューションとはなり得ないと言っています。彼の話はいつも割と極端な方に振れる傾向がありますが、考えさせられる点は多いのでぜひ原文を通読していただきたいと思います。

なお、一昨日のエントリ(プロジェクト向きのアジャイル開発手法:DSDM - Always All Ways)で紹介したDSDMはプロジェクト向きでPRINCE2などとも相性がよいらしいと噂には聞いていますので、もしプロジェクト文化のもとでアジャイルを取り入れていくのならば、そちらを検討してみるのもいいかもしれません。(私はまったく不勉強につき、何もコメントできませんが。)

いずれにしても、自分たちがやろうとしていることがどういう文化やマインドセットを前提としているのかというのは、自分たちで理解しておく必要があると思いますし、エンタープライズ全体を巻き込みたいなら、その前提をきちんと説明し理解してもらう必要があります。

コスト会計よりスループット会計

最後は、以前のエントリ(経営にとってのアジャイル(または最近のSteve Denningの記事がツボにはまるという話) - Always All Ways)で紹介したSteve Denningの記事にあった話です。
エンタープライズ・アジリティを高めるためには、事業の意思決定の仕方およびそのベースとなる財務・会計の考え方の変革を伴わねばなりません。既にCFOを含む経営陣がスループット会計のような考え方になじんでおり、それをもとに意思決定をしているならば、それほど大きな苦労もなくアジャイル開発の考え方も受け入れられるでしょう。逆にそうでない場合には、2つの選択肢があります。CFOや経営陣の考えを変えてもらうか、今の考え方のままで理解できるようなモデルで説明するか、です。
とりあえずアジャイル開発を導入・展開するためだけであればどちらのやり方をとってもいいのでしょうが、やはり「エンタープライズ・アジリティ」ということを標榜したいのであれば、会社の意思決定の考え方・財務/会計の考え方の変革を迫っていく必要があるように思います。そこで本当にスループット会計がいいのか、もっと別のよいものがあるのかわかりませんけれども。
かくいう私もスループット会計なんかはゴールドラット博士の本で出てきてたなぁ…くらいのあやふやな理解ですので、改めて勉強してみたいと思います。

まとめ

今回も、なんとなく書き散らかしている感が満載ですね。
いずれにしても、アジャイル開発ってなんのためにやってるんだ?という目的と、その目的のために何が最適なのかを考えていくと、上の3点についてエンタープライズレベルで認識を合わせたり変革を進めたりということが必要なんだろうと思います。


ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

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